2001年4月10日の朝、米アリゾナ州スコッツデールの住宅街で、一軒の家が跡形もなく吹き飛んだ。がれきの下から見つかったのは、メアリー・フィッシャーさんと2人の子どもだった。3人は爆発の前に刃物で命を奪われており、家は意図的にガスへ引火するよう仕掛けられていたとされる。姿を消していたのは夫のロバート・ウィリアム・フィッシャー。10日後、一家のSUVと飼い犬がトント国有林※の奥で乗り捨てられた状態で見つかったが、彼の足取りはそこで完全に途切れた。あれから25年、彼は今も見つかっていない。
※ トント国有林:米アリゾナ州中部に広がる広大な国有林。砂漠地帯から松林まで標高差が大きく、起伏の激しい原野と岩場、洞窟が続く。
事件の概要
🗓️ 発生日:2001年4月10日
🌫️ 場所:米アリゾナ州スコッツデール(現場)/トント国有林(車の発見地点)
👤 被害者:メアリー・フィッシャーさんと2人の子ども
🔍 状況:住宅が爆発し、3人の遺体が発見される。夫のロバート・ウィリアム・フィッシャーが一家のSUVで現場を離れており、唯一の容疑者となった
🕯️ その後:10日後に車と飼い犬が国有林で見つかるも本人の痕跡はなし。25年経った現在も未解決
スコッツデールはフェニックス近郊の住宅地で、事件が起きたのは静かな一角だった。ロバート・フィッシャーは医療の現場で外科の訓練を受けた経歴を持ち、同時に狩猟や野営を好むアウトドア派でもあった。休みのたびにアリゾナ北部の山へ入っていたという。この「医療の知識」と「山慣れ」という二つの顔が、その後どの仮説を立てるときにも必ず顔を出すことになる。
判明している事実
家は爆発するよう仕掛けられていた
3人は爆発が起きる前にすでに刃物で命を奪われており、そのうえで家がガスに引火するよう仕組まれていたとされる。住宅街のど真ん中で、証拠ごと家屋を消し去ろうとしたことになる。
唯一の容疑者は夫
現場から一家のSUVで立ち去ったロバート・ウィリアム・フィッシャーが、事件直後から唯一の容疑者とされた。ただし彼は今日まで身柄を確保されておらず、起訴も有罪判決も存在しない。あくまで「指名手配されている容疑者」という段階のままである。
10日後に車と犬が見つかる
事件から10日後、トント国有林の奥地で一家のSUVと飼い犬が乗り捨てられているのが発見された。手がかりとして残っているのは、実質この一点だけである。
大規模な捜索でも何も出なかった
起伏の激しい原野と周辺の洞窟を含む大掛かりな捜索が行われたが、遺体も遺留品も出てこなかった。25年が経った今も、車の発見地点から先の足取りはまったく判明していない。
FBIの最重要指名手配に指定
2002年、FBIの最重要指名手配10人※に名を連ねた。2021年により新しい逃亡者に枠を譲る形でリストからは外れたが、手配そのものは現在も継続している。
※ FBI最重要指名手配10人:米連邦捜査局が公開している逃亡者リスト。枠は常に10人しかなく、新しい対象を載せるには誰かを外す必要がある。掲載から外れることは捜査の打ち切りを意味しない。
主な仮説
仮説1:森に入り、自ら命を絶った
もっとも多く語られているのがこの説である。車と犬を残してそのまま山へ分け入り、人目につかない場所で自ら幕を引いたという見方だ。飼い犬だけを置いていったのは「戻るつもりがなかったから」だという解釈もできる。ただし、これだけの捜索が入って遺体も銃や刃物の金属部品も見つかっていない点が、この説の最大の弱点になっている。
仮説2:別人になりすまして生きている
スレッドで繰り返し引き合いに出されたのが1971年のジョン・リスト事件※である。特徴の乏しい容姿の男が別名を名乗り、日常生活に紛れて何十年も過ごした前例が現実にある以上、同じことができない理由はないという主張だ。メキシコやカナダで似た人物の目撃情報が出た時期もあったが、いずれも本人と確認されないまま立ち消えになっている。
※ ジョン・リスト事件:1971年に米ニュージャージー州で一家が殺害され、父親が姿を消した事件。犯人は別名で18年間ごく普通に暮らし、テレビ番組で公開された復顔像を見た知人の通報で逮捕された。
仮説3:協力者がいて、車を乗り換えて森を出た
現地を知る人からは「あの場所は歩いて抜けるには不向きだが、車で迎えに行くぶんには問題のない道が通っている」という指摘が出ている。膝や腰を痛めていて長距離を歩ける状態ではなかったという話もあり、誰かが待っていたと考えれば辻褄は合う。一方で、協力者がいるなら25年のあいだに誰かが口を割っていてもおかしくない、という反論も根強い。
