2011年4月、フランス・ナント市の自宅テラスの下から、妻と4人の子どもの遺体が掘り起こされた。容疑者として手配されたのは一家の父、グザヴィエ・デュポン・ド・リゴネス。彼はフランス南部で姿を消し、15年が経った今も発見されていない。延べ1,850件を超える目撃情報も、ただの一度として彼を捕らえることはなかった。ところが2026年6月、地元紙『ウエスト・フランス』が報じた一本のスクープが、長く凍りついていたこの事件を再び揺さぶった。あるカトリック系の宗教フォーラムに、文体解析※によって彼のものと疑われるアカウントが——失踪から6年後の2017年まで書き込みを続けていた、というのである。
※ 文体解析(スタイロメトリ):書き手が「何を書くか」ではなく「どう書くか」で著者を特定する手法。句読点の癖、好んで使う語、論の組み立て方など、本人も無意識のクセを照合する。バンクシーの正体推定などにも使われている。
事件の概要
🗓️ 発生日:2011年4月(一家殺害)/同年4月15日頃に容疑者失踪
🌫️ 場所:フランス西部ナント市(殺害現場)、最後の目撃は南部ロックブリュンヌ・シュル・アルジャン
👤 被害者・容疑者:妻アニェスと4人の子ども/容疑者は父グザヴィエ・デュポン・ド・リゴネス
🔍 状況:5人の遺体が自宅テラスの下から発見。父はその直前に南部へ向かい、森に消えるように姿を消した
🕯️ 現状:15年間逃亡中。生死すら不明。文体解析で2017年まで書き込みを続けた疑いのアカウントが浮上
没落しつつあった裕福な家庭の主、グザヴィエ・デュポン・ド・リゴネス。家計は破綻寸前で、彼は周囲に「家族でアメリカへ移住する」「証人保護プログラムに入る」などと辻褄の合わない説明を重ねていた。やがて2011年4月、妻と4人の子どもは自宅で命を奪われ、丁寧に毛布にくるまれて庭のテラスの下に埋められた。遺体が見つかったのはその後のことだ。
その間、彼は家族の不在を知人に言い繕いながら南へ向かい、ホテルやレストランの防犯カメラに点々と姿を残したのち、ある朝、宿の近くの森へ歩いていく後ろ姿を最後に消息を絶った。以来15年、彼の確たる痕跡はただの一つも見つかっていない。フランス犯罪史に残る大失踪事件である。
判明している事実
2つの実名アカウントは既知だった
リゴネスが生前、信仰や聖書、神学を論じるフォーラム「cite-catholique.org」に「Chevy」、続いて「LIGO」というハンドルで書き込んでいたことは以前から判明していた。LIGOアカウントの最後の書き込みは2011年4月8日——妻子の遺体が発見されるわずか数日前だった
第三のアカウント「Epsilon」が2017年まで活動
今回ウエスト・フランスが報じたのは、同じフォーラムにあった第三のアカウント「Epsilon」の存在。2010年7月に作られ、7年間で1,169本もの書き込みを残し、2017年8月15日にぷつりと沈黙した。失踪から6年以上が経っていた
際立った文体の一致
Chevy、LIGO、Epsilonの3アカウントには、文中で特定の単語だけを大文字で叩きつける癖、引用符を皮肉に使う癖、「???」「!!!!」と疑問符・感嘆符を何個も連ねる癖が共通していた。論を締めるときの「Q.E.D.」や「非網羅的リスト」という決まり文句まで一致したという
忘れられた旧約聖書の3人の王
押収された2008年の私的な手紙で、リゴネスは聖書の矛盾を論じる例として、ほとんど語られないバアシャ、エホヤキン、アハズヤという3人の旧約の王を挙げていた。ところがEpsilonも2011年2月、この3人をめぐる全く同じ議論を投稿していた。15年・6,500人超の会員のうち、バアシャ王に言及したのはEpsilonただ一人だったという
それでも決定的証拠ではない
