「名前のないまま埋葬された1,100人」公式データが誰にも読めず、写真家が全件を並べ直した

「名前のないまま埋葬された1,100人」公式データが誰にも読めず、写真家が全件を並べ直した 行方不明・失踪

イタリアには、名前が分からないまま埋葬された人が1,100人前後いる。海で、線路の上で、路上で見つかり、誰にも引き取られないまま番号だけを与えられた人たちだ。記録が残っていないわけではない。ただ、その記録が、誰にも探せない形で置かれていた。

ミラノ在住の写真家が、内務省の登録簿と、法医学の研究室LABANOFが公開しているデータ、それに行方不明者を扱うテレビ番組が取り上げたケースを、何か月もかけて手作業で突き合わせた。そうしてできたのが、全件を検索できる一枚のデータベース(doeitalia.com)だった。会員登録も広告もなく、本人は一銭も受け取っていないという。海外の掲示板ではその告知をきっかけに、「うちの国はどうなっているのか」という話が各国から一斉に出てきた。

※ LABANOF:ミラノにある法医人類学・法歯学の研究室。地中海で起きた沈没事故の犠牲者の身元確認を長く手がけてきたことで知られる。

事件の概要

🗓️ 時期:長年にわたる(記録は1968年までさかのぼる)

🌫️ 場所:イタリア全土

👤 対象:身元が分からないまま埋葬された1,100人前後

🔍 状況:記録が複数の機関にばらばらに存在し、横断して検索できない

🕯️ 現状:一個人が全件を検索できるデータベースを作り、無償で公開した

作ったのはミラノの写真家で、何年も身元不明の遺体をテーマにした写真の仕事を続けてきた人物だという。取材のたびに、必要な情報にたどりつけないことに引っかかっていた。公式の登録簿は確かにある。だが実際に開くと、そこにあるのは役所の書式のPDFと書き出しファイルで、知りたいことは整理されていない文章の塊の中に埋もれている。しかもイタリア語だけだ。

もうひとつの柱がLABANOFの法医学データで、こちらは地中海の沈没事故で亡くなった人の身元確認を長く担ってきた。海で見つかった人の身元をたどる作業では、出身地の記録も、照合できる家族の検体も、たいてい国境の向こう側にある。届出は別の国にあり、遺体はイタリアにある。その二つを繋ぐ線を、誰も引いていない。

判明している事実

公開されているのは約1,100件、最も古い記録は1968年
サイトに載っているのは1,100件前後。地域、年、性別、推定年齢、体格に加えて、身につけていた所持品からも検索できるようになっている。作成者は、所持品こそがそのケースを見分けるいちばんの手がかりになることが多い、という考えでこの項目を入れたと説明している。ケースは1968年までさかのぼる。

公式の登録簿はイタリア語のPDFと書き出しファイル
登録簿そのものは内務省が管理している。ただ形式が、探すための道具になっていない。項目が分かれていない文章の塊にまとめられ、PDFで配られ、イタリア語しかない。近年はPowerBIで作られた閲覧画面が公開されているが、英語での閲覧にも、検索エンジン経由で個別のケースにたどりつくことにも向いていない。

※ PowerBI:マイクロソフトのデータ可視化ツール。表やグラフをブラウザ上で共有できるが、ページ単位のリンクが作りにくく、外部から検索で拾うのが難しい。

新しい版から、理由が示されないまま消える記録がある
古い書き出しファイルには載っていたのに、新しい版からは抜けているケースがある。しかも、なぜ消えたのかの説明が出てこない。身元が判明して外れたのか、別の記録に統合されたのか、単に落ちたのかが、利用者の側からは区別できない。作成者は消えた分もそのまま手元に残し、サイトに載せ続けている。

情報源が三系統に分かれ、互いに繋がっていない
材料は大きく三つある。内務省の登録簿、ミラノのLABANOFが公開している法医学データ、そして行方不明者を扱う長寿番組「Chi l’ha visto?」が取り上げたケースだ。この三つは互いを参照していない。同じ人物について書いていても、それが同一人物だと判定するのは人間の手作業になる。作業の大半は、この突き合わせと表記の掃除に費やされたという。

