1965年3月、ジョージア州オーガスタの安モーテルの一室で、第二次大戦の退役軍人ジェームズ・フランシス・ジェンキンスが右目を撃たれて倒れているのが見つかった。同室にいたのは刑務所を出たばかりの「友人」アーサー。彼は午後5時に「鼻血を出して横たわる」ジェームズを見つけたと言いながら、なぜか4時間も部屋を空け、戻ってからようやく警察を呼んだという。犯人は60年経った今も捕まっていない。これは、その曽孫が家族の証言と古い新聞記事だけを頼りに、消えた「友人」の正体を追う物語だ。
事件の概要
🗓️ 発生日:1965年3月
🌫️ 場所:アメリカ・ジョージア州オーガスタのモーテル
👤 被害者:ジェームズ・フランシス・ジェンキンス(通称ジミー、第二次大戦の退役軍人、1920年生まれ)
🔍 状況:出稼ぎの塗装仕事で同室に泊まっていた友人アーサーが、午後5時に「鼻血を出して横たわる」ジェームズを発見。だが約4時間部屋を離れ、戻ってから警察に通報した
🕯️ 発見/結末:右目に銃創。病院に搬送されたが死亡。室内から22口径の拳銃が見つかり、他殺と断定。犯人は未検挙のまま未解決
ジェームズは戦中、テキサスのキャンプ・フッドで戦車駆逐大隊に配属され、イタリア戦線にも従軍した叩き上げの兵士だった。戦後は石油会社スタンダード・オイルで塗装工として働いていた。事件当時、彼は刑務所を出たばかりのアーサーから「仕事を世話してくれ」と泣きつかれ、自分と同じ塗装の職を斡旋してやっていた。二人がオーガスタのモーテルに滞在していたのも、その出稼ぎ仕事のためだったという。
証言を残した曽祖母(被害者の妻)は「アーサーが殺った」と生涯信じて疑わなかった。ただ、その理由を孫やひ孫に語ることはなく、墓まで持っていった。残されたのは、ぼんやりとした家族の記憶と、数枚の黄ばんだ新聞記事だけである。
判明している事実
右目の銃創と22口径
ジェームズは右目に銃弾を受けて死亡した。現場のモーテル室内からは22口径の拳銃が発見されたが、新聞記事には誰の銃かは書かれていない。
自殺ではなく他殺
検死の結果、ジェームズの手には自殺者に典型的な発砲の痕跡(火薬残渣)が見られなかった。これを根拠に、当局は事件を他殺と断定した。
パラフィン検査は陰性
第一発見者のアーサーは「重要参考人」として拘束され、手のパラフィン検査※を受けた。火薬反応は出なかったが、この検査は当時すでに誤検出だらけで、シロともクロとも言い切れない代物だった。
※ パラフィン検査:1960年代当時すでに信頼性が低く、硝酸塩が火薬由来か否かを区別できないとして、FBIが各地の警察に使用中止を勧告していた手法。陰性でも発砲を否定する証拠にはならない。
空白の4時間
アーサーは午後5時に「鼻血を出して横たわる」ジェームズを見つけたと供述しながら、その後およそ4時間も部屋を離れた。戻ってから「何かおかしい」と感じて通報したという。
DNA以前の時代
事件はDNA鑑定が存在しない時代に起きた。証拠は状況証拠に頼るしかなく、捜査は短期間で行き詰まり、ファイルの多くは今もデジタル化されず紙のまま眠っている可能性が高い。
主な仮説
仮説1:友人アーサーによる犯行
家族と曽孫がもっとも疑うのがこの説だ。刑務所を出たばかりで仕事に困窮していたアーサーが、何らかのトラブルからジェームズを撃ち、4時間かけて手を洗い証拠を消したのではないか——という見立て。鼻血を出した友人を見て声もかけず4時間放置するという不自然さ、そして「右目の銃創」を「鼻血」と言い張った供述のちぐはぐさが、強い疑いの根拠になっている。
仮説2:逃亡中の前科者という別の顔
新聞では名前が「アーサー・L・ボリュー」とされていたが、後に「アーサー・R・バリュー」という別表記の続報記事や、デカルブ郡の刑務所から脱走した「アーサー・バリュー」の記事が見つかっている。もし彼が脱走犯で逃亡中だったなら、戦友のジェームズに「裏の仕事」を頼んだ動機も、警察に偽名めいた名前を告げた理由も説明がつく。仕事をめぐる決裂か、正体がばれた末の口封じか——という説だ。
仮説3:第三者による強盗・トラブル
アーサーが部屋を空けていた4時間のあいだに、別の人物が侵入した可能性も否定はできない。ただし新聞記事には金品が奪われた形跡への言及がなく、強盗の線を裏づける材料は乏しい。出稼ぎの労働者が泊まる安モーテルという環境を考えれば、流しの犯行という線も理屈の上では残る。