グレゴリー事件でも知られるスイスの文体解析の専門家は、この手がかりを「信憑性が高い」と評価しつつ、模倣者の可能性は完全には排除できないと釘を刺した。アカウントの正体を確定できるのは接続記録などの技術データだけで、現時点で本人と断定はできない
主な仮説
仮説1:国外あるいは国内のどこかで今も生存している
もしEpsilonが本人なら、彼は2017年まで生きてフォーラムに書き込んでいたことになる。長期逃亡者は完全な孤立に耐えられず、何らかの知的・社会的なつながりを保つ傾向があると研究は指摘する。顔を晒す危険のない匿名の場で神学を論じることは、彼にとって唯一の「自分を保つ手段」だった可能性がある。コメント欄でも多数派の見方だ。
仮説2:失踪直後に自殺し、遺体が見つかっていないだけ
数々の連続殺人犯を鑑定してきたフランスの著名な精神科医は、リゴネスは自ら命を絶ったとみて、その説で一冊の本まで書いている。彼が消えた南部マシフ・デ・モール一帯は、深い洞窟や陥没穴、人が入り込めない地下空洞だらけで、遺体が永久に見つからない地形だという。この説に立てば、Epsilon=別人ということになる。
仮説3:Epsilonは本人ではなく、よく似た別人(あるいは模倣者)
フォーラムの書き込みは公開されており、誰でも読める。実際に読んだというフランス語話者のコメントによれば、実名アカウントが私生活に触れるのに対し、Epsilonは徹底して神学だけを語り、毎回「敬具 Epsilon」で締めるなど明らかな差異もあるという。文体の一致は偶然か、彼の書き方を真似た第三者という可能性も残る。
仮説4:捜査機関は当時から把握していた
これは新聞社による独自調査(OSINT)であって、警察の捜査ではない。報道が今になって出たのは、あくまで全アカウントの解析が最近完了したからにすぎない。逆に言えば、警察が接続記録を辿れば正体を割り出せる可能性が残されている。今後の司法手続き次第で、長い膠着が動くかもしれない。
海外の反応
1. 謎の名無しさん
ニッチなカトリック・フォーラムのアカウントは突き止められるのに、本人がどこに消えたかは突き止められないのかよ……。あのドキュメンタリーで観た「家族の名誉を守るために皆殺しにした」という動機、一生忘れられないと思う。
2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
それ、どのドキュメンタリーの話?気になって仕方ない。フランスの事件は日本だとほとんど報道されないから、まとまった映像で観たいんだけど。
3. 謎の名無しさん(>>2への返信)
配信のミステリー特集に1本入ってたはず。動機の異常さもだけど、淡々と家族をくるんで庭に埋めて、何食わぬ顔で南へ向かった描写がいちばん怖かった。
4. 謎の名無しさん
新聞の独自調査であって警察の捜査じゃない、という点は冷静に押さえておきたい。記者は接続記録までは取れないから、ここから先は警察の仕事。あとは司法がちゃんと動くかどうかにかかってる。
5. 謎の名無しさん(>>4への返信)
誰かが彼を匿ってたんじゃないかと思えてならない。ナントみたいな街で、6年も誰にも気づかれず潜んでいられるものかな。逆に、急に書き込みが止まったのは、引っ越したか、亡くなったか……。
6. 謎の名無しさん
家族皆殺し犯はそう簡単に自殺しない、というのが私の持論。仮にやるなら家族と一緒のその場でやる。こいつもロバート・フィッシャーもジョン・リストも、どこかで新しい人生を満喫してる側の人間だと思う。当局は世界中に顔写真を撒くべきだ。
7. 謎の名無しさん(>>6への返信)
ジョン・リストの名前、私も真っ先に浮かんだ。こういう連中は自分が可愛すぎて死ねないんだよ。欲しいのは新しい人生とまっさらな経歴で、邪魔な家族や借金は「不都合」として消すだけ。身勝手の極み。
8. 謎の名無しさん