※ Chi l’ha visto?:イタリアの公共放送で長く続く行方不明者番組。日本語にすると「誰かこの人を見なかったか」にあたる。視聴者からの情報提供で捜索が動くことがある。

公的機関からは写真も復元図もほとんど出てこない
サイトに並んでいる写真は、LABANOFの公開資料か、当時の新聞記事から集めたものだ。公的な発表として画像が出てくることは、今のところほとんどない。実際に数十件を開いて回った読者からは、生前の顔を推定した復元図が一件も見当たらなかった、という報告も上がっている。

主な仮説

仮説1:記録が、探されることを前提に作られていない

公式の登録簿は、法律上の義務を満たす台帳としては機能している。ただ、探す側の道具にはなっていない。分類されていない文章の塊、PDF、イタリア語のみ。一人の人間が夜と週末を注ぎ込んで整形し直しただけで、地域からも年からも所持品からも引ける形になったということは、データそのものが無かったのではなく、置き方の問題だったことになる。名前が分からない理由の何割かは、遺体の側ではなく書類の側にある。

仮説2:照合すべき届出が、国境の向こう側にある

イタリアで見つかった人が、イタリアで行方不明として届けられているとは限らない。スレッドには、イタリアで消息を絶った自国民のリストを持ち出して照合を試みる読者が現れ、外国籍の人はそもそもイタリア側のデータベースに照合できる材料が無いのではないか、という指摘も出た。国ごとにデータベースの形式も公開の度合いもばらばらで、身元不明遺体の公式サイトが存在しない国もある。片方の国に「見つかった人」の記録があり、もう片方の国に「いなくなった人」の記録がある。その二つは、どこでも交わらない。

仮説3:突き合わせる材料が、片側しか残っていない

身元の確認は、遺体側の情報(DNA、歯の記録、身体的特徴、所持品)と、行方不明者側の情報(家族の検体、生前の歯科記録、写真)が両方そろって初めて成立する。片方だけでは、どれだけ丁寧に記録しても照合できない。フランスでは身元不明の遺体が数年で火葬され、DNAがそもそも使われていない、という書き込みもあった。イタリアの運用がどうなっているかはこのスレッドだけでは分からないが、時間が経つほど片側の材料が失われていく構造は、どの国にも共通している。

仮説4:催促する人が、どこにもいない

行方不明者には、探し続ける家族がいる。問い合わせをする人がいて、番組に手紙を出す人がいて、記者に話す人がいる。身元不明の遺体には、その役をする人がいない。名前が分からない以上、誰に連絡すればいいかも分からないからだ。予算も人手も、声を上げる相手がいるほうへ流れていく。作成者によれば、公式の登録簿はかつて二年ほどまるごとオフラインになっていた時期があり、そのとき協力を申し出たが丁重に断られたという。

海外の反応

1. 謎の名無しさん
これだけの手間をかけてくれてありがとう。ここに載っている人たちが、ひとりでも名前を取り戻せますように。番号のまま終わってしまうのが、いちばんつらい。

2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
同感。身元不明のまま埋葬された人って、行方不明者と違って、探している側からは存在すら見えないんだよな。リストになって初めて「探せる対象」になる。

3. 謎の名無しさん
同じイタリアから。とんでもない仕事をしてくれた。ただ、この時間に開いたら絶対に眠れなくなるから、明日ちゃんと見る。本当にありがとう。

4. 謎の名無しさん(>>3への返信)
作った本人です。とんでもない。使ってみて、画面の作りや検索の流れで引っかかったところがあれば教えてほしい。とにかく気持ちよく探せることがいちばん大事だと思ってるので。

5. 謎の名無しさん
夜と休みの日を全部これに突っ込んだと書いてあるのに、金も取らないし広告も出さないのか。正直どういう精神力なんだ。誇っていい仕事だと思う。

6. 謎の名無しさん
自分の時間をここまで差し出せるのがすごい。情報の並びも分かりやすくて、探しやすかった。自分の国にもこういう仕組みがあればよかったのに、といまさら思っている。

