雪でスタックしたピックアップトラックが、アイダホ州北部の林道に乗り捨てられていた。2021年12月、そこから姿を消した29歳の男性は、地上捜索でも警察犬でも見つけられないまま、行方不明者のリストに残り続けた。唯一の手がかりは、失踪から数か月後に山中の自動撮影カメラ※が捉えた一枚。そして4年3か月後、角拾いに山へ入った人物が、思いもよらない場所で骨を見つけることになる。
※ 自動撮影カメラ(トレイルカメラ):狩猟の下見や野生動物の観察のため、林道や獣道に仕掛けておく無人カメラ。赤外線センサーが動くものを感知して自動でシャッターを切る。北米の山林では広く使われている。
事件の概要
🗓️ 最後の目撃:2021年12月7日
🌫️ 場所:アイダホ州ネズパース郡ワプシラ・リッジ(ワハの南)
👤 行方不明者:アラン・プレストン・スローン(29歳)
🔍 状況:雪にはまったピックアップを残して徒歩で移動、以後消息を絶つ
🕯️ 結末:2026年3月28日にスワンプ・クリーク地区で遺骨発見、7月8日に本人と同定
ワプシラ・リッジは、ルイストンの南に広がるクレイグ山塊の一角にある。舗装路はなく、林道とATV用の作業道が斜面を這うように走るだけで、携帯電話の電波はほとんど届かない。冬になると積雪は1メートルを超えることも珍しくなく、四輪駆動でも一度はまれば自力での脱出は難しくなる。
スローンさんはワシントン州コルヴィルから来ていた。行方不明者のポスターには、失踪当日にアイダホ州ルイストン付近で警察官とのやり取りがあったと記されている。身長は約178〜180センチ、体重は82〜84キロ、茶色の髪と茶色の目。そして彼の遺骨を最初に見つけたのは、鹿やヘラジカの落とした角を探す「シェッドハンティング」※のために山へ入っていた人物だった。
※ シェッドハンティング:鹿やヘラジカが毎年の生え変わりで自然に落とした角を、山を歩いて拾い集める北米の趣味。雪が解け始める早春が最盛期で、この時期は普段ほとんど人の入らない斜面にも人が入る。
判明している事実
6日後に見つかった雪の中のピックアップ
家族が連絡を取れなくなり、行方不明として届けが出されたのは2021年12月7日。愛車の2013年式ラム2500(ダークブルーのツートン)が発見されたのは、その6日後の12月13日だった。場所はワハ南方のワプシラ・リッジ、イーグル・クリーク・ロードを過ぎたあたりで、車は雪にはまったまま乗り捨てられていた。
車から10マイル離れたカメラに残った姿
2022年春、捜査当局は山中に仕掛けられていた自動撮影カメラの画像から手がかりを得る。そこにはスローンさんの姿が写っており、撮影地点は放置されたトラックから10マイル(約16キロ)以上離れていた。ただし、その周辺を繰り返し捜索しても本人は見つからず、事件はここで足踏みする。
一度も匂いを取れなかった捜索犬
地上捜索では周辺の山小屋も一軒ずつ確認されたが、投入された警察犬は最後までスローンさんの匂いを捉えられなかった。降り続いた雪と、失踪から捜索までに空いた時間が影響したとみられている。捜索は2022年の初めに打ち切られ、事件はコールドケースになった。
医療画像の記録による身元判明
2026年3月28日、スワンプ・クリーク地区で角拾いをしていた人物が頭蓋骨と下顎骨、複数の骨片を発見して911に通報した。警察犬を伴った現場捜索で追加の遺骨も回収されたが、この時点では身元が分からなかった。検死官事務所が本人と断定したのは同年7月8日。提供された医療画像の記録との照合が決め手になったという。
主な仮説
仮説1:雪の中を歩き続け、低体温症で力尽きた
スレッドで最も支持されているのがこれ。車が雪にはまった時点で自力脱出は絶望的になり、助けを求めて歩き出したが、圏外の山中では誰にも連絡がつかない。自動撮影カメラの位置から見ても、彼は相当な距離を歩いている。2006年にオレゴン州で起きたキム一家の遭難でも、助けを呼びに出た父親は約26キロ歩いた末に低体温症で亡くなった。
仮説2:土地勘のなさとパニックが致命的な迷走を招いた
コルヴィルは同じ北西部でも地形がまったく違う。現地在住だというコメント投稿者は、ATV用の林道が規則性なく枝分かれしていて地図も更新されておらず、自分も引っ越したばかりの頃に5時間迷ったと書いている。方向感覚を失った人間は円を描いて歩く傾向があることも知られており、20キロ以上歩いても出口に近づけなかった説明にはなる。
仮説3:自ら死を選んだ可能性
