【1985年】東映でもAKOMでもない絵柄の9本——米国版トランスフォーマーは誰が描いたのか

【1985年】東映でもAKOMでもない絵柄の9本——米国版トランスフォーマーは誰が描いたのか 都市伝説・陰謀

1984年から87年にかけてアメリカで放送されたテレビアニメ『トランスフォーマー』。日本でも『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』のタイトルで放送された、あのシリーズだ。実はこの作品には、どこのアニメスタジオが絵を描いたのか、今も分かっていない回がある。

作画の大半を担ったのは、日本の東映動画(現・東映アニメーション)と、韓国のAKOMの2社だった。ところが、東映が公表していた担当本数と、ファンが絵柄から割り出した本数を突き合わせると、9本が宙に浮く。しかもその9本は、東映の絵にもAKOMの絵にも似ていなかった。海外掲示板Redditの r/UnresolvedMysteries に「失踪や殺人の話からちょっと一息」として投稿されたこの話題には、115件のコメントが集まった。

※ AKOM:韓国のアニメ制作会社。元スレによれば、創業者のネルソン・シンは、作画の大半を東映が担っていた時期から『トランスフォーマー』のプロデューサーにも名を連ねていた。

事件の概要

🗓️ 時期:1984〜87年にアメリカで放送。作画元が分からない回は、1985年に始まったシーズン2と、続くシーズン3にある

🌫️ 場所:制作はアメリカのサンボウ・プロダクションズ。作画は日本の東映動画と韓国のAKOMが中心

👤 関係者:東映動画、AKOM、番組の制作コーディネーターだったポール・デイヴィッズ

🔍 状況:東映の実績一覧と、ファンが絵柄から割り出した担当回の数が9本合わない。その9本は東映ともAKOMとも違う絵柄だった

🕯️ 現状:ファンの調査をまとめたWikiによれば、シーズン2の7本と、シーズン3の “Only Human” などは、今も作画したスタジオが特定されていない

まず知っておきたいのが、当時のアメリカのテレビアニメの作り方だ。1980年代から、アメリカのアニメは脚本、絵コンテ、声の収録、編集まではアメリカ国内でこなし、実際に絵を描いて動かす「作画」は海外のスタジオに外注するのが当たり前になっていた。外注先として多かったのがアジアのスタジオで、『トランスフォーマー』の場合は日本と韓国の会社だった。

1つのシリーズを複数のスタジオに分けて発注することも多く、絵柄がばらばらにならないよう、アメリカ側からキャラクターモデルシートなどの資料が送られた。ただし、どのスタジオが描いたのかは番組のクレジットに載らないのが普通だった。アメリカの子どもたちは、日本や韓国のスタジオが描いた回を、それと知らずに見ていたことになる。それでも絵には各社の癖が出るので、熱心なファンは顔の描き方や動き、塗りの違いから担当スタジオを見分けてきた。

※ キャラクターモデルシート:キャラクターの正面・横・後ろ姿や表情、色などを描き並べた設定資料。大勢の描き手が同じ絵柄で描けるように配られる。

判明している事実

作画の中心は東映動画と韓国のAKOM
東映の公式サイトにかつて載っていた実績一覧によれば、東映はシーズン1の全話、シーズン2のうち39本、シーズン3のうち13本、そして劇場版の作画を手がけた。AKOMは後のシーズンほど担当が増え、シーズン2で3本、シーズン3で14本、シーズン4は全話を受け持った。東映より安く請け負えたからだろうと見られている。AKOMの回は動画枚数が多く動きがなめらかな一方、作画ミスがはるかに多く、古いデザインや間違ったデザインのキャラクターが何度も登場する。

※ 動画枚数:動きを表すために描く絵の枚数。枚数が多いほど動きはなめらかになるが、そのぶん手間がかかる。

東映の実績一覧と9本が合わない
問題は数だった。東映が公式に出している本数は、ファンが東映の回だと見ていた本数より9本少なかった。改めて見直すと、シーズン2の7本とシーズン3の2本が、東映でもAKOMでもない第三のスタジオの絵に見えた。キャラクターの描き方が2社のどちらとも違ううえ、2社が使っていない陰影のつけ方や、エアブラシによるぼかしが入っている。

※ エアブラシ:絵の具を霧のように吹き付けて塗る道具。セル画のアニメでは、ぼかしやグラデーションの表現に使われた。

制作コーディネーターの証言は「フィリピンのスタジオ」
番組の制作コーディネーターだったポール・デイヴィッズは、2002年のインタビューで、第三のスタジオはフィリピンにあったと語っている。ところが元スレによれば、当時フィリピンにあったアニメスタジオ2社は、どちらも候補から外れる。1社はハンナ・バーベラの仕事だけを請け負っていた会社で(『トランスフォーマー』の制作はサンボウ)、もう1社には『トランスフォーマー』に関わった記録が一切ない。

