「肉が雪のように降ってきた」1876年ケンタッキー、雲ひとつない空から農場に落ちた肉片の正体は?

「肉が雪のように降ってきた」1876年ケンタッキー、雲ひとつない空から農場に落ちた肉片の正体は? 未解決事件

1876年3月、アメリカ・ケンタッキー州の山あいの農場で、雲ひとつない空から肉のかけらが降ってきた。家の前で石けんを作っていた農家の妻のまわりに、手のひらほどの赤い肉片がばらばらと落ちてきたという。地元の人が集まり、新聞が書き立て、学者たちが標本を顕微鏡でのぞいたが、なぜ肉が降ったのかは今もはっきりしない。「ケンタッキーの肉の雨」と呼ばれるこの出来事を、r/UnresolvedMysteries の解説スレと、当時の記録をもとに振り返る。

事件の概要

🗓️ 発生日:1876年3月3日(金)、正午少し前

🌫️ 場所:ケンタッキー州バス郡オリンピア・スプリングス近く、アレン・クラウチの農場

👤 目撃者:クラウチの妻。家の前で石けんを作っていた

🔍 状況:晴れた空から、肉片が数分のあいだ降り続いた。範囲は縦100ヤード・横50ヤード(約90m×45m)ほど

🕯️ 現在:原因は特定されていない。標本の一つがレキシントンのトランシルバニア大学に残っている

舞台のオリンピア・スプリングスは、ケンタッキー州東部の小さな集落で、近くには鉱泉の湧く保養地があった。クラウチ夫人は、肉が「雪のように」降ってきたと語ったとされる。当日は晴れて雲がなく、雨も降っていなかった。クラウチ家では、この出来事を神からのしるしだと受け止めたという。

話はすぐに広まった。翌日以降、近所の人や記者、学者が農場に押しかけ、1週間ほどでニューヨーク・タイムズなど東部の大新聞までが記事にした。地面に落ちていた肉はひと晩でひからびていたが、いくつかはアルコールやグリセリン※に漬けて保存され、各地の研究者の手に渡った。

※ グリセリン:無色でとろりとした液体。当時は生物の標本を乾かさずに保存するのにも使われた。

判明している事実

降った肉の大きさと範囲
肉片の多くは2インチ角(約5cm角)ほどで、大きいものは4インチ角(約10cm角)近くあった。きれいに切り分けた形ではなく、ちぎれたような断片だった。見た目は牛肉に似ていたと報じられたが、羊、鹿、熊、馬ではないかという声もあり、見た人によって意見が分かれた。どれだけの量が降ったかも、記録によって言い方がまちまちである。

翌日の現場と、味見をした人たち
翌日、近くの保養地オリンピアン・スプリングスの経営者ハリソン・ギルが現場を訪れ、柵に引っかかった肉や地面に散らばった肉を見ている。ニューヨーク・タイムズは、この人物の証言は「疑いようがない」と書いた。肉はひと晩外に置かれて傷んでいたが、近所の男性2人が試しに口にして、鹿肉か羊肉のような味だと言ったと伝わる。地元の猟師は熊の肉だと見立てた。農場の動物たちは、落ちた肉を平気で食べていたという。

顕微鏡で見えたのは肺・筋肉・軟骨
保存された標本は、何人もの研究者が顕微鏡で調べた。ニューアーク科学協会の会長だったA・ミード・エドワーズは、一つを肺の組織とみて、馬か人の乳児のものではないかと考えた(この二つは肺のつくりがよく似ているという)。別の研究者J・W・S・アーノルドも、動物の肺と軟骨だとした。複数の研究者が調べた7点のうち、2点が肺、3点が筋肉、2点が軟骨と判定されている。1種類の動物の、1か所の肉ではなかったことになる。

