【1980年】「住所は3877…」と言いかけて悲鳴——“殺された”通報の女性は生きていた?

【1980年】「住所は3877…」と言いかけて悲鳴——“殺された”通報の女性は生きていた? 都市伝説・陰謀

電話口で「ルース」と名乗った年配の女性が、住所を「3877……」と言いかけたところで、受けた側の女性係員に話を遮られる。女性は、裏手の貸し部屋を探していると言って男が訪ねてきたこと、その男が気がかりなことを話しはじめる。男がいまどこにいるのかは分からない。そのやりとりの直後に鈍い物音がして、受話器の向こうから長い悲鳴が上がる。「息ができない」とも聞き取れる言葉を残して、録音は途切れる。

アメリカの911※通報とされるこの短い音声は、「殺される瞬間を録音した通報」として、ネットで何十年も語り継がれてきた。非常に生々しい悲鳴として知られ、通信指令員の研修で聞かされたという人もいれば、作り物だと言い切る人もいる。仮に本物だとしても、声の主が誰で、いつどこで起きたことなのかは、誰にも分からなかった。

※ 911:アメリカの緊急通報番号。日本の110番(警察)と119番(消防・救急)をひとつにしたもの。

2022年1月、系図調査を趣味にする投稿者が、海外掲示板Redditの r/UnresolvedMysteries に「ルース・プライスの911通報の謎、解決?」と題して書き込んだ。決め手として示したのは、1980年にサンディエゴの地方紙に載った、わずか数行の記事だった。スレは6600を超える高評価と390件以上のコメントを集めた。

事件の概要

🗓️ 時期:録音そのものに日付はない。有力説では1980年11月初め(同年11月3日付の地元紙が報じた暴行事件)

🌫️ 場所:録音からは分からない。有力説ではアメリカ・カリフォルニア州サンディエゴ市の東部

👤 通報者:「ルース」と名乗る一人暮らしの年配の女性。姓が伏せられた版の録音も出回っており、「プライス」という姓は研修で聞いたという人たちの証言から広まった

🔍 状況:不審な男について電話で話している最中、物音のあとに悲鳴が上がり、通話が途切れる。住所は最後まで伝わらない

🕯️ 結末:長年「通話中に殺された」と語られてきたが、殺人の記録は見つかっていない。有力説では、女性は襲った相手を振りほどいて生き延び、1994年に亡くなった

この録音がいつからネットにあるのか、正確なところは分からない。確認できる最も古い言及は、2002年に元通信指令員が警察関係者向けの掲示板に書いた回想だとされ、研修で聞かされて忘れられなくなったテープとして語られていた。その後も「指令員の研修で聞いた」という書き込みがぽつぽつと現れ、話の筋はだいたい同じだった。一人暮らしの老婦人が不審者を通報したが、係員が住所を聞きそびれているうちに男に押し入られ、殺された。住所が分からなかったので、助けは来なかった——。研修では「まず住所を確認せよ」という教訓とともに流されていた、という。

YouTubeに上がると、録音は「ネットでいちばん恐ろしい通報」の定番になった。一方で、いくら探しても、それらしい殺人事件の報道も警察の記録も出てこない。同じ名前の女性の墓や死亡記録が候補として何人も挙げられたが、どれも決め手を欠いた。そもそも実際の通報なのか、研修用に作られた音声なのかという議論が、何年も続いていた。

スレの投稿者がこの録音を知ったのは、あるトゥルークライム系ポッドキャストの記念回だった。番組では候補になりそうなルース・プライスが何人か紹介され、投稿者は、クリスマスツリーの片付けを先延ばしにする口実に、そのうちの一人の家系をたどりはじめた。そこで見つかったのが、次の記録だ。

判明している事実

録音から分かるのは「ルース」という名前と「3877」という数字だけ
出回っている録音で女性がはっきり名乗るのは「ルース」という下の名前までで、姓の部分が伏せられた版もある。住所は「3877」と番地を言いかけたところで係員に遮られ、通りの名前も町の名前も出てこない。係員は住所を聞き直さないまま用件を尋ね、悲鳴のあいだは黙っている。この応対のまずさが、研修で「悪い見本」として使われた理由だとされる。

1980年11月、「通報中に背後から首を絞められた」という新聞記事
投稿者が見つけたのは、1980年11月3日付の地元紙「サンディエゴ・イブニング・トリビューン」の「暴行」欄に載った短い記事だ。投稿者の書き起こしによれば、内容はこうなっている。警察によると、ルース・プライスさんは近所をうろつく不審者について警察に知らせようと電話をかけていたところ、背後からつかまれて首を絞められた。電話を取り落とし、悲鳴を上げ、相手の手を引きはがすと、若い男は逃げていった。プライスさんは、襲われた理由に心当たりはなく、男にも見覚えがないと話した——。のちにポッドキャストの続編回で読み上げられた同じ事件の記事では、被害者は「サンディエゴ東部の76歳の女性」、事件は「前日」の出来事とされている。