仮説4:逃走の途中で消耗し、事故死した
自ら命を絶ったわけでも逃げ切ったわけでもなく、山中で消耗して力尽きたという中間的な見方もある。アウトドアの技術は自称にすぎなかったのではないかという疑いを添える人もいる。ただしこの説も、遺体がまったく出てこないという同じ壁にぶつかる。
海外の反応
1. 謎の名無しさん
今でも年に何度か検索してしまう事件。25年前から情報が一行も増えていないのに、それでも何か出ていないかと確かめに行ってしまう。結局逃げ切られたのかと思うと、どうにも落ち着かない。
2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
逃げ切ったと言えるかどうかは、その言葉をどう定義するかによると思う。自分は森に入ってそこで自分から終わらせたか、低い確率で消耗して力尽きたかのどちらかだと見ている。車の地点で足取りが完全に途切れているのが、むしろ不自然すぎるんだよな。
3. 謎の名無しさん(>>2への返信)
メキシコとカナダでそっくりな人物の目撃情報が出た時期もあったけど、どれも本人だと確認できないまま立ち消えになった。車と犬が見つかって以降、確実な手がかりは本当に一つもない。
4. 謎の名無しさん
森のどこかで既に亡くなっていると思う。ただ、それなら25年も経って骨の一片すら出てこないのはどういうことなのか、そこだけはどうしても説明がつかない。
5. 謎の名無しさん
あの車が乗り捨てられていた場所に行ったことがある。奥地は奥地だけど、人跡未踏の秘境というほどではない。週末にフェニックスから来る人が普通に入る範囲で、あそこで亡くなっていたなら銃や刃物の金属部品くらい、とっくに誰かが拾っていてもおかしくないと思う。
6. 謎の名無しさん(>>5への返信)
同感。しかも本人は膝と腰を痛めていて、狩りに行くときも四輪バギーに頼っていたという話が出ている。装備を背負って何キロも山を歩ける体だったのか、そこがずっと引っかかっている。
7. 謎の名無しさん
犬はどうなったのか、そこが一番気になってしまった。置き去りにされたと書いてあるけど、その後は誰が面倒を見たんだろう。
8. 謎の名無しさん(>>7への返信)
犬は生きた状態で見つかっている。鼻にヤマアラシの針が刺さっていて、その後は地元の獣医さんに引き取られて最後まで飼われたと聞いた。せめてそこだけは救いがある話だと思う。
9. 謎の名無しさん(>>7への返信)
脱水気味ではあったけど無事だった。個人的には犯人はまだ生きていると思っている。自分の都合をあそこまで最優先にできる人間が、自分で幕を引くところがどうしても想像できないんだ。
10. 謎の名無しさん
自死説が多数派なのは分かるけど、犬を連れて行かなかった理由の説明としては弱い気がする。狩りをする人なら、小動物を追い出す相棒として犬は普通に戦力になるはずでは。
11. 謎の名無しさん
ジョン・リストの事件をどうしても思い出す。1971年に家族を手にかけて、その後18年間まったく別の名前で普通に暮らしていた。教会に通って仕事もして再婚までしていて、テレビの復顔像を見た知人の通報でようやく捕まった。18年できるなら25年もできるということになる。
12. 謎の名無しさん
フランスのデュポン・ド・リゴネス事件と並べて追いかけている。家族が全員亡くなって父親だけが消えたという構図が同じで、どちらも生死すら確定していない。個人的にはどちらも既に亡くなっていると思っている。
13. 謎の名無しさん
車と犬が見つかったあと、痕跡がゼロというのが一番不気味なところ。普通は衣服の切れ端でも空き缶でも、何かしら出るものだと思うんだけど。
14. 謎の名無しさん(>>13への返信)
洞窟に潜んだという説も当時ずいぶん検討されたらしいけど、あのあたりの洞窟は狭くて冷たくて濡れている。人が長く隠れていられる場所ではないと、現地を知っている人ほど言っている。
15. 謎の名無しさん
2011年に作られたドキュメンタリーは正直あまり出来が良くない。この事件を初めて知る人が最初に見る作品としては勧められないと思う。
16. 謎の名無しさん
フェニックスの地元記者が作った全6話のポッドキャストがよくまとまっている。1話は短いのに、逃走説も自死説も両方の根拠を丁寧に並べていて、聞き終わるころには自分の結論が出せなくなっている。
17. 謎の名無しさん
あの砂漠と岩場のどこかで、早い段階に自分で終わらせて骨になっているという説を自分はまだ支持している。人ひとりが隠れられる窪みなんて、数え切れないほどある土地だから。
