【2014年】眼球の代わりに赤いゴムボール——防腐処理された女性の頭部に10年名前が戻らない

【2014年】眼球の代わりに赤いゴムボール——防腐処理された女性の頭部に10年名前が戻らない 未解決事件

2014年12月、米ペンシルベニア州の小さな町で、林を歩いていた10代の少年が、落ち葉の上に置かれた女性の頭部を見つけた。頭部には遺体の防腐処理であるエンバーミング※が施され、まぶたの下には葬儀で使われるアイキャップ※が入っていた。ところが、そのキャップを外した奥にあったのは眼球ではなかった。子どものおもちゃの、赤いゴムボールだった。

※ エンバーミング:遺体の血液を防腐液に入れ替えて腐敗を遅らせる処置。米国では、棺に納めた故人と参列者が対面する葬儀の前に、葬儀社が行うのが一般的。医学部の解剖実習に使う献体にも、配合の違う保存処置が施される。

※ アイキャップ:故人のまぶたの形を整え、閉じたまま保つために、まぶたの下に入れる薄い半球状の器具。葬儀社が日常的に使う。

頭部の切り離し方は、解剖の心得がある者の手際だと専門家は見た。身元につながりそうな手がかりは歯の治療痕と、髪に残った飲み水の痕跡くらいしかなく、防腐液はDNAまで損なっていた。発見から10年以上が過ぎたいまも、彼女が誰なのか、なぜ首から上だけが林に置かれていたのかは分かっていない。

事件の概要

🗓️ 発見日:2014年12月12日

🌫️ 場所:ペンシルベニア州ビーバー郡エコノミー町、メイソン・ロード沿いの林(ピッツバーグの北西約35キロ)

👤 身元:不明の女性、通称「ジェーン・ドウ」※。白髪まじりの短い髪で、50代以上とみられる(60〜80代とする報道もある)

🔍 状況:防腐処理された頭部だけが、道路から約9メートル奥の林に置かれていた。周辺を探しても、ほかの部分は見つかっていない

🕯️ 現状:2015年12月、身元不明のまま地元の墓地に埋葬。2026年時点で、身元が判明したという報道は見当たらない

※ ジェーン・ドウ(Jane Doe):米国で身元の分からない女性に便宜上つける仮の名前。男性の場合はジョン・ドウと呼ぶ。

エコノミーは、ピッツバーグの北西に広がる郊外の小さな町だ。現場のメイソン・ロードは、元スレの投稿者によると沿道の家が十数軒ほどしかない交通量の少ない道で、地元の人が州道989号線への抜け道に使う程度だという。

町の警察署長マイケル・オブライエンは、道路からこれだけ離れた場所に偶然転がり込むことはありえないと説明した。動物が運んできた可能性も、防腐液のせいで動物は寄りつかないはずだとして退けている。郡の地方検事アンソニー・ベロッシュも「トラックから転がり落ちたのではない。そういうことではないんだ」と語った。誰かがわざわざここまで運び、置いていったことになる。

顔立ちは見分けがつく状態で残っていたため、似顔絵や復顔像が作られ、広く公開された。警察はその後、約200件の情報を調べたが、どれも身元にはつながらなかった。

判明している事実

アイキャップの下にあった赤いゴムボール
まぶたの下には肌色のアイキャップが入っていた。ここまでは葬儀の現場でごく普通に見られる処置だ。ところがキャップを外すと眼球は取り除かれていて、代わりに赤いゴムボールが1個ずつ入っていた。ボールは中国製の大量生産品で、ピザ店の入り口に置かれた小銭で回すおもちゃの自販機でも出てくるような品だった。捜査陣は葬儀業者の団体、検視官の団体、臓器提供の関係機関に問い合わせたが、眼球の代わりにゴムボールを入れる慣行はないという答えだった。オブライエン署長によれば、葬儀業者の団体は「こんな使い方は聞いたこともない」と答えたという。中国側に問い合わせても、作っている工場が多すぎて出どころはたどれないと言われた。

解剖の心得がある者の手際
頭部を調べた法医学アーティストで解剖学の教授でもあるミシェル・ヴィタリは、「台所の包丁でやったようなものとはまったく違う。手際がよく、狙いも正確だった」と語った。ベロッシュ検事も、頭部を切り離した人物には解剖学の知識があったとの見方を示している。一方、郡の検視官テリ・タタロヴィッチ=ロッシの発言は慎重だ。元スレに引用された発言では、「解剖学に通じた人物だった可能性は?ある。ただ風変わりで奇妙な人物だった可能性は?それもある。今の時点では分からない」と述べている。