住所録に「3877」番地の同じ名前の女性
投稿者は系図サイトなどで、同じ名前のサンディエゴの女性の記録をたどった。1970年代のサンディエゴ市のシティ・ディレクトリ※には、数年分にわたって、この女性が番地「3877」の家に住んでいたと載っていた。新聞記事が伝える被害者の住まいの区画とも矛盾しない。録音の中の女性が言いかけた数字と、番地の数字が一致したことになる。

※ シティ・ディレクトリ:住民の氏名・住所・職業などを載せた、民間発行の地域別の名簿。アメリカでは古い住所をたどる定番の資料として、系図調査でよく使われる。

同じ名前の女性は1994年まで生きていた
投稿者は、1994年に地元紙に載った、同じ名前の女性の訃報も見つけている。新聞記事の暴行事件が録音の出来事だとすれば、彼女は襲撃を生き延び、そのあと13年半ほど暮らしたことになる。以前にもこの女性の名前は候補に挙がっていたが、「録音は80年代のもので、この人が亡くなったのは1994年だから別人だろう」と退けられていた。

殺人の記録は、いまも一つも見つかっていない
通報中に高齢の女性が殺されたのなら、地元紙が大きく報じていてもおかしくない。ところが「ルース・プライス殺害事件」の報道も警察の記録も、これまで誰も見つけられていない。一方で、録音と1980年の新聞記事を公式に結びつけた警察や行政の発表もない。2026年9月の時点でも、録音の出どころを正式に裏付けた資料は見当たらない。

主な仮説

仮説1:1980年の暴行事件の通話が、研修教材として使われた

スレの大勢が支持した見方。不審者を知らせる電話、背後からの襲撃、取り落とした電話、悲鳴という新聞記事の流れが、録音の展開とそのまま重なる。言いかけた番地「3877」も、年配の女性という点も合う。気になるのは、1980年のサンディエゴで911が使えたのかという点だ。スレより前に書かれた検証投稿は、サンディエゴで911が始まったのは1980年より後だと指摘している。新聞記事も「警察に電話していた」と書いているだけで、911とは言っていない。年配の人は緊急時に「0」を回して電話会社の交換手に警察へつないでもらうのに慣れていた、という声もあり、係員の応対がちぐはぐなのは、相手が911の指令員ではなく交換手だったからではないか、とも言われている。

仮説2:本物の通報をもとに、あとから役者が再現した音声

スレのコメントで紹介された話がもとになっている。以前、英語圏の匿名掲示板4chanの有志が、この地域で指令員の研修講座を開いていた人たちに問い合わせたところ、「実際の通報の書き起こしをもとに再現したもの」だと聞かされた、というものだ。これを支持する人は、音がきれいすぎる点を挙げる。悲鳴の音量が最後までほぼ一定で、電話を取り落としたり、もみ合ったりしている感じが薄い。ただし、この問い合わせの話は又聞きで、裏付けは示されていない。

仮説3:最初から作られた研修用・創作の音声

古くからある「フェイク説」。殺人の記録が一つもないこと、係員の対応が不自然なほどまずいこと(悪い見本として作ったのでは)、ネットでの出どころがたどれないことが根拠とされてきた。反対に、女性が言いかけてから言い直す話し方がいかにも自然で、台本らしさがないと指摘する人も多い。1980年の新聞記事が見つかったいまは、少なくとも「元になる出来事が何もなかった」とは言いにくくなった。

仮説4:「殺された」という話は、研修の現場で後から付け足された

このスレの2か月前、2021年11月に立った別の検証スレが唱えた見立て。録音の中に、女性が殺されたと分かる場面はない。最後には泣き声のような声も残っている。印象を強くするために、研修で「この女性は殺された」と説明されるようになり、それがネットに流れて定説になったのではないか、というものだ。仮説1とは両立するが、誰がいつ話を足したのかは分かっていない。

海外の反応

1. 謎の名無しさん
お見事。サンディエゴのこのルース・プライスは前にも名前が挙がってたんだよ。でも録音は80年代のものとされてたし、本人が亡くなったのは1994年だから「別人だろう」で片付けられてた。そもそも殺人だと思い込んでたのが間違いだったんだな。事件の報道が一つも見つからなかったのも、殺人なんて起きてなかったと考えれば説明がつく。