大学の倉庫で見つかった小瓶
2004年、トランシルバニア大学の美術教授カート・ゴーディが、学内の倉庫で小さなガラス瓶を見つけた。ラベルの文字はほとんど読めなかったが「オリンピア・スプリングス」の地名が残り、中には1876年の肉片が液に漬かっていた。遺伝子を調べようとしたものの、古すぎるうえに汚れていて、何の動物かは分からなかった。ゴーディはその後、シンシナティの味覚の研究所に頼んで標本の風味をゼリービーンズで再現し、2007年にケンタッキー州マウントスターリングの市「コート・デイズ」※で来場者に配った。食べた人の感想は「生のベーコン」「ストロベリー味のポークチョップ」などで、正体の手がかりにはならなかった。2024年8月には、この標本が地元バス郡の歴史博物館で一時公開されている。

※ コート・デイズ:マウントスターリングで1794年から続く、売り買いや物々交換のための大きな野外の市。

主な仮説

仮説1:ハゲワシの群れが吐き戻した

いちばん有力とされる説。1876年のうちに、ルイビルの医師L・D・カステンバインが医学誌で唱えた。カステンバインは標本の一部を燃やし、傷んだ羊肉のようなにおいがしたと書いている。ケンタッキーにはクロコンドルとヒメコンドル(英語ではどちらも vulture=ハゲワシと呼ばれるが、分類上は新大陸のコンドルの仲間)がいて、危険を感じたときや、体を軽くして飛び立つときに胃の中身を吐き出す習性がある。1羽が吐くと群れのほかの鳥も続いて吐くことがあるとされ、空の高いところで群れがいっせいに吐いたなら、肉が「雨のように」降ってもおかしくない。死肉をあさる鳥なので、肺や軟骨が混じり、動物の種類がばらばらだったことにも説明がつく。2014年にはサイエンティフィック・アメリカンのブログがこの説を最も筋が通るものとして紹介し、標本を見つけたゴーディも「ありうると思えるのはハゲワシの吐き戻し説だけ」と話している。弱点は、クラウチ夫人が空を見上げても何も見えなかったと言っていることだ。

仮説2:肉ではなく、ネンジュモ※だった

事件から3か月ほど後、グリセリン漬けの標本を調べたレオポルド・ブランダイスは、「肉ではない、ネンジュモだ」と発表した。ネンジュモは雨を吸うとぶよぶよのゼリー状にふくらむため、雨上がりに急に地面に現れたように見えることがある。しかし当日は晴れていて雨が降っておらず、ほかの研究者の顕微鏡からは肺や軟骨の組織が見つかっている。現在ではあまり支持されていない。

※ ネンジュモ:シアノバクテリア(藍藻)の仲間。寒天のような膜に包まれて固まりをつくる。日本の庭や道ばたで雨のあとに見かける黒っぽいぶよぶよの「イシクラゲ」もこの仲間。

仮説3:誰かのいたずら、または作り話

農場に肉片をまいて「空から降った」と言いふらした、という見方。19世紀は奇妙な話が新聞をにぎわせた時代で、見世物まがいの話も珍しくなかった。ただ、クラウチ家がわざわざ肉をばらまいて得をすることは見当たらず、翌日には第三者が柵に引っかかった肉を見ている。少なくとも、肉が広い範囲に散らばっていたこと自体は疑いにくい。

仮説4:竜巻で運ばれた、宇宙から落ちてきた

竜巻や旋風が池のカエルや魚を巻き上げて遠くに降らせる現象は、世界各地で記録がある。肉も同じように運ばれてきたのではないか、という考え方だ。だが当日は穏やかに晴れていて、嵐の記録はない。当時の新聞のコラムには、宇宙を漂っていた肉のかたまりが落ちてきたという冗談めかした説まで載った。これは今では皮肉の読み物と受け取られている。

海外の反応

1. 謎の名無しさん
「ケンタッキー・ミート・シャワー」って字面、昔の男性ストリップショーの演目名にしか聞こえない。初めて見たとき、未解決事件の名前だとは思わなかった。

2. 謎の名無しさん
タイトルを見た瞬間、頭の中で「イッツ・レイニング・メン」が流れ出して、メンのところだけ勝手にミートに置き換わった。この曲を思い出したのは自分だけじゃないはず。