だったら、なぜわざわざネットの掲示板に書き込み続けたのか、という疑問は残るよね。逃亡犯なら息を潜めるのが普通だろうに。でも研究によれば、完全な孤独に人は耐えられないらしい。匿名の神学談義だけが、彼が「自分」でいられる場所だったのかも。
9. 謎の名無しさん
バアシャ、エホヤキン、アハズヤ。会員6,500人のうちバアシャ王に触れたのが一人だけ、という事実がいちばん鳥肌だった。文体の癖はまだ偶然と言い張れても、ここまでマニアックな一致を偶然で片付けるのは無理がある。
10. 謎の名無しさん(>>9への返信)
しかも押収された2008年の手紙には「アハズヤ(22歳か42歳)」と書かれていて、Epsilonの投稿も「アハズヤが王になったのは22歳か42歳か?」とほぼ同じ言い回し。手紙は一度も公開されていないのに、だ。これは効く。
11. 謎の名無しさん
将来この男と同じ独房に入れられる受刑者が気の毒でならない。延々と聖書解釈の自説を聞かされるんだぞ。捕まることがあればの話だけど。
12. 謎の名無しさん(>>11への返信)
聖書講釈を浴びせられるのは確かに地獄だが、家族殺しの隣人になるよりはマシかもしれない。せめて相手も同じくらいの罪人であってほしいね。
13. 謎の名無しさん
彼があまりにも傲慢だから、自殺なんてしないと私は思う。プライドの高い人間は、自分の手で幕を引くことすらできない。きっとどこかで生きて、自分は賢いと思いながら掲示板に長文を書き続けていたんだ。
14. 謎の名無しさん
でも一方で、現役で多くの連続殺人犯を鑑定してきたフランスの精神科医は「彼は自殺した」と見ていて、本まで出している。彼が消えた一帯は深い洞窟や陥没穴だらけの土地で、遺体が二度と見つからない地形なんだとか。プロの見立ては重い。
15. 謎の名無しさん(>>14への返信)
正直、私もずっと自殺派だった。森に歩いていく最後の後ろ姿の映像、あれを観ると「もう戻るつもりはなかった」ようにしか見えない。だからこそ2017年まで書き込みがあったという話は、私の中の前提を揺さぶってくる。
16. 謎の名無しさん
この事件、何度掘り下げても惹き込まれる。森の中へ消えていくあの最後の一枚の映像が、とにかく不穏で頭から離れない。生きているにせよ死んでいるにせよ、あの瞬間に彼の人生は途切れている。
17. 謎の名無しさん
実名アカウントとEpsilonには、似ている点だけじゃなくて違う点もあるらしい。実名の方は私生活に触れたり馴れ馴れしかったりするのに、Epsilonは神学一色で、必ず「敬具 Epsilon」で締める。完全に同一人物と決めつけるのは、まだ早い気がする。
18. 謎の名無しさん(>>17への返信)
ただ、すごく引っかかる点が一つ。Epsilonは2011年4月15日——まさに彼が失踪した日まで割と規則的に投稿していて、その後ぱたりと止まり、4か月後に再開している。逃亡の混乱期と空白期がぴったり重なるの、偶然にしては出来すぎてないか。
19. 謎の名無しさん
気になるのは、なぜ2017年で完全に書き込みが止まったのか。引っ越したのか、ネット環境を失ったのか、それとも——亡くなったのか。沈黙そのものが、新しい謎を一つ増やしてしまった感じがする。
20. 謎の名無しさん
文体解析で1人に絞れるなら、フォーラム管理者の協力で当時の接続記録を辿れないのかな。2011年の段階では管理側が捜査に情報提供したらしいし、今あらためて司法が要請すれば、Epsilonの正体に手が届くかもしれない。期待したい。
21. 謎の名無しさん(>>20への返信)
そこが現実的な争点だよね。文体の一致はあくまで状況証拠で、決め手にはならない。IPアドレスなどの技術データだけが白黒つけられる。逆に言えば、その記録さえ残っていれば一気に解決する可能性もある。
22. 謎の名無しさん