髪と歯に残っていた「最後の7か月」
ソルトレークシティの鑑定会社アイソフォレンジックスが、髪と歯のエナメル質で同位体分析※を行った。その結果、彼女は亡くなるまでの7か月ほどの間に何度か(元スレによると3〜4回)住む場所を変えていた可能性が出てきた。範囲はペンシルベニア州の南西部から中部・北東部、オハイオ州東部、ウェストバージニア州北部、メリーランド州西部、ニューヨーク州東部にまたがる。ロイターの報道では、発見現場のビーバー郡そのものに暮らしていた形跡は見つからなかったとされる。ベロッシュ検事は、家族や友人のもとを渡り歩いていたか、誰かに世話をされていたのかもしれないとの見方を示した。

※ 同位体分析:飲み水に含まれる酸素などの同位体の比率は土地ごとに少しずつ違い、その比率が髪や歯に写し取られる。髪は根元から伸びていくので、毛先から根元へとたどれば、時期ごとにどのあたりで暮らしていたかをおおまかに推定できる。

すべての歯に治療痕、髪からは心臓の薬
2017年のロイターの特集によると、歯は1本残らず治療されていて、同じ歯を7回も治療し直した跡まであった。調べるために抜いた歯の1本からは、2004年より前には歯科で使われていなかった充填材が見つかり、亡くなったのはそれ以降と考えられた。治療の多さから、水道水にフッ素※が加えられていない土地で育った、暮らし向きの楽ではない女性ではないかという見方も出ている。ただし2015年の地元紙の報道では、専門家が治療時期を1980年代末〜90年代と見ていたとされ、報道によって食い違いがある。また、FBIの研究所が髪を調べたところ、リドカインとアトロピンが検出された。どちらも不整脈など心臓の急変に使われる薬で、心臓のトラブルで亡くなった可能性が指摘されている。ただ、防腐処理のせいでいつ亡くなったのかは特定できていない。

※ 水道水のフッ素:米国では虫歯予防のため、水道水にフッ素を加えている自治体が多い。加えていない地域で育つと虫歯が増えやすいとされる。

DNAも決め手にならなかった
身元の特定でいちばん期待されたDNAも、防腐液に阻まれた。2015年、オブライエン署長は地元紙に、防腐処理でDNAが損なわれ、わずかに取り出せた分も全米のデータベースのどれとも一致しなかったと説明している。ところが2017年のロイターの特集は「DNAは防腐処理の薬品で壊されていた」と書き、2024年の報道でもDNAの型は得られなかったとされる。どちらが正確だとしても、DNAは身元にたどり着く手がかりになっていない。

主な仮説

仮説1:献体ブローカーの流通から外れた頭部

捜査当局がもっとも重く見てきた線だ。米国には、無料の火葬などと引き換えに遺族から遺体の提供を受け、医療機器の講習や研究機関に部位ごとに有償で引き渡す献体仲介業者(ボディ・ブローカー)※がいる。ベロッシュ検事は「人体の部位には闇市場があり、その市場はかなり大きい」と語った。ロイターは2017年、この業界を追った特集でこの事件を取り上げ、テネシー州の業者から「頭部なら1つ約300ドル、送料別で用意できる」と持ちかけられたことを報じた。記者は取材の過程で実際に業者から頭部を買っており、その切り離し方を見た解剖学者は、ジェーン・ドウの頭部もどこかでブローカーの手を経たという見方を裏づけるものだと述べている。ただ、この説でも、眼球の代わりにおもちゃのボールを入れた理由は説明できない。

※ 献体仲介業者(ボディ・ブローカー):医学研究や手術の訓練に使う遺体を扱う業者。移植用の臓器と違い、米国には研究・教育用の遺体の売買を包括的に規制する連邦法がなく、州ごとにルールがばらばらになっている。