3. 謎の名無しさん
ふざけた題材なのに、新聞の記事から論文まで資料が並べてあって読みごたえがあった。こういう古くて妙な謎の解説がいちばん好き。書いてくれた人に拍手。

4. 謎の名無しさん
答えは簡単。故障したタイムマシンが、運の悪い時間旅行者たちをたまたま1876年のケンタッキーの上空に放り出したんだよ。

5. 謎の名無しさん(>>4への返信)
自分も一瞬それを考えた。でも、もし人が空の上でどうにかなったなら、血の跡の話も出てくるはず。証言に血の話がひと言も無いから、空から人間が降った説は消えると思う。あくまで思考実験だけど。

6. 謎の名無しさん(>>5への返信)
じゃあタイムマシンの設定を間違えて「乾燥モード」にしてたんだな。夫人の話だと、ひと晩でカラカラにひからびたらしいし。

7. 謎の名無しさん
今日知ったこと。ハゲワシ(コンドルの仲間)の群れは英語で「ケトル」、つまりやかんと呼ぶらしい。解説の本筋より、こっちのほうが頭に残ってしまった。

8. 謎の名無しさん
群れの呼び名ついでに言うと、ヒキガエルの群れは「ノット(結び目)」、カエルの群れは「アーミー(軍隊)」って呼ぶそうだ。英語の群れの呼び名、凝りすぎてて覚えきれない。

9. 謎の名無しさん
誰かが爆薬で家畜の死骸を処分した説はどう? 70年代にオレゴンの浜で打ち上げられたクジラを爆破して、あたり一面に肉が降り注いだ有名な映像がある。

10. 謎の名無しさん(>>9への返信)
リンクを開く前からあのクジラだと分かった。一度は見るべき映像。でも爆発なら音で絶対に気づくし、近くで起きないとあんなに一か所にまとまって落ちないと思う。

11. 謎の名無しさん
1876年の農家って、大きな動物の死骸をダイナマイトで吹き飛ばして片付けたりしてたのかな。ダイナマイト自体はもうあった時代だから、ありえない話ではない気がする。

12. 謎の名無しさん
ハゲワシの吐き戻しが群れでうつるのを、解説ではあくびにたとえてたけど、荒れた海の船のほうが近い。一人が青い顔で吐くと、次々にみんな吐き始める。あれは見られたものじゃない。

13. 謎の名無しさん(>>12への返信)
人が吐くのを見たり、音を聞いたり、においがしたりするだけで、こっちもこみ上げてくるからね。鳥も同じなんだと思うと、少しだけハゲワシに親近感がわいた。

14. 謎の名無しさん
近所の男性2人が食べてみて「鹿肉か羊肉みたいな味」と言ったってくだり。空から降ってきた肉を最初に口に入れた人は、間違いなく勇者だよ。

15. 謎の名無しさん(>>14への返信)
ハゲワシ説が正しいなら、その2人はハゲワシの吐いたものを食べたってことになるよね。教訓:空から降ってきた、正体の分からない肉っぽいものは口に入れない。

16. 謎の名無しさん
目撃者が実質一人しかいない超常現象は、まず疑ってかかることにしてる。しかも「なぜわざわざ偽装する必要がある?」のひと言で作り話の線を片付けてるのが、いちばん弱いところだと思う。

17. 謎の名無しさん(>>16への返信)
この話は何年も前から何度も読んできたけど、作り話かもしれないとは一度も考えたことがなかった。言われてみれば、降ってくるところを見たのは夫人だけなんだよな。

18. 謎の名無しさん(>>16への返信)
降った瞬間の目撃者は一人でも、翌日には保養地の経営者が柵に引っかかった肉を見てるし、標本は何人もの学者の手に渡ってる。少なくとも、肉が広く散らばっていたのは本当だと思う。

19. 謎の名無しさん
夫人が量を「荷馬車いっぱい」と言ったって話があるけど、アメリカ人はメートル法以外の単位なら本当に何でも使うよね。荷馬車ってどのくらいの量なんだ。