仮説4:身元そのものが偽りだった可能性
そもそも「アーサー・L・ボリュー」が本名なのかが疑わしい。南部では Ballew、Bellew、Beaulieu など綴りの揺れが激しく、新聞記者の聞き取りミスや、本人が意図的に似た偽名を名乗った可能性がある。名前が一字違えば記録は辿れなくなり、それこそが犯人を60年間守ってきた最大の壁なのかもしれない。
海外の反応
1. 謎の名無しさん
鼻血を出して倒れてる友人を見つけて、声もかけずに4時間も部屋を空けるって時点でもう無理がある。普通は「大丈夫か?」って近づくよね。
2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
4時間って、手を念入りに洗って証拠を消すには十分すぎる時間だよな。何度も思い返すけど、やっぱりそこが引っかかる。
3. 謎の名無しさん(>>1への返信)
しかも右目の銃創を「鼻血」で押し通そうとしたのが致命的。至近距離じゃない限り、目を撃たれた人を鼻血と見間違えるなんてあり得ない。
4. 謎の名無しさん
GBIや警察にダメ元でも情報公開請求を出してみるといい。州の開示制度を使えば、当時の捜査ファイルや検死報告書が出てくる可能性がある。魔法の杖じゃないけど、自分で動かないと何も始まらない。
5. 謎の名無しさん(>>4への返信)
ジョージア州ならGORA(州の公文書公開法)だね。州捜査局と郡の保安官事務所、両方に同じ請求を出しておくのが定石だと思う。
6. 謎の名無しさん
名字を Bellew、Bellou、Beaulieu あたりで検索し直してみて。南部の古い記録は綴りミスだらけで、それで何年も足止めを食らう人が本当に多い。
7. 謎の名無しさん(>>6への返信)
そうそう、Cajun French 由来なら「バイユー」みたいな発音で、英語表記がブレまくる。Bolliou とか Ballou とか、当てずっぽうの綴りで記者が書いた可能性も高い。
8. 謎の名無しさん
当時は見知らぬ他人とモーテルの一室を相部屋するのもごく普通だった。特に仕事を探して各地を回る労働者にとってはね。同室=親密、と決めつけないほうがいい。
9. 謎の名無しさん
スタンダード・オイルの社史担当やアーカイブ部署に問い合わせてみたら?大企業は従業員記録を残してることがある。今はシェブロンがジョージアでのスタンダード・オイルの名義権を持ってるはず。
10. 謎の名無しさん(>>9への返信)
分割前の時代の話なら、なおさら記録が一箇所にまとまってるかも。雇用記録に同僚としてアーサーの名前が残ってたら一気に話が進むね。
11. 謎の名無しさん
ジョージアの判例で1969年の「バリュー対州」っていう強盗事件の記録を見つけた。実刑5年の判決。同一人物かは分からないけど、調べる価値はあるかも。
12. 謎の名無しさん
そもそもアーサーがなぜ刑務所に入ってたのかが分からないと話が進まない。酔っ払いの一晩拘留なのか、傷害で半年の実刑なのか、それとも「刑務所」じゃなく「脱獄」なのか。前提が曖昧すぎる。
13. 謎の名無しさん(>>12への返信)
それな。脱走犯だったとすれば、戦友に裏の仕事を泣きついた理由も、偽名めいた名前を使った理由も全部つながる。動機の核心はそこにある気がする。
14. 謎の名無しさん
軍歴専門の検索サービスがある。地元の図書館なら無料で使えることも多いから、被害者の所属部隊と従軍時期を入れて、一緒に従軍した名簿からアーサーを探せるかもしれない。
15. 謎の名無しさん
被害者の転属書類が見つかったって?戦車駆逐大隊か。第二次大戦の戦友なら、同じ部隊名簿を辿ればアーサーらしき人物に行き着く可能性は十分ある。粘り強く探してほしい。
16. 謎の名無しさん
亡くなった曽祖母が理由も言わずに「アーサーが犯人」と信じ続けてたのが一番怖い。きっと家族には言えない何かを、本人から直接聞いてたんじゃないかと勘ぐってしまう。
17. 謎の名無しさん(>>16への返信)
語らなかったんじゃなく、語れなかったんだと思う。確信があったからこそ口を閉ざした、っていうのは十分あり得る話だよ。
18. 謎の名無しさん
DNA鑑定もない、ファイルは紙のまま、関係者は全員他界——この三重苦で60年前の事件を解くのは正直かなり厳しい。でも諦めずに記録を掘る姿勢には頭が下がる。