仮説2:献体や解剖実習の標本が持ち出された

医学部や研究機関に提供された献体が眼科や外科の練習に使われ、そのあと頭部が盗まれたか、ずさんに処分されたという見方。専門家が見た切り離しの手際とも合うので、海外の反応でも支持する声が多い。ただ、標本を管理している施設から頭部が消えたのなら、これだけ報道された事件で名乗り出ないのは不自然だという反論も根強い。警察は頭部の紛失や墓荒らしの届け出も調べたが、該当するものはなかった。

仮説3:葬儀の段階で遺体が横流しされた

アイキャップは葬儀業者の道具で、防腐処理も葬儀社にとっては日常の作業だ。地元のテレビ局CBSピッツバーグも、頭部は葬儀に向けて整えられていたようにも見えたと伝えている。遺族が火葬や埋葬の代金を払ったあとで、遺体の一部がひそかに持ち出されたとする見方がある。実際に米国では、遺族に無断で遺体を売っていた葬儀社が摘発された例もある。ただ、捜査陣はペンシルベニア州の葬儀業者の団体に照会し、全米の葬儀業者の会合でも事件の詳細を紹介したが、心当たりがあるという声は出ていない。

仮説4:殺人の可能性も消えていない

薬物検査から心臓のトラブルによる死亡が疑われ、事件性は薄いとされてきた。それでも捜査員の一人は、ロイターの取材に「殺人ではないと証明してみせてくれ。生きていた彼女を誰かが殺し、遺体をもてあそんで、赤い目玉まで入れた――そうではないと」と語っている。ピッツバーグの著名な法医病理学者シリル・ウェクトも、故人への敬意をもってなされたことではなく、悪ふざけの類いだという趣旨の見方を示した。死因も死亡時期も確定できない以上、誰かに命を奪われた可能性を完全には否定できない。

海外の反応

1. 謎の名無しさん
葬儀ディレクター※で、エンバーミングもやってる。昔の葬儀業界誌をめくってたとき、カナダのケベック州の葬儀場から女性の頭部が盗まれたって記事を読んだ覚えがある。探したら見つかった。2005年の事件だった。

※ 葬儀ディレクター:米国で遺体の処置から葬儀の段取りまでを担う職業。州の免許が必要で、専門の学校で学んでから就く。

2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
それはすごい偶然だな。念のため警察に伝えてみたら?とっくに調べてるかもしれないけど、知らせて損はないでしょ。

3. 謎の名無しさん(>>1への返信)
気になるけど、たぶん別件だと思う。ケベックはだいぶ遠いし、同位体分析だと亡くなる前の7か月はペンシルベニアのあたりを転々としてたことになってる。葬儀場から盗まれた遺体とは話が合わない。

4. 謎の名無しさん
もうひとつ思い出した。葬儀の学校にいたころ、大学の献体施設を見学したことがある。解剖用の防腐処理と葬儀用のそれは別物なんだ。解剖用はホルマリン※をかなり濃くするから、組織が灰色っぽくなる。葬儀用の防腐液には、その灰色を打ち消す色素が入ってる。だから聞きたい。彼女の肌はピンクがかってた?

※ ホルマリン:ホルムアルデヒドの水溶液。組織を固めて腐敗を防ぐ。

5. 謎の名無しさん(>>4への返信)
遺体を扱う仕事にも専門の学校があるって初めて知った。考えてみれば免許の要る仕事なんだから当たり前か。

6. 謎の名無しさん
思いつくのは、科学のために献体された遺体を、それを扱える立場の人間が粗末に扱ったって線くらい。解剖実習中の医学生とかね。でもそれなら、どうして目だけ取り出されてたのかが分からない。本当に奇妙な話だよ。

7. 謎の名無しさん(>>6への返信)
遺体に触れられる立場の誰かが、目も含めて臓器をこっそり取り出して、闇で売ってたんじゃないかな。売れる部分だけ抜いて、残りの始末に困ったとか。

8. 謎の名無しさん
みんな献体の横流しでなんとなく納得しかけてるけど、捜査員の「殺人じゃないと証明してみろ」って言葉は忘れちゃいけないと思う。心臓の薬が出たといっても、死因が確定したわけじゃない。

9. 謎の名無しさん
家族が研究用に献体して、何かの研究で目が取り出された。見た目を保つためにボールを詰めて、まぶたを閉じた。そのあと頭部だけ別の用途、たとえば手技の練習に回された。どこかの段階で盗まれたか、処分がいい加減だった。これで一応、筋は通る。