※ ハンナ・バーベラ:『原始家族フリントストーン』『チキチキマシン猛レース』などで知られるアメリカのアニメ制作会社。

1本だけまったく違う絵柄の “Call of the Primitives”
シーズン3の “Call of the Primitives”(直訳すると「原始の呼び声」)は、ほかのどの回とも違う絵柄で、作画の質もシリーズで飛び抜けて高い。90年代初めごろから日本の東京ムービー新社の仕事ではないかと言われてきたが、元スレの時点では、同じ日本の葦プロダクションのほうが有力(ただし決め手はない)とされていた。葦プロは東映から仕事を請けることがあったため、東映がこの回を別の会社に回したと考えられていた。その後、ファンの調査をまとめたWikiによれば、2020年にはこの回の監督が、東映の担当回の作業の一部をスタジオルック(Studio Look)に再委託していたと認めたという。

2019年に出てきた制作資料と、今も特定されない回
同じWikiによれば、2019年に出てきた制作資料には、シーズン3の “Starscream’s Ghost” がAKOMの担当と記されていた。ただし作画の質から、AKOMがさらに別のスタジオに回した可能性も指摘されている。一方、シーズン2の “Auto Berserk” “A Decepticon Raider in King Arthur’s Court” “Make Tracks” “The Secret of Omega Supreme” “Kremzeek!” “Triple Takeover” “A Prime Problem” の7本と、シーズン3の “Only Human” などは、今も作画したスタジオが特定されていない。フィリピンや北朝鮮のスタジオが手がけたという説はあるが、どれも証明されていない。

主な仮説

仮説1:東映かAKOMが、さらに別の会社に回した

コメント欄でもっとも支持を集め、スレ主も追記で「トランスフォーマーのファンの間では、おおむね受け入れられている見方のようだ」と書いた説。締め切りに追われた東映やAKOMが、1話分をまるごと小さな会社にグロス請けで任せたのなら、その発注はサンボウ側の書類に残らない。その会社が長続きせずに消えていれば、記録ごと失われる。アニメや映像業界で働く人からも「よくある話」という声が出た。”Call of the Primitives” では東映から別の会社への再委託を監督が認めており、仕事がこうした形で流れていたこと自体は裏付けられている。弱点は、謎の回が実際にどこへ回ったのかを示す資料や証言が、依然として出てきていないことだ。

※ グロス請け:アニメ業界の用語で、元請けの制作会社から、1話分の制作をまとめて別の会社が請け負うこと。

仮説2:証言どおり、フィリピンのスタジオだった

制作コーディネーターの証言をそのまま信じる説。当時の2社がどちらも当てはまらないという矛盾には、「ハンナ・バーベラの仕事だけをしていた会社が、表に出せない形でこっそり請けたのではないか」という答えが出された。契約で他社の仕事が禁じられていたなら、書類を残さないのも自然だ、というわけだ。ただ、裏付ける材料は何もなく、本当にそうなら関わった人が名乗り出ない限り分からない。

仮説3:北朝鮮のスタジオが描いた

スレ主が追記で候補に挙げたのが、北朝鮮のアニメスタジオSEKだ。AKOMの創業者ネルソン・シンは番組のプロデューサーでもあったので、もし当時AKOMが北朝鮮に仕事を回していたなら、何本かがそこで描かれていてもおかしくない、という筋立てである。ただし、AKOMが当時北朝鮮に外注していたことを示す資料は元スレには出ておらず、「SEKは主にヨーロッパのアニメの仕事をしていたはず」という指摘もあった。

仮説4:第三のスタジオではなく、東映かAKOMの別チーム

東映かAKOMの社内の、腕のいい別チームが担当したという説。数本のために3社目を入れるのは手間がかかりすぎる、という発想だ。これには、東映はシーズンごとの担当本数をはっきり公表しており、ごまかしの余地がないと反論が出た。シーズン3は一覧に13本とあり、東映の絵柄の回もちょうど13本で、数に余りがない。

海外の反応

1. 謎の名無しさん
このサブって99%が殺人か失踪の話だから、こういうのは本当に息抜きになる。誰も傷ついてない謎っていいよね。傷ついてるのは、解こうとしてる人の脳みそだけ。

2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
わかる。しかも子どものころ毎日見てたアニメの話だもんな。鍵っ子で、バスを降りてから家までの2ブロックを毎日全力で走ってた。主題歌の頭すら聞き逃したくなくてさ。あれから35年くらい?