20. 謎の名無しさん(>>19への返信)
メートル条約が結ばれた翌年の話だよ。当時のケンタッキーの農家に「何キロ降りました」と言えというのは酷だと思う。荷馬車のほうがよほど分かりやすい。

21. 謎の名無しさん
この話は、確かめようのない人たちの証言をそのまま信じる前提に寄りかかりすぎてる。あの時代は、新聞をにぎわせるための作り話が珍しくなかったんだから。

22. 謎の名無しさん
ネンジュモ説がいちばん単純で、オッカムの剃刀にかなってる気がする。わざわざ空飛ぶ鳥の群れを持ち出さなくても、地面から湧いたもので説明できるなら、それが一番だよ。

23. 謎の名無しさん(>>22への返信)
でも顕微鏡で肺や軟骨が見つかってるんでしょ。藻の仲間から軟骨は出てこない。農場の動物が喜んで食べてたって話もあるし、ネンジュモ説はかなり苦しいと思う。

24. 謎の名無しさん(>>22への返信)
日本にも、雨のあとの庭に黒っぽいぶよぶよした「イシクラゲ」が湧くけど、あれを肉と見間違える人はいないと思う。色も手ざわりも違いすぎる。しかも当日は晴れてたんだし。

25. 謎の名無しさん
役に立つことは何も言えないんだけど、「A・ミード・エドワーズ博士」を何度読んでも「A・ミート・エドワーズ博士」と読んでしまう。名前まで肉の話に寄せてこないでほしい。

26. 謎の名無しさん
保存されてた標本の味をゼリービーンズにして、お祭りで配った? 150年近く続いた謎の結末として、いちばん予想できない方向に飛んでいった。

27. 謎の名無しさん(>>26への返信)
ハッピーエンドの話は大好きだよ。ただ「生のベーコン」って感想を聞いたら、自分は遠慮しておく。食べた人たちの度胸は1876年の2人に負けてない。

28. 謎の名無しさん
近くの大学に通ってた。トランシルバニア大学って名前に最初は驚いたけど、ラテン語で「森の向こう」くらいの意味で、アレゲニー山脈より西で最初にできた大学なんだって。

29. 謎の名無しさん(>>28への返信)
ルーマニアにも本家のトランシルヴァニアがあるけど、こっちは本当に森の向こうにある土地だから、名前が合ってるんだよ。ケンタッキーに同じ名前の大学があるとは知らなかった。

30. 謎の名無しさん
竜巻でカエルや魚が巻き上げられて降ってくる話は世界中にある。でも当日は晴れて風も穏やかだったなら、竜巻の線は消える。そうなると、やっぱり空の上にいたハゲワシの群れしか残らない気がする。

未解決の謎

150年近くたった今も、ケンタッキーの肉の雨には決着がついていない。いちばん筋が通るのはハゲワシの吐き戻し説で、肺・筋肉・軟骨が混じっていたこと、動物の種類がばらばらに見えたこと、ちぎれたような形だったことをまとめて説明できる。カステンバインが事件の年のうちにこの説を出し、標本を見つけたゴーディも、ありうると思えるのはこの説だけだと話している。

それでも引っかかるのは、クラウチ夫人の「空には何も無かった」という証言だ。群れが高いところを飛んでいた、吐いて身軽になってすぐ去った、降ってくる肉に気を取られて見落とした――説明はいくらでもつけられるが、どれも推測にすぎない。鳥を見たという人が一人もいない以上、ハゲワシ説も状況から組み立てた仮説の域を出ない。

唯一残った手がかりの標本も、遺伝子を調べるには古すぎた。何の動物の肉だったのかさえ分からないまま、小瓶は大学の博物館に収まり、ときどき地元に里帰りしては見物人を集めている。答えが出ないこと自体が、この出来事を150年近く語り継がせてきたのかもしれない。

出典:r/UnresolvedMysteries 元スレ / Wikipedia

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