カナダ・アルバータ州の州都エドモントンから南東へ車で30分ほど。レデュック郡のロリービューと呼ばれる一帯は、麦畑と牧草地のあいだを砂利道が碁盤の目のように走るだけの、どこにでもある農村地帯である。ところがこの静かな土地から、2002年から2015年までの13年のあいだに、5人の女性の遺体が相次いで見つかった。しかもそのうち4人は、カナダ王立騎馬警察(RCMP)※いわく「半径およそ8キロ」という、車なら10分とかからない範囲に収まっていた。
※ RCMP:Royal Canadian Mounted Police(カナダ王立騎馬警察)。連邦警察でありながら、州や自治体と契約して地方の警察業務も担っている。アルバータ州の郡部はこのRCMPの管轄になる。
5件はいずれも、いまも未解決のままである。同じ人物の仕業なのか、それとも別々の犯人が「人目につかない同じ土地」を選んだだけなのか。地元では長く語られてきたにもかかわらず、全国的な事件として大きく扱われることはほとんどなかった。今回はr/UnresolvedMysteriesに立った検証スレッドをもとに、この「レデュック郡の集積」を追う。
事件の概要
🗓️ 発生期間:2002年9月〜2015年4月(遺体の発見時期)
🌫️ 場所:カナダ・アルバータ州レデュック郡ロリービュー周辺
👤 被害者:エドナ・バーナードさん(28)、ケイティ・シルヴィア・バランタインさん(40)、コリー・リニー・オッテンブライトさん(27)、ディロリス・ドーン・ブラワーさん(33)、アンバー・タッカロさん(20)
🔍 状況:多くがエドモントン市内やニスク周辺で最後に目撃されており、ヒッチハイクをしていた、あるいは車に乗り込む姿が確認されている
🕯️ 現状:5件とも未解決。RCMPは「連続的な捕食者」の可能性に触れたが、同一犯とは公式に断定していない
時系列で並べると、この集積の輪郭がはっきりする。最初はエドナ・バーナードさん(28)で、2002年9月にレンジロード245※の近くで見つかった。翌2003年7月には、ケイティ・シルヴィア・バランタインさん(40)がレンジロード235沿いの畑で発見されている。
※ レンジロード:カナダ西部の農村で使われる道路の呼び方。土地を約1マイル四方の区画に切る測量制度に沿って、南北に走る道に「レンジロード○○」、東西に走る道に「タウンシップロード○○」と番号が振られている。住所というより座標に近く、番号を聞けば地元の人間には場所がすぐ分かる。
2004年5月には、コリー・リニー・オッテンブライトさん(27)とディロリス・ドーン・ブラワーさん(33)が、わずか数日の間隔でエドモントンから相次いで姿を消した。2人の遺体が見つかったのは11年後の2015年4月で、しかも発見場所は同じだった。そして2010年8月、エドモントン国際空港のそばに広がる産業地区ニスク※から、アンバー・タッカロさん(20)が消えた。彼女の遺体は2012年9月、レンジロード241とハイウェイ623の交差点近くで発見されている。
※ ニスク:エドモントンの南、レデュック市の隣に位置する工業団地。石油関連企業の事業所とホテルが並ぶ地区で、住宅街というより物流と作業員のための土地に近い。公共交通が乏しく、移動は車が前提になる。
判明している事実
半径8キロに収まる4人
RCMPは、ケイティさん、コリーさん、ディロリスさん、アンバーさんの遺体発見現場が半径およそ8キロの範囲に収まると明言している。エドナさんの発見場所も同じロリービュー一帯にあり、地元では最初から4件と切り離さずに語られてきた。13年という時間の幅に対して、空間の幅がここまで狭いのは異例である。
同じ場所から見つかった2人
コリーさんとディロリスさんは、2004年5月に数日違いでエドモントンから姿を消している。11年後に遺体が発見されたとき、2人は同じ場所から出てきた。消えた時期が近いだけなら偶然もありうるが、遺された場所まで一致するとなると、少なくともこの2件については同じ人物が関与したと考えるほうが自然になる。
最後の車内から残った音声
アンバー・タッカロさんのケースでは、失踪直前の車内での通話の一部が録音として残っていた。音声のなかで彼女は、運転していた男に対して、どこへ向かっているのかを繰り返し確かめている。男の声も入っているが、身元はいまも特定されていない。この録音はのちに公開されて広く報じられたものの、これまでに起訴された人物は一人もいない。