3. 謎の名無しさん
5歳くらいのころ、兄と毎日夕方に見てた。オプティマス・プライム(日本版でいうコンボイ司令官)に本気で恋してたっけ。どこのスタジオが描いた回かなんて、気にしたこともなかった。

4. 謎の名無しさん
業界のことは何も知らないけど、第三の会社はサンボウと直接契約してたんじゃなくて、東映かAKOMが締め切りに追われて地元の小さい会社に手伝わせたんじゃないの? 小さい会社はすぐ潰れるから、記録も残らない。

5. 謎の名無しさん(>>4への返信)
十分ありうる。”Call of the Primitives” を描いたと見られてる葦プロは、東映から仕事を請けることがあった会社なんだ。東映の下請け先を片っ端から当たって、残りの回に合う会社を調べ尽くした人はたぶんまだいない。答えがあるならそこだと思う。

6. 謎の名無しさん
このスレを妻に読み聞かせたら、4とまったく同じことを言ってた。妻はアニメの仕事をしてて、締め切りに間に合わせるために下請けに回したんだろうって。業界の人には驚く話でもないらしい。

7. 謎の名無しさん
映像の後処理(VFX)の仕事をしてるけど、外注先の掛け持ちなんて日常茶飯事だよ。1話どころか、1つのシーンに複数の会社が入ることもある。上が「あの回を先に見せろ」と言い出したら、手の空いてるところに回すしかない。

8. 謎の名無しさん
知ってる人はどこかにいると思う。ただ、世間がこれを探してることを知らないか、契約違反みたいな事情で黙ってるか。言い換えるなら「知ってる人は興味がなくて、興味がある人は知らない」ってやつだ。

9. 謎の名無しさん
書類がなくても、絵は嘘をつかないよ。AKOMの回なんて一目で分かる。動きはやたらなめらかなのに作画ミスだらけで、昔のデザインのキャラが平気で出てくる。謎の回も陰影の入り方が明らかに別物。見る目のある人が並べれば、会社まで絞り込めるはず。

10. 謎の名無しさん(>>9への返信)
「東映じゃない」「AKOMじゃない」までは絵で言える。でも「じゃあどこなのか」は、絵をいくら見ても出てこない。比べる相手の作品リストがないんだから。似た絵の会社があっても、同じ描き手が会社を渡り歩いてただけかもしれないし。

11. 謎の名無しさん
事務所に忍び込んで古い書類を漁る以外にできるのは、同じ時代の別のアニメと見比べることくらい。アーサー王の時代に飛ぶ “A Decepticon Raider in King Arthur’s Court” は、背景がアニメ版『Dungeons & Dragons』に似てるし、D&Dの緑の服の弓使いハンクが色違いで出てくる。D&Dも東映だから、状況証拠だけど外注説の燃料にはなる。

12. 謎の名無しさん
この件、東映に直接問い合わせた人っているのかな。35年前の、しかも外注先のさらに外注の話だから、記録が残ってるかも怪しいけど。聞いてみないことには始まらない。

13. 謎の名無しさん
80年代後半に、ジョー・キューバート・スクール(アメリカの漫画の専門学校)の面接を受けたとき、職員が「うちの学生がG.I.ジョーやトランスフォーマーのアニメを手がけた」って言ってた。まさか、そこだったりしない?

14. 謎の名無しさん(>>13への返信)
それ、アニメじゃなくてコミック版のことじゃないかな。トランスフォーマーとG.I.ジョーのアメコミには、あの学校の出身とされる描き手が何人もいた。自分の知る限り、アニメは作画を全部海外でやってたはず。

15. 謎の名無しさん
2005年ごろ、仕事で80年代のトランスフォーマーの原版を全話分追いかけたことがある。放送当時のままの版をDVD用に作り直すためでね。保管してたフィルムには、サンボウ、マーベル、AKOM、ハズブロなんかのラベルが貼ってあった。昔のメモを見返してくる。

16. 謎の名無しさん
ちょっと待って。うちの父、80年代にトランスフォーマーのテレビアニメの仕事をしてたんだよ。明日電話して聞いてみる。何かしら知ってるはず。

17. 謎の名無しさん
「昔のメモを見返してくる」「明日、親に電話してみる」。この手のスレで一番ワクワクする書き込みだけど、一番続きが来ない書き込みでもあるんだよな。期待しないで待ってます。

18. 謎の名無しさん
第三のスタジオっていうより、東映かAKOMの中でも腕のいいチームが、たまたま時間をかけて作った回なんじゃないの? たった数本のために3社目を入れるのは、アメリカから指示を出す手間を考えると不自然な気がする。

19. 謎の名無しさん(>>18への返信)
東映はシーズンごとの担当本数をはっきり公表してるんだよ。シーズン3は一覧に13本、東映の絵柄の回もぴったり13本。社内の別チームが描いた回が紛れ込む余地なんてない。