10. 謎の名無しさん(>>9への返信)
だいたい同意なんだけど、医学部や葬儀社みたいなちゃんとした所なら、なんで名乗り出ないんだろう。頭部が1つなくなってて、警察がそれを殺人かもしれないと追ってるなら「うちのかも」って言えば済む。これだけ話題になって誰も気づかないとは思えないんだよな。

11. 謎の名無しさん
歯医者の卵って、遺体で実際の治療を練習したりするのかな。もし彼女の頭部が実習に使われてたなら、あれだけの治療痕の一部は亡くなったあとに付けられたものかもしれない。そうだとしたら、歯科の記録で身元を割り出すのは無理になる。

12. 謎の名無しさん
このサブで読んだなかで断トツに気味が悪い。なんでこんなに引っかかるのか自分でも分からないけど、とにかくゾワッとする。とどめはあの赤いゴムボール。

13. 謎の名無しさん
防腐液でDNAが全部だめになるってどういうこと?ほかがだめでも、骨や歯からなら何か取れそうなものだけど。

14. 謎の名無しさん(>>13への返信)
そもそも報道が食い違ってる。2017年のロイターは「防腐処理の薬品でDNAは壊されていた」、2015年の地元紙では署長が「わずかに取り出せたDNAも全米のデータベースと一致しなかった」。どっちが正しいのか、はっきりしないんだよ。

15. 謎の名無しさん(>>13への返信)
ホルムアルデヒドはDNAを固めてしまうから、そのままだと読み取れない。修復してから解析するキットも売られてるけど、結果はどうしても粗くなる。とはいえ歯が残ってるんだし、歯の中の歯髄はかなり守られてるはず。何も取れないってのはちょっと意外だな。

16. 謎の名無しさん
ビーバー郡に住んでる。この件はよく覚えてるよ。あの道も分かるし、友達の家に行くのにしょっちゅう通ってる。頭部が林の中にあった時期に、何も知らずにすぐ横を走ってたかもしれないと思うと、変な気分になる。

17. 謎の名無しさん
見つけた少年のことを考えるとつらい。林を歩いてたら、いきなりあれだぞ。自分なら当分まともに眠れないと思う。

18. 謎の名無しさん
葬儀の仕事をしてる立場から言うと、専門家が説明してる切り離し方は、葬儀の防腐処理ではまずやらないものなんだよね。葬儀屋の仕事というより、解剖用の標本づくりに慣れた人の手に見える。

19. 謎の名無しさん
人体の部位の市場って、実際どう回ってるの?病院が「腎臓の持ち込みですか、助かります」なんて受け取るわけないし、誰が何を買ってるのか想像がつかない。

20. 謎の名無しさん(>>19への返信)
移植用の臓器とは別の市場だよ。買い手は医学部や、手術器具の講習をやる会社、各種の訓練施設みたいなところ。ロイターがこの業界の大型特集を組んでたけど、中身はかなりひどかった。

21. 謎の名無しさん
ゴムボールを入れる慣行ならあるよ。眼球提供のあとの処置として、自分は何千回もやってきた。提供機関が眼球を取り出したあと、まぶたや眼窩の形を保つために、まとめ買いした普通のスーパーボールを入れる。病院で亡くなると眼球提供を打診することが法律で決まってる州も多い。だからこの女性は亡くなってすぐ眼球を提供した人で、そのあと葬儀社かどこかで何かがあったんだと思う。殺人じゃない。

22. 謎の名無しさん(>>21への返信)
でも捜査陣は臓器提供の関係機関にも問い合わせてて、そういう慣行はないって答えだったはず。葬儀業者の団体も「聞いたことがない」と言ってる。あなたの職場だけのやり方ってことはない?

23. 謎の名無しさん
心臓の病気で亡くなった可能性が高いなら、夫か子どもがまだ別れる覚悟ができなくて、そばに置いておくためにこうしたんじゃないかと思った。林に置いたのは、引っ越しとか生活の事情が変わって手放すしかなくなったけど、壊すこともできなかったから、とか。

24. 謎の名無しさん(>>23への返信)
それにしては保存状態がよすぎると思う。素人の家族が処置して、ここまできれいに残るとは考えにくい。やったのは少なくとも経験のある人間だよ。