18. 謎の名無しさん(>>17への返信)
州内を車で回るたびに、つい路肩の斜面を見てしまう癖がついた。あの土地の広さを知っていると、一人分の遺体が25年見つからないことは十分ありうると思えてくる。
19. 謎の名無しさん
計画的だったのか衝動的だったのかで話がまるで変わると思う。本気で逃げるつもりなら、事前に現金を下ろしておくのが普通だろう。それをしていないなら、少なくとも途中までは行き当たりばったりだった可能性が高い。
20. 謎の名無しさん
家族を手にかけた人間がその後どうなるかを見ていくと、大半はその場か直後に自分で終わらせている印象がある。別人として生き直すのは例外中の例外。確率だけで言えば、森で亡くなっている方に賭けたくなる。
21. 謎の名無しさん
でもこの人は現場から車で離れて、10日分の時間を稼いでいるんだよね。その場で終わらせる気なら、家を出る必要もSUVをあんなに遠くまで走らせる必要もなかったはず。少なくとも最初は逃げる気だったと思う。
22. 謎の名無しさん
誰かが待っていて車を乗り換えた、という線を自分は推している。あの場所は歩いて抜けるには向いていないけど、車で迎えに行くぶんには何の問題もない道が通っているらしい。
23. 謎の名無しさん(>>22への返信)
その説の弱点は、25年間ひとりも口を割っていないところだと思う。協力者がいるなら、離婚でも喧嘩でも金の話でも、何かのきっかけで漏れるのが普通なんだけどな。
24. 謎の名無しさん
公開されている写真を見るたびに思うけど、特徴らしい特徴のない顔なんだよね。似た人はいくらでもいる。目撃情報が山ほど出て全部空振りだったのも納得してしまう。
25. 謎の名無しさん
一番許せないのは家ごと吹き飛ばしたところ。住宅街のど真ん中で、隣にも普通に人が住んでいたはずなんだ。証拠を消すためにそこまでやれる神経が本当に理解できない。
26. 謎の名無しさん(>>25への返信)
証拠を燃やすのが目的だったなら、逆に捜査を早めた面もあると思う。あれだけの爆発なら通報は即座に入るし、火が回りきる前に消し止められる可能性のほうが高い。
27. 謎の名無しさん
医療の現場で訓練を受けていた経歴と、アウトドアの技術が両方あるというのが、この事件をややこしくしている。逃げ切った説にも森で亡くなった説にも、都合よく使える材料になってしまうから。
28. 謎の名無しさん
2021年に最重要指名手配のリストから外れたと聞いたときは、もう追われていないのかと勘違いした。実際には枠を新しい逃亡者に譲っただけで、手配そのものは今も続いている。
29. 謎の名無しさん(>>28への返信)
そこは誤解されやすいところだよね。枠が10しかないから、古い案件から順に押し出されていくだけ。捜査が打ち切られたわけではないと、もっと大きく書いてほしかった。
30. 謎の名無しさん
もし生きているなら、今はもうかなりの高齢になっているはず。顔認証もDNAの技術も、当時とは比べものにならないほど進んだ。25年目の今こそ、どちらの説であれ決着がついてほしいと思っている。
未解決の謎
この事件で最も不可解なのは、手がかりが「車と犬」でぴたりと止まっていることだ。逃げ切ったのなら、25年のあいだに誰かが気づき、通報し、写真の一枚くらい出てきてもおかしくない。森で亡くなったのなら、これだけの捜索と、その後四半世紀にわたって出入りしたハンターや週末のハイカーの誰かが、骨か装備の一部を踏んでいてもおかしくない。どちらの説を取っても、「何も出てこない」という一点だけが説明を拒み続けている。
スレッドで意見が真っ二つに割れたのも、この行き詰まりが理由だった。膝と腰の状態からして遠くへは歩けなかったはずだという指摘と、だからこそ誰かが車で迎えに来たのだという指摘は、同じ材料から正反対の結論を導き出している。飼い犬を置いていった判断も、「戻る気がなかった証拠」とも「連れて歩けない場所へ移動した証拠」とも読める。
忘れてはならないのは、この事件で命を奪われたのがメアリーさんと2人の子どもだという事実である。逃走劇の謎ばかりが語られるが、待たれているのはあくまで、その3人のための決着だ。FBIのリストから名前が消えても手配は続いており、情報提供の窓口も閉じていない。25年前の朝にスコッツデールで起きたことの答えは、いまだに誰の手にも渡っていない。


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