複数の報道で、家族が彼の精神状態を心配していたこと、銃を携行していたことが伝えられている。これを根拠に「雪はたまたま重なった条件にすぎない」と見る意見も出た。ただし検死結果や死因は公表されておらず、この見方を裏づける材料は現時点で示されていない。地元の事情に詳しい投稿者からは「自分はそうは思わない」という反論も出ている。
仮説4:最後の「警察とのやり取り」に残る空白
行方不明者ポスターの記述をそのまま読むと、彼を最後に見たのは警察官ということになる。スレッドではこのやり取りの記録や映像を情報公開請求で確認した人がいるのか、という疑問が出た。ただしこれは疑問の提示にとどまり、第三者の関与を示す情報は一切公表されていない。あくまで「空白が残っている」という指摘である。
海外の反応
1. 謎の名無しさん
結局、彼の身に何が起きたんだろう。トラックが雪にはまって、そこから徒歩で移動しているうちに道に迷った、というのが大方の見立てなのか
2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
いくつかの記事によると、家族は彼の精神状態を心配していたらしい。しかも銃を携行していたとも書かれている
3. 謎の名無しさん(>>2への返信)
なるほど、それなら自ら選んだ可能性も出てくる。たまたまその日が雪だった、というだけの話なのかもしれない
4. 謎の名無しさん
雪でスタックするのは基本的に本道の上のはずなんだ。そこから車を捨てて雪の中へ歩き出したというのが、どうにも腑に落ちない
5. 謎の名無しさん
自動撮影カメラが彼を捉えた地点から、実際に遺骨が見つかった場所まで、どれくらい離れていたのかが気になる
6. 謎の名無しさん(>>5への返信)
カメラが車から10マイル、地図で見る限り遺骨は車から20マイルほど離れている。あの僻地で人ひとり捜すのは、干し草の山から針を探すようなものだ
7. 謎の名無しさん
雪の中を20マイルは尋常な距離じゃない。しかも道に迷った人間はたいてい同じところを円を描くように歩いてしまう
8. 謎の名無しさん(>>7への返信)
躁状態に入っていれば、その距離を歩ききってしまうこともある。家族が心配していたのはたぶんそこだと思う
9. 謎の名無しさん
絶望は人を普段よりずっと遠くまで運ぶ。どこかに辿り着こうと必死に歩き続けて、最後に力尽きたんじゃないだろうか
10. 謎の名無しさん(>>9への返信)
2006年のキム一家の遭難でも、助けを呼びに出た父親は16マイル歩いたところで低体温症で亡くなっている
11. 謎の名無しさん
キム一家の件も何度読んでも辛くなる。あと少しの判断が生死を分けた、という場面が何度も積み重なっている事件だった
12. 謎の名無しさん
この手の話は道路のわずか数百メートル手前で見つかることが多くて、それが後から悔しさになる。でも彼の場合は、はまった瞬間に手がなかったように見える
13. 謎の名無しさん
捜索犬が一度も匂いを取れなかったのは、雪と時間の経過のせいだと思う。カメラ周辺の捜索が始まったのは失踪から数か月後だ
14. 謎の名無しさん(>>13への返信)
つまり遺体はカメラの近くにあって、単純に見落とされていた可能性もあるということか。それはそれで切ない
15. 謎の名無しさん
悲しい結末だけど、少なくとも家族は何が起きたのかを知ることができた。困ったら車から離れるな、というのは何度でも言うべきだと思う
16. 謎の名無しさん
せめて家族が大まかな経緯を知れたのは救いだ。ところで記事にあるシェッドハンティングというのは、何をする人のことなんだ
17. 謎の名無しさん(>>16への返信)
鹿やヘラジカが自然に落とした角を拾い集める趣味のこと。春先の雪解けの時期が一番の狙い目になる
18. 謎の名無しさん
角が落ちるのは真冬だと思っていたんだが、それとも前の年に落ちたものを探して山を歩き回っているのか
19. 謎の名無しさん(>>18への返信)
雪が解け始めた頃のほうが地面が見えて見つけやすいからだと思う。だから3月末にあの一帯へ人が入っていた
20. 謎の名無しさん
行方不明者のポスターには、ルイストン付近で警察とのやり取りがあったと書かれている。その記録が公開されているのかは気になるところだ
21. 謎の名無しさん
地元の人間だが、あの一帯は本当に迷う。ATVの林道が無秩序に枝分かれしていて、しかも地図がまったく更新されていない
22. 謎の名無しさん(>>21への返信)
積雪が1メートルを超えることもある場所だ。自分は自ら選んだとは思わない。スタックして車を降りて、そこに雪が降っていた。それだけで十分に致命的だと思う
23. 謎の名無しさん
コルヴィルから来た人間には地形が違いすぎる。土地勘のないまま雪に閉じ込められたら、判断もまともに働かなくなるはずだ
24. 