7. 謎の名無しさん(>>6への返信)
どこの国から? うちはアイルランドで、県ごとの検死官が出した身元不明者の一覧があるだけ。そもそも全件そろっていないし、動きも重くて探しづらい。

8. 謎の名無しさん(>>7への返信)
イタリア(今回のサイトができるまで)、フランス、アイルランド、イギリスで「欧州いちばん使えない行方不明者データベース選手権」をやっている状態だと思う。イギリスは件数より中身がひどくて、推定年齢が0歳から100歳という登録がいくつもある。

9. 謎の名無しさん
人口を考えたら1,100件というのは、実はそんなに多くない数字だと思う。イタリアの警察は思っていたよりちゃんとやっているのでは。

10. 謎の名無しさん(>>9への返信)
作った本人だけど、そこは正直、悲観的に見ている。正しく登録されないまま消えてしまった分がもっとあるはずだと思う。ただLABANOFの仕事だけは本当に世界に出せる水準で、ちゃんとやっている人たちが確実にいるのも事実。

11. 謎の名無しさん
うちのハンガリーは人口950万人しかいないのに、身元不明の遺体と遺体の一部の登録が1,156件ある。件数だけ見るとイタリアと変わらない。うちの警察のほうがよほどまずい。

12. 謎の名無しさん
アメリカの有志がやっている行方不明者データベースのイタリア版という感じで、これはありがたい。うちのポーランドも3,800件くらいあるとどこかで読んだけど、一件ずつの情報にたどりつくのが本当に難しい。

13. 謎の名無しさん
イタリアで消息を絶ったポーランド人のケースがいくつか手元にあるから、突き合わせてみる。外国籍だと、そもそもイタリア側に照合できるDNAが登録されていない可能性が高いと思っている。そのまま身元不明の側に回ってしまった人もいるんじゃないか。

14. 謎の名無しさん
カテゴリを眺めていて意外だったのは、溺死と、列車にはねられた人の身元不明がかなり多いこと。海の事故として語られるものとは別に、これだけ積み上がっているとは思っていなかった。

15. 謎の名無しさん
公式のほうも一応、閲覧画面は出ている。ただ英語でも読めないし、検索にも向いていない。あれで自分で調べろというのは、さすがに無理があると思う。

16. 謎の名無しさん(>>15への返信)
作った本人です。まさにそこ。数年前、公式の登録簿がまるまる二年ほど落ちていた時期があって、そのとき手伝いを申し出たけれど丁重に断られた。内部で作業中だと言われて、その結果が今のあの画面。抜けている点をもう一度確認しに行くつもりでいる。

17. 謎の名無しさん
テレビ番組のほうには、あとから解決したのが明らかなケースも混ざっている。公式の登録簿からは「常に更新している」という理由でケースが消えていく。電話でもメールでも問い合わせたことがあるけど、返ってくる説明がまた分かりにくい。ちなみに地図のピンがいくつかずれてます。

18. 謎の名無しさん(>>17への返信)
作った本人だけど、地図のずれは自分でも気づいてる。地名から座標を当てる処理を、精度を落とさずに自動化する方法を探しているところ。教えてくれて助かる。

19. 謎の名無しさん
30件ほど開いてみたけれど、生前の顔を推定した復元図が一件も無かった。死後に撮られた写真が一枚あっただけで、それも生きていたときの顔とはかなり違って見えるものだった。イタリアでは復元をやっていないのか。

20. 謎の名無しさん(>>19への返信)
作った本人です。今のところ、画像は公的機関からほとんど出てこない。サイトに載っている写真は、全部LABANOFの公開資料か当時の新聞から拾ったもの。ここは自分でもいちばん歯がゆいところ。