警察が口にした「連続的な捕食者」
2015年にコリーさんの身元が判明した際、RCMPのステイシー・タルボット警部は、捜査当局が相手にしているのは「連続的な捕食者(serial predator)」かもしれないと述べている。ただし警察は、5人全員が同一人物に殺害されたと公式に断定したことはない。この事件が「連続殺人」と呼びきられない理由もそこにある。
被害者の多くが先住民の女性だった
5人の多くは先住民の女性で、支援の届きにくい状況に置かれていた。これはカナダで長年、MMIWG※という言葉とともに国家的な課題として扱われてきた構図とそのまま重なる。この集積が13年ものあいだ全国的に注目されなかったこと自体が、事件の一部として語られている。
※ MMIWG:Missing and Murdered Indigenous Women and Girls(行方不明・殺害された先住民女性と少女)の略。カナダで先住民の女性や少女が失踪・殺害の被害に遭う割合が突出して高いこと、そしてそれらの事件に捜査資源が割かれにくいことを指す言葉で、連邦政府による全国調査も行われた。
主な仮説
仮説1:同一の連続殺人犯による犯行
元スレでもっとも多く語られていた見方である。根拠は、発見場所が異例なほど集中していること、遺された状況が似ていること(畑や林、人の通らない道の脇)、被害者の背景が重なること、そしてRCMP自身が「連続的な捕食者」という言葉を使ったこと。レンジロード沿いで育ったという住民は、あの一帯は砂利の裏道ばかりで土地勘のない人間が夜に走り回れる道ではない、と書き込んでいる。犯人が地元を熟知した人物だという推測はここから来ている。ただし、13年かけて誰も起訴されていないという事実は、この仮説の最大の弱点でもある。
仮説2:複数の犯人が同じ「人目につかない土地」を選んだ
エドモントンから車で30分、幹線道路を一本外れれば誰にも見られない土地が延々と続く。そういう場所は、犯人が別人でも同じように選ばれてしまう。実際、コリーさんとディロリスさんを除く3件については、遺棄の状況を直接結びつける決定的な共通点は公表されていない。地理的な集中は「同じ犯人がいた」証拠ではなく、「同じ条件の土地がそこにあった」ことの反映にすぎない、という見方である。ただしこの仮説でも、2人が同じ場所から出てきた事実だけは説明しきれない。
仮説3:1980年代から続く、より広い連続事件の一部
スレッドで支持を集めた見方のひとつが、5人という枠そのものが小さすぎるというものだった。エドモントン周辺では1980年代以降、似た背景を持つ女性の事件が数十件規模で積み上がっており、当局もそのつながりを完全には否定していない。2005年に大きく報じられた当時の犯人像は「40〜60歳の男性」。この線でいけば、犯人は現在70代以上ということになり、2015年以降に新たな発見がないことの説明にもなる。もっとも、この人物像はあまりに一般的で、州内の何千人にも当てはまってしまう。
仮説4:犯人像ではなく、捜査の空白が事件を残した
誰が殺したかという問いとは別に、なぜ13年も止められなかったのかという問いがある。被害者の多くが先住民で、社会的に不安定な状況にあったこと。失踪届が出ても「自分の意思でいなくなった」と処理されやすいこと。広大な郡部を少人数のRCMPが受け持っていること。こうした条件が重なれば、犯人が一人でも複数でも、捜査は同じように遅れる。コリーさんとディロリスさんの遺体が見つかるまで11年かかった事実は、犯人の周到さだけでは説明できない。
海外の反応
1. 謎の名無しさん
レンジロード245沿いで育った人間だ。あれは連続殺人犯の仕業だというのが、警察のあいだでも半ば共通の見方だと聞いている。砂利の裏道ばかりで、土地勘のない人間が夜に走り回れる場所じゃない。藪と用水路だらけで誰も歩かないから、この先まだ見つかっていない人が出てきても正直まったく驚かない。
2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
つまり通りすがりの犯行ではなく、あの道を日常的に使っている人間ということになる。それだけで対象はかなり絞れそうなものなのに、13年経っても誰ひとり捕まらないのが不思議でならない。
3. 謎の名無しさん
5人「だけ」なのか、5人「しか見つかっていない」のかで意味がまるで違ってくる。2015年でぱたりと止まったのか、それとも捨てる場所を変えただけなのか。どちらを考えても気分が悪い。