25. 謎の名無しさん
運搬中のトラックの荷台から落ちたんじゃないかって説も聞いたけど、無理があると思う。あの道はくねくねしてて、大型車がわざわざ通るルートじゃない。そもそも道路から9メートルも奥の林の中だぞ。誰かが歩いて置きに行ったんだよ。

26. 謎の名無しさん
心臓の薬が体に入ってたなら、あのあたりの地域で同じ時期に処方が途切れた人を洗えばいいんじゃない?薬局の記録を当たれば、かなり絞れそうだけど。

27. 謎の名無しさん(>>26への返信)
発想はいいけど、警察にそこまでの権限はないと思う。HIPAA※みたいな医療プライバシーの法律に引っかかるはず。事件のためとはいえ、近所の住民が何の薬を飲んでるか警察が片っ端から調べられる社会のほうが怖いよ。

※ HIPAA:米国の医療情報の扱いを定めた連邦法。診療記録や処方の情報を、本人の同意なく第三者に渡すことを原則として禁じている。

28. 謎の名無しさん
格安の葬儀社が遺族をだます話はたまに聞く。代金だけ受け取って、遺体はそのへんに捨てて何も埋葬してなかった、なんて例もある。このジェーン・ドウもそういう被害者かもしれない。身寄りが少なくて裕福でもなく、ある日突然、心臓の発作で亡くなった人とか。

29. 謎の名無しさん(>>28への返信)
実際、コロラド州には遺族から火葬を頼まれた遺体を無断で売っていた葬儀社があって、経営者の親子が2023年に連邦刑務所への実刑判決を受けてる。そういう業者が1社あったなら、ほかにないとは言い切れない。

30. 謎の名無しさん
昔ビーバー郡の地元紙で働いてた。社内のみんながこの事件に夢中で、首をひねってた。上司は本を書こうかと考えてたくらい。名前も分からない彼女のために、ちゃんと葬儀をして墓まで用意したのは、優しいなと思う反面、不思議な光景でもあったよ。

未解決の謎

彼女は2015年12月12日、発見からちょうど1年の日に、郡内のビーバー墓地に埋葬された。墓石には「ジェーン・ドウ 2014年12月12日発見」と刻まれている。地元紙によると、式を執り行った牧師は「私たちの知らないジェーン・ドウの人生。家族がいなかったわけではない。ただ、ここには家族も友人もいない」と語ったという。

2024年には、Netflixのドキュメンタリーシリーズ『未解決ミステリー』がこの事件を取り上げた。それでも同じ年の12月、発見から10年の節目に地元紙ピッツバーグ・ポスト=ガゼットが伝えたのは、身元はいまも分からないという現状だった。2026年時点でも、身元が判明したという報道は見当たらない。近年は、わずかなDNAから遠い親族をたどる遺伝系図調査※で、数十年来の身元不明者に名前が戻る例が相次いでいる。しかしこの事件でそれが試みられたという報道は確認できなかった。防腐液に損なわれたDNAが、ここでも壁になっているのかもしれない。

※ 遺伝系図調査:身元不明者のDNAを、一般の人が家系調べのために登録したDNAデータベースと照合し、遠い親族から家系図をたどって本人を割り出す手法。2018年ごろから米国で身元特定に広く使われるようになった。

残る謎は大きく三つある。ひとつは、彼女が誰だったのか。髪と歯は、亡くなる前の7か月に住まいを転々とした跡まで残していたのに、名前にはつながらなかった。二つ目は、眼球の代わりに赤いゴムボールを入れたのは誰で、なぜなのか。アイキャップをかぶせる手順は葬儀のやり方そのものなのに、その下にあったのだけが子どものおもちゃだった。三つ目は、頭部がなぜ、交通量の少ない田舎道から9メートル奥の林にわざわざ置かれたのかだ。

献体ブローカーの流通から外れたのだとすれば、彼女の体のほかの部分は、どこかの研究施設や訓練の場で使われ、すでに処分されているのかもしれない。本人が生前に献体を望んでいたのか、それとも遺族が何も知らないまま「火葬を済ませた」と聞かされているのか。それすら分かっていない。手がかりは、公開された彼女の顔を見た誰かが「あの人だ」と気づくことに、いまも託されている。

出典:r/UnresolvedMysteries 元スレ / Reuters 特集記事(2017年) / CBSピッツバーグ、ビーバー・カウンティ・タイムズ、ピッツバーグ・ポスト=ガゼットの報道

Comments