2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
それそれ。この通報について書かれたものは、ほぼ全部「押し入った男に殺された」が前提なんだよね。最後のあの声を聞いたら、助からなかったと思うのも無理はない。生き延びて、そのあと何年も暮らしてたって知れたのは本当にうれしい。

3. 謎の名無しさん
前にこの件を扱ったYouTube動画で、警察の研修で流すときに「この通報者は殺された」と説明される、って話が出てた。殺人説の出どころはたぶんそこだと思う。

4. 謎の名無しさん(>>3への返信)
自分が聞いてた話も「本物の通報を研修に使った」であって、「研修のために作った」じゃなかった。本物か作り物かの議論と、殺されたかどうかの話が、どこかでごちゃ混ぜになってたんじゃないかな。

5. 謎の名無しさん
うわ、こんなマニアックな謎がいきなり解決して流れてくるとは思わなかった。しかも結末が一応ハッピーエンドっていうのが、いちばん驚いたところだわ。

6. 謎の名無しさん
何度も「あれはフェイクだよ」って言われてきたけど、自分はずっと本物だと思ってた。何年も頭から離れなかった通報だから、実在の人だったと分かって少し報われた気分。襲われたこと自体はもちろん恐ろしいけど、そのあと十何年も生きたと知ってほっとした。

7. 謎の名無しさん(>>6への返信)
本物じゃなければいいのに、とも思ってたけどね。本物だと信じてた身としては、殺されたわけでも、ひどく殴られたわけでもなかったのが本当に救い。本人の恐怖を軽く見るつもりはないよ。ただ、自分が想像してた結末はこれよりずっと暗かったから。

8. 謎の名無しさん
あの悲鳴は演技じゃ出せないと思ってた。だから本物だと信じてたし、あの夜に亡くなったとばかり思ってた。生き延びてたなんて、何年越しかで肩の力が抜けたよ。

9. 謎の名無しさん
元911の通信指令員。研修でこの通報を聞かされた。一回だけね。本物かどうかは別にして、教材としては最強だった。あれ以来、知り合いからの電話でも住所は必ず最後まで確認するようになったよ。

10. 謎の名無しさん
新聞記事を見つけたのはすごい。でも「この録音が本物か」はまだ決着してないと思う。前に4chanの連中が研修講座をやってる人に問い合わせて、「実際の通報の書き起こしをもとにした再現だ」と言われた、って話があったはず。

11. 謎の名無しさん(>>10への返信)
その問い合わせの話、結局どこにも証拠が残ってないんだよな。録音の女性は言いかけては言い直すし、話の順番もばらばらで、台本を読んでる感じがまったくしない。あれを役者が再現してたなら、それはそれで名演すぎる。

12. 謎の名無しさん
自分も再現説寄り。音がきれいすぎるんだよ。悲鳴の音量がずっと一定で、スタジオで録ったみたい。電話を落としたり、逃げようとしたりしたなら、声が遠くなったり雑音が入ったりするはずなのに、それがほとんどない。

13. 謎の名無しさん
しっかりした調査だと思う。前から「この人じゃないか」と目をつけてた人は何人かいて、自分もその一人。押し入りと暴行は本物、死んだって部分だけが作り話、とずっと思ってた。1980年の新聞記事は完全に新しい情報で、パズルの最後の一枚だよ。

14. 謎の名無しさん(>>12への返信)
昔の固定電話は受話器がコードで本体とつながってるから、落としてもそれほど遠くへは行かない。床の近くで声を拾い続けたなら、音量が極端に落ちないのも説明がつくと思う。

15. 謎の名無しさん
ひとつだけ引っかかる。系図の記録どおりなら、1980年はまだ60代後半のはず。なのに新聞は「76歳」と書いてる。1994年に80歳で亡くなったなら計算が合わないし、どっちが正しいんだろう。

16. 謎の名無しさん
1980年のサンディエゴにはまだ911がなかった、って話もあるよね。年配の人なら「0」を回して交換手を呼ぶのが当たり前の世代。係員が住所を聞かずに用件ばかり聞いてたのも、相手が指令員じゃなくて交換手だったなら納得がいく。

17. 謎の名無しさん(>>15への返信)
昔の新聞で年齢の誤植なんて珍しくないよ。警察の発表を記者が電話で聞き取って書くことも多かったはずだし、66を76と聞き違えるくらいは十分ありうると思う。これだけ他が一致してるなら、年齢の一点で別人とは言えない。

18. 謎の名無しさん
この投稿、ポッドキャストの宣伝臭くない? 番組名を太字で何回も推してきて、「今すぐ聞け」とまで書いてある。しかもこのアカウント、投稿はこれ1本だけ。