4. 謎の名無しさん
5人では収まらないと思っている。1980年代まで遡ると、似た背景を持つ女性の事件が数十件単位である。エドモントン市警もRCMPも、そのつながりを完全には否定していないはずだ。
5. 謎の名無しさん(>>4への返信)
80年代から続いているとすると、犯人はもう60代後半から70代ということになる。力の要る犯行が2015年前後で途切れたのは、単純に歳を取ったからという説明もできてしまうのが嫌なところ。
6. 謎の名無しさん
2005年に大きく報じられたときの人物像は「40〜60歳の男性」だった。ただ、これがあまりに漠然としていて、アルバータ州の何千人にも当てはまってしまう。絞り込みの役に立ったとは思えない。
7. 謎の名無しさん
地元の人間にも警察にもある程度の見当はついているのに、なぜ誰ひとり捕まらないのか。この構図が一番わからない。外から見ていると異様に映る。
8. 謎の名無しさん(>>7への返信)
証拠が足りないんだと思う。RCMPは米国の警察と違って捜査状況をほとんどメディアに出さないから、水面下で動いていても外からは何も見えない。沈黙と無関心は別物だと信じたいところではある。
9. 謎の名無しさん
噂と陰口だけで人を逮捕することはできない。そこは絶対に崩してはいけない線だと思う。ネットが先に名前を決めつけて、後から間違いだったという話も同じくらい見てきた。
10. 謎の名無しさん(>>9への返信)
同意する。ただ「証拠がない」ことと「そもそも探していない」ことはまったく別の話で、この件で問われているのは後者のほうじゃないかという気がしている。
11. 謎の名無しさん
カナダにはMMIWGという略語があるくらい、この問題は根が深い。歴史的な差別と、そこから生まれた貧困や孤立のせいで先住民の女性は被害に遭いやすい。そして同じ理由で、捜索にも人手が回らない。二重に不利な立場に置かれている。
12. 謎の名無しさん
身内の話で恐縮だが、ピクトン事件の被害者の一人が自分の親戚だった。長い年月のあいだに、いとこも何人か消えている。「先住民です」と伝えた瞬間、相手の目から関心が抜けていくのが分かる。毎日きちんと働いて家に帰ってくる人だった、勝手にいなくなるような人じゃないと何度説明しても、返ってくるのは「進展があればご連絡します」だけだった。
13. 謎の名無しさん(>>12への返信)
何を書いても取ってつけたようになりそうで、かける言葉が見つからない。それでも書いておきたい。あなたの家族が忘れられていい理由なんて、ひとつもない。
14. 謎の名無しさん
現実の警察はドラマの刑事とはまるで違う。ハイウェイ・オブ・ティアーズだって、あれだけの数の女性が亡くなって、裁かれた人間はほとんどいない。しかも期間が長すぎるせいで、犯人が一人だという保証すらない。
15. 謎の名無しさん
被害者の多くがエドモントンやニスクで最後に目撃されて、遺体は郡部の畑や林で見つかっている。車がなければどこにも行けない土地で、誰かの車に乗った時点で行き先を決める権利が自分の手を離れる。それが一番怖い。
16. 謎の名無しさん
アンバー・タッカロさんの録音はポッドキャストで聴いた。カナダの田舎特有の訛りがかなり強くて、都市部の人間の喋り方ではなかった。地元か、その近郊に住んでいる人だと思う。
17. 謎の名無しさん(>>16への返信)
サスカチュワン在住で以前はアルバータにいたけれど、あの訛りはどちらでも通る。マニトバでもおかしくない。中年の白人男性の、どこにでもある声というのが正直な感想。
18. 謎の名無しさん
録音の公開がずいぶん経ってからだったという指摘には、どうしても引っかかってしまう。声に聞き覚えのある人が一人でもいれば、そこから最初の一歩が始まったかもしれないのに。
19. 謎の名無しさん
レデュックから車で20分ほどのところに住んでいるのに、この件をまったく知らなかった。地元でさえ話題にならないという状態そのものが、この事件が長引いた理由の一部なんだと思う。
20. 謎の名無しさん
昔、アルバータ北部の小さな町で一緒に働いていた男が、女性を油井のそばに置き去りにして服役した。その女性は運よく助かった。似た状況で亡くなった女性が他にもいたけれど、彼と結びついたかどうかまでは知らない。
21. 謎の名無しさん
数日違いで消えた2人が、11年後に同じ場所から見つかっている。この一点を偶然で片づけるのはさすがに無理がある。少なくともこの2件だけは切り離せないと思う。