正直に言うと、自分も他人の目を気にしすぎて、何もかも捨てて消えたくなる気持ちは分からなくもない(治療中だ)。家族を置いて逃げるのは残酷だけど、心の動きは想像できる。でも殺害は別次元だ。どうすれば愛すべき人間の命をそこまで軽く扱えるのか。
23. 謎の名無しさん(>>22への返信)
そこなんだよな。逃げるだけなら、まだ理解の余地はある。黙って出ていけばいい。なぜ全員を手にかける必要があったのか、そこだけはどれだけ考えても腑に落ちない。
24. 謎の名無しさん
彼が長年通っていたのが、何百人規模の小さな信仰コミュニティだった点が興味深い。週に何度も夜に書き込んでいたらしく、ChevyとLIGOで合わせて670本。彼にとって唯一の自己表現の場だったとすれば、別名でそこへ戻ってきたという推理にも妙な説得力がある。
25. 謎の名無しさん
Epsilonの書き込みには、カインの物語が繰り返し出てくるという。弟を殺した後、なぜ神は殺人者を守ったのか——というあのくだりだ。家族を手にかけた人間が、よりによってその話題に固執していたのだとしたら、ぞっとするほど示唆的じゃないか。
26. 謎の名無しさん(>>25への返信)
「神の赦しは無条件に与えられる」とか「煉獄は死後の和解の場」とかを熱心に説いていたという話も、同じ筋で読めてしまう。自分の罪を、神学を通して必死に正当化していたんじゃないか……と勘ぐりたくなる。
27. 謎の名無しさん
1,169本も書いたのに、街の名前も家族も職業も、私生活が一切出てこないという徹底ぶりが逆に不気味。普通のユーザーはどこかで生活の断片を漏らすものなのに、Epsilonは7年間それを一度もしなかった。隠す理由のある人間の振る舞いに見えてしまう。
28. 謎の名無しさん
失踪以来1,850件以上の目撃情報があって、ただの一件も実を結んでいないという事実が重い。スコットランドの修道院にいた、南米にいた、と毎回騒ぎになって毎回空振り。今回の手がかりも、また同じ轍を踏まないことを祈るばかりだ。
29. 謎の名無しさん
どんなに親しい相手でも、家族を手にかけた人間を匿うなんて私には絶対できない。もしEpsilonがリゴネスでナントにいたのなら、誰かが見て見ぬふりをしていたことになる。そっちの方が、よほど後味が悪い。
30. 謎の名無しさん
良い知らせだと思いたい。これがきっかけで突破口が開いてほしい。15年逃げ切られたままでは、亡くなった奥さんと4人の子どもがあまりに浮かばれない。生きているなら、生きているうちに必ず見つかってほしい。
未解決の謎
グザヴィエ・デュポン・ド・リゴネスがどこへ消えたのか、そもそも今も生きているのかさえ、15年を経た今も誰にも分からない。妻アニェスと4人の子どもの命を奪った張本人は、フランス南部の森に歩み入る後ろ姿を最後に、人類の記録から忽然と姿を消した。
今回浮かび上がった「Epsilon」アカウントは、この事件に新しい問いを突きつける。文体の癖、共通の対話相手、そして6,500人のうち彼ただ一人しか触れなかった3人の旧約の王——これらの一致を、専門家は「信憑性が高い」と評する。もしこれが本人なら、彼は失踪から6年後の2017年まで、匿名の仮面の下で神学を語り続けていたことになる。
しかし、文体の一致は状況証拠にすぎない。実名アカウントとは異なる癖もあり、模倣者の可能性も完全には消えない。何より「逃亡犯がなぜ書き込みを続けたのか」「なぜ2017年で沈黙したのか」という二重の謎が、依然として宙に浮いたままだ。白黒をつけられるのは、おそらく接続記録という冷たい技術データだけだろう。
自殺してマシフ・デ・モールの地中深くに眠っているのか、それともどこかで今も静かに生きているのか。生存派と死亡派は15年間ずっと平行線をたどってきた。Epsilonの正体が解き明かされる日まで、その問いに答えは出ない。
出典:r/UnsolvedMysteries 元スレ / Ouest-France 調査報道(2026年6月1日)