19. 謎の名無しさん
2か月前に、別の人がほとんど同じ結論の検証スレを立ててたよ。住所まで突き止めて「この人は殺されてない」って結論だった。今さら「解決?」って言われてもな。

20. 謎の名無しさん
投稿者が「遺伝子系図の仕事をくれる人がいたら喜んで」って書いてて笑った。いや、本当に誰か雇ってあげてほしい。何十年も前の新聞の小さな欄からこれを拾ってくる根気は才能だよ。

21. 謎の名無しさん
一人暮らしのおばあさんが、自宅で後ろから首を絞められる。生き延びたとはいえ、そのあとはずっと物音が怖かったと思う。残りの人生を、家族のそばとかで穏やかに過ごせていたらいいな。

22. 謎の名無しさん(>>18への返信)
宣伝っぽいのは同意。でも新聞記事の書き起こしまで付けてるんだから、中身はちゃんとした調査だよ。番組の宣伝と発見の価値は、分けて評価してあげたい。

23. 謎の名無しさん
今まで聞いた通報音声の中で一番怖い。人に教えようとしても、自分がもう二度と聞きたくなくて再生ボタンが押せない。

24. 謎の名無しさん
首を絞められて殴られる場面を想像して、眠れなくなった夜がある。生き延びたと知って、やっと肩の荷が下りた。だからってもう一回聞く気にはならないけどね。

25. 謎の名無しさん(>>19への返信)
前のスレは名前と住所まではたどり着いてたけど、実際に襲われた記録は出せてなかったはず。「その住所で、電話中に襲撃があった」を一次資料で裏付けたのは今回が初めてだと思う。

26. 謎の名無しさん
冷静に言うと、証明されたのは「1980年に同じ名前の女性が電話中に襲われた」までで、「あの録音がその通話だ」ではないんだよな。当時の警察の記録と録音を突き合わせでもしない限り、偶然の一致という可能性はゼロにはならない。

27. 謎の名無しさん
ネット怪談の古典で、みんな出どころなんて気にせず「そういうもの」として受け入れてきた録音。それを何十年も経ってから、古い新聞で割り出したのがすごい。

28. 謎の名無しさん(>>26への返信)
不審者を知らせる電話の最中に後ろから首を絞められて、電話を落として悲鳴。しかも番地は3877。ここまで重なって偶然だと言うほうが、さすがに無理があると思う。

29. 謎の名無しさん
研修で盛られた話がネットで独り歩きして、何十年も「殺された老婦人」にされてたってのが、ある意味いちばん怖い。本人の知らないところで。

30. 謎の名無しさん(>>29への返信)
本当にそう。もし身内の人がネットで「祖母が殺される音声」なんて見つけたらと思うとぞっとする。少なくとも「生きていたらしい」って話がこうして広まったのはよかった。

未解決の謎

このスレを境に、「ルース・プライスは通話中に殺された」という話は、少なくとも根拠のある説ではなくなった。1980年11月の新聞記事に描かれた出来事は、不審者を知らせる電話、背後からの襲撃、取り落とした電話、悲鳴と、録音の流れにあまりにもよく重なる。ただ、これはあくまで有志の調査が見つけた一致で、警察や行政が「あの録音はこの通話だ」と認めたわけではない。2026年9月の時点でも、録音の出どころを正式に裏付けた資料は見当たらない。

残る謎はいくつもある。新聞は被害者を76歳と書いたが、系図の記録から数えると当時は60代後半のはずだ。単なる誤植なのか、それとも何かを取り違えているのか。彼女が電話をかけた先は911だったのか、交換手だったのか、警察署だったのか。いま出回っている音声は通話の原本なのか、書き起こしをもとにした再現なのか。そして、サンディエゴの一市民の通話が、どんな経路で指令員の研修教材になり、いつ「殺された老婦人」の話にすり替わったのか。首を絞めて逃げた若い男が捕まったのかどうかも、分かっていない。

真相がどちらに転んでも、この録音が研修で伝えてきた教訓は変わらない。電話の相手が住所を言いかけたら、まず最後まで聞く。何十年も「殺人の録音」としてネットで消費されてきた声の主は、実は相手の手を振りほどいて生き延びた女性だったのかもしれない。それが、このスレが古い新聞の片隅から掘り当てた、いちばん大きな発見だろう。

出典:r/UnresolvedMysteries 元スレ / 参考:サンディエゴ・イブニング・トリビューン 1980年11月3日付(元スレ投稿者の書き起こし)、ポッドキャスト「Going West」第162回・同続編回、r/UnresolvedMysteries の過去の検証スレ(2019年・2021年)

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