22. 謎の名無しさん(>>21への返信)
そこは同意する。ただ、その2件が同一人物だったとしても、残りの3件まで同じ人物とは限らない。ひとまとめにしたい気持ちは分かるけれど、捜査としてはむしろ危ない気がする。
23. 謎の名無しさん
「いい人だった、あの人がそんなことをするなんて」という決まり文句、自分の口から出てきたときに初めて何も分かっていなかったと思い知った。ずっと親切で、感じのいい同僚だったのに。
24. 謎の名無しさん(>>23への返信)
その台詞が出てくるのは、その人が地域に完全に溶け込んでいたからでもある。溶け込んでいるほど誰も通報しないし、証言も集まらない。都合の悪い「普通さ」というものが確かにある。
25. 謎の名無しさん
ハイウェイ16、いわゆるハイウェイ・オブ・ティアーズ※とつながっている可能性はないんだろうか。被害に遭う人の背景も、道路沿いという場所も、あまりに構図が似ている。
※ ハイウェイ・オブ・ティアーズ:カナダ・ブリティッシュコロンビア州を東西に走るハイウェイ16号の一部区間につけられた呼び名。1970年代以降、この沿線で多数の女性が失踪・殺害され、その多くが先住民の女性だったことから、こう呼ばれるようになった。大半が未解決のままである。
26. 謎の名無しさん(>>25への返信)
距離が離れすぎているから、直接の関係は薄いと思う。ただ「地方の幹線道路」「車に頼るしかない移動」「先住民の女性」という組み合わせは同じで、そこが本当の問題なんだと思う。
27. 謎の名無しさん
地元で特定の名前が流れているのは知っている。それでも掲示板で名指しするのは違うと思う。起訴も有罪判決も受けていない人を犯人として扱うのは、結果として事件を解決から遠ざけるだけだ。
28. 謎の名無しさん(>>27への返信)
同感。名指しの投稿がひとつ出るたびに、この件は「ネットで盛り上がっている案件」として扱われるようになる。いちばん損をするのは、答えを待っている家族のほうだと思う。
29. 謎の名無しさん
DNAも書類の痕跡もネット上の記録も何ひとつ残っていない、なんてことがあるんだろうか。2010年の失踪なら携帯電話も通話記録もあったはずで、そこから何も出てこないのが信じられない。
30. 謎の名無しさん(>>29への返信)
何年も屋外に置かれた遺体から取れるものは、どうしても限られてしまう。ただ当時は読めなかった微量の資料が、今の技術なら扱える例は増えている。20年越しに動いた古い事件を何度も見てきたから、まだ諦める段階ではないと思っている。
未解決の謎
この事件でもっとも扱いに困るのは、「連続殺人と呼ぶには証拠が足りず、無関係と切り捨てるには場所が近すぎる」という中途半端さである。RCMPは半径およそ8キロという数字を公表し、幹部は「連続的な捕食者」という言葉まで使った。それでも同一犯とは断定していない。断定できるだけの物証が、13年分の捜査を経てもなお揃っていないということになる。
唯一、偶然で説明しづらいのがコリーさんとディロリスさんの2件だ。数日違いで消え、11年後に同じ場所から出てきた。ここだけは、少なくとも遺棄について同じ人物が関わったと考えるほうが無理がない。問題は、その1本の線を残りの3件まで伸ばせるかどうかで、そこから先は誰も証拠を出せていない。地理的な近さは強い状況証拠に見えるが、それ自体は犯人を一人に絞る根拠にはならない。
そしてもう一つ、事件そのものとは別の謎がある。なぜこの集積が、13年ものあいだ全国的な事件として扱われなかったのか。元スレには、車で20分の距離に住んでいながらまったく知らなかったという書き込みがあった。被害者の多くが先住民で、支援の届きにくい状況にあったこと。失踪届が「自分の意思で去った」と処理されやすいこと。カナダがMMIWGという言葉を持たざるをえなかった背景が、そのままこの空白に重なって見える。
地元では特定の人物の名前が長く流れている。それでも、起訴された人間は一人もいない。噂が正しければ、確かめるのが遅れた分だけ被害が増えたことになる。噂が誤っていれば、無実の人間が20年以上疑われ続けていることになる。どちらであっても、確かめられていないという一点だけは変わらない。そして答えを待っているのは、いまも5つの家族のほうである。


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