21. 謎の名無しさん
フランスはもっと厳しい。ボランティアの団体が深刻な行方不明のケースだけを扱っていて、身元不明の遺体は数年で火葬されるし、DNAはそもそも使われていない。イタリアやベネルクス、ドイツにあるようなデータベースが存在しない。

22. 謎の名無しさん(>>21への返信)
火葬されたら、あとから照合する手段が消えるということだよな。時間が経ってから家族が名乗り出ても、突き合わせるものがもう残っていない。それは「未解決」ですらなくて、確認する手立てを失っただけだ。

23. 謎の名無しさん
更新のお知らせが欲しい。復元図が付いたとか、新しい情報が入ったとか、ケースに動きがあったときに通知が来ると追いやすい。こういうのは一度見て終わりにならないことが大事だと思う。

24. 謎の名無しさん
素晴らしいけど一点だけ。いくつか開いてみたら、死後の写真のところが「写真なし」の表示になっていた。あと検索結果に戻るボタンがほしい。スマホだと毎回検索し直しになってしまう。

25. 謎の名無しさん(>>24への返信)
作った本人です。それは重要な情報。どこで見つけたか教えてもらえますか……と思ったら原因が分かったので直しました。今どうなっているか、もう一度見てもらえると助かります。

26. 謎の名無しさん
大学の犯罪学の講義要項を見たら、未解決事件と身元不明の遺体にはほとんど触れていなかった。捜査がどこで詰まるのかを知るには、むしろここがいちばん大事だと思う。卒業論文で使わせてもらうつもり。

27. 謎の名無しさん
スマホからでも普通に使えるのがありがたい。この手の個人サイトは、たいてい画面が小さいと表が崩れて何も読めなくなるんだけど、これは指で追える。

28. 謎の名無しさん
所持品から検索できるという設計が効いていると思う。顔は年月で変わるし、推定年齢もあくまで推定でしかないけれど、身につけていたものは家族の記憶にいちばん残っている。

29. 謎の名無しさん(>>28への返信)
それは分かる。うちの祖母が話していた、いなくなった親戚の話も、覚えているのは着ていた服とベルトの留め金だけだった。顔の話にはならなくて、いつも物の話になる。

30. 謎の名無しさん
1,100件と書くと数字だけど、1,100回、誰かが帰ってこなかったということなんだよな。その全部に名前があったはずで、それがどこにも残っていない。

未解決の謎

この件で解けていないのは、誰かが誰かを殺した理由ではない。1,100人分の名前が、どうして誰にも読めない場所に置かれたままだったのか、である。データは存在していた。廃棄されていたわけでも、隠されていたわけでもない。ただ、探すための形をしていなかった。それだけのことで、1,100件は事実上、存在しないのと同じ状態に置かれていた。

いちばん引っかかるのは、一人の写真家が夜と週末を注ぎ込んだだけで、その状態がひっくり返ってしまったことだ。三つの情報源を突き合わせ、表記を掃除し、英語を付け、地域と年と所持品から引けるようにする。手間は膨大でも、特別な権限も予算も必要ではない作業だった。逆に言えば、これまで誰の仕事でもなかったということになる。公式の登録簿が二年間まるごと落ちていたときも、外から手伝いを申し出た人はいたが、その話は先へ進まなかった。

そして、新しい版から理由も告げられずに消える記録がある、という点が最後まで残る。身元が判明して外れたのなら、それはいい話のはずだ。だが利用者の側からは、判明したのか、統合されたのか、単に落ちたのかを見分ける方法がない。消えた記録を手元に残し続ける、という個人の判断だけが、いまその区別を辛うじて保っている。

所持品から検索できる、という発想がこのサイトのいちばんの特徴で、そこにこの問題の輪郭がよく出ている。顔は変わり、年齢は推定にしかならないが、着ていた服やポケットに入っていたものは、家族の記憶に最後まで残る。裏を返せば、身元不明のまま埋葬された人に残っているのは、それだけということでもある。1,100という数字の内側には、1,100通りの持ち物と、1,100人分の名前があったはずだった。

出典:r/gratefuldoe 元スレ

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