20. 謎の名無しさん
素朴な疑問なんだけど、ハンナ・バーベラの仕事だけしてたフィリピンのスタジオが、裏でこっそり請けたってことはない? よその仕事をしちゃいけない立場だったから、誰にも知られたくなかったとか。

21. 謎の名無しさん(>>20への返信)
自分もそれを考えてた。契約で再委託を禁じてることはよくあるから、書類を残さずに回された可能性はある。ただ本当にそうなら、関わった人が自分から言い出さない限り、たぶん永遠に分からない。

22. 謎の名無しさん
AKOMの創業者のネルソン・シンって、作画がほとんど東映だった時期から、このアニメのプロデューサーにも名を連ねてたんだよね。もし当時AKOMが北朝鮮に仕事を回してたなら、何本かがそっちで描かれてても不思議じゃない。

23. 謎の名無しさん(>>22への返信)
その説は自分も考えた。ただ、自分の知る限り、北朝鮮のSEKってスタジオは主にヨーロッパのアニメの仕事をしてたはず。可能性はゼロじゃないけど、決め手には欠けると思う。

24. 謎の名無しさん
“Call of the Primitives” はシリーズで文句なしに一番の作画。あの回だけは完全に日本のアニメの絵で、『ロボテック』(『超時空要塞マクロス』などをアメリカ向けに再編集した作品)を思い出した。日本の会社が描いたとしか思えない。

25. 謎の名無しさん(>>24への返信)
日本っぽいのは同意。でも「日本の会社」から先が難しい。90年代からずっと東京ムービー新社だと言われてきて、最近になって葦プロのほうが有力になった。絵柄だけで決めようとすると、こうやって候補が何十年も入れ替わり続ける。

26. 謎の名無しさん
トランスフォーマーのじゃないけど、セル画を集めてるからこの話はど真ん中。スタジオごとの絵柄の比較画像がもっと見たい。いつか誰かが「うちの父が描いてた」「祖父がやってた」って名乗り出てくれたら最高。

27. 謎の名無しさん(>>26への返信)
比較画像ならファンのWikiにいくつか載ってるよ。見比べると、謎の回の癖はけっこうはっきりしてる。キャラの顔立ちが2社と違うし、陰影やエアブラシのぼかしの入れ方も独特。この癖を手がかりに同じ時期のアニメを総当たりすれば、一致する作品が出てくると思う。

28. 謎の名無しさん
関係ないけど、英語版でウルトラマグナスの声を当ててたのはロバート・スタック。アメリカの未解決事件のテレビ番組『Unsolved Mysteries』の司会者、ご本人だよ。このサブとは妙な縁がある。

29. 謎の名無しさん(>>28への返信)
それを知ってから、このスレ全体があの重々しい声で脳内再生されてる。「今夜の未解決ミステリーは……トランスフォーマーの9本を描いたのは、いったい誰なのか」。

30. 謎の名無しさん(>>27への返信)
総当たりで「似てる」作品は見つかるかもしれない。でも似てるだけなら、同じアニメーターが掛け持ちしてただけって可能性も残る。社名を確定させるのは、結局は発注書みたいな紙一枚なんだよね。それが出てこない限り、どれだけ似てても推理のまま。

未解決の謎

この謎がこれほど長く解けない理由は、はっきりしている。当時のアメリカのアニメは作画スタジオの名前をクレジットに載せないのが普通で、しかも仕事は元請けから下請けへ、さらにその先へと流れていった。サンボウと直接契約していたのが東映とAKOMだけなら、その先の発注はサンボウの書類には残らない。流れの先にいた小さな会社が、すでに存在しないことも十分ありうる。

それでも、手がかりがまったく出てこないわけではない。ファンの調査をまとめたWikiによれば、2019年には “Starscream’s Ghost” をAKOMの担当とする制作資料が出てきた。2020年には “Call of the Primitives” の監督が、東映の担当回の作業の一部をスタジオルックに再委託していたと認めた。元スレで「東映かAKOMがさらに外に回したのでは」と推理されていた流れは、少なくとも一部は裏付けられたことになる。

ただ、肝心のシーズン2の7本と、シーズン3の “Only Human” などは、今も誰が描いたのか分からない。「フィリピン」という証言には当時の2社がどちらも当てはまらず、北朝鮮のスタジオという説にも裏付けはない。絵柄を見比べれば「東映でもAKOMでもない」とまでは言える。だが、その先の社名にたどり着くには、発注書のような紙か、描いた本人の証言が要る。

日本や韓国のスタジオが描いた回を、アメリカの子どもたちはそれと知らずに夢中で見ていた。その中に、描いた人たちの名前がどこにも残っていない回が、まだ何本かある。いつか「あの回はうちで描いた」と名乗り出る人が現れるまで、この謎は続く。

出典:r/UnresolvedMysteries 元スレTransformers Wiki(作画スタジオ不明の回の項)

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