19. 謎の名無しさん
2023年にできた法律で、未解決殺人事件の遺族なら誰でもDNA再鑑定を請求できるようになった。これは大きい。当時の証拠物が保管庫に残ってさえいれば、まだ望みはある。
20. 謎の名無しさん
強盗の痕跡が記録にあるかどうかが気になる。金品が奪われていれば流しの犯行、何も盗られてなければ顔見知りの犯行という線が濃くなる。そこが分岐点だと思う。
21. 謎の名無しさん
南部にはバリュー姓がそこそこいる。1902年生まれの「アーサー・ロウリー・バリュー」っていう人物が記録に残ってて、ミドルネームが一致するのが気になるけど、被害者よりかなり年上なんだよな。
22. 謎の名無しさん(>>21への返信)
1956年に強盗で5〜10年の実刑を受けた「アーサー・バロウ」という別人もいる。釈放のタイミング次第では1965年に出所してても矛盾しない。候補が多すぎて絞り切れないのが悩ましい。
23. 謎の名無しさん
1937年のアトランタ・コンスティテューション紙に、麻薬の容疑で逮捕された33歳のアーサー・ボリューの記事があった。1925年にディケーターの刑務所から脱走した記録も。前科持ちなら、年代的に同一人物の可能性は十分残る。
24. 謎の名無しさん
そもそも「アーサー」というのが本名なのかすら怪しい。逃亡中の人間が正直に本名を名乗るとは限らない。名前が偽りなら、どんなに記録を漁っても出てこないのは当然だ。
25. 謎の名無しさん(>>24への返信)
偽名説に一票。新聞ごとに綴りが違うのも、本人が毎回適当に名乗ってたからじゃないかと思えてくる。それなら追跡できないのも腑に落ちる。
26. 謎の名無しさん
うちの曽祖父も100年近く前にコロラドで殺された。犯人がその場で自殺したから動機すら分からないまま。血のつながった人の死の真相が分からないって、世代を超えてずっと胸に刺さり続けるんだよな。
27. 謎の名無しさん(>>26への返信)
わかる。直接知らない先祖でも、真相が宙ぶらりんのままだと家族の歴史にぽっかり穴が空いた感じがする。投稿者が動いてる気持ち、すごく理解できるよ。
28. 謎の名無しさん
隣接する州の逮捕記録も当たってみるといい。出所直後で職に困り、世話してくれた相手が死んだとなれば、犯人は逃げて他州でまた何かやらかしてる可能性が高い。サウスカロライナあたりが近い。
29. 謎の名無しさん
4時間も部屋を空けた人間が「鼻血だと思った」で押し通せるなら、当時の捜査がどれだけ雑だったか逆に分かる。今ならまず通報の遅れを徹底的に詰められてる案件だよ。
30. 謎の名無しさん(>>29への返信)
鼻血を見つけたと言いながら右目の銃創には気づかなかった——この一点だけでもう供述が破綻してる。60年越しでも、ここを崩せば真相に近づける気がしてならない。
未解決の謎
この事件が60年も解けないまま残っている最大の理由は、「アーサー」という男の正体が誰にも掴めないことに尽きる。新聞によって綴りが揺れ、ボリュー、バリュー、バロウと一定しない名前。本名なのか偽名なのかさえ分からず、census や軍歴を辿っても決定打が出てこない。彼が誰だったのかが特定できない限り、動機も足取りも闇の中だ。
状況だけを見れば、もっとも妥当なのはやはり「友人アーサーによる犯行」だろう。鼻血を出した相手を声もかけずに4時間放置し、戻ってからようやく通報する不自然さ。右目の銃創を「鼻血」と言い張った供述の矛盾。出所直後で困窮し、命綱を握っていた相手が死んだという構図。状況証拠はことごとくアーサーを指している。
それでも決め手はない。パラフィン検査の陰性は当時すでに信用できない代物で、シロの証明にもクロの証明にもならなかった。DNA鑑定が存在しない時代に、状況証拠だけで人を裁くことはできず、捜査はあっという間に行き詰まった。曽祖母が理由も語らず「アーサーが犯人」と信じ続けた確信の根拠も、今となっては確かめようがない。
残された望みは、紙のまま眠っているはずの当時の捜査ファイルと、2023年に成立した遺族による再鑑定請求の制度だ。22口径の拳銃や現場の証拠物がもし保管庫に残っていれば、60年の沈黙が破られる日が来るかもしれない。曽孫が今も記録を掘り続けているのは、亡き祖母たちに——そして真相を知らぬまま生きる母と叔母に——せめて一つの答えを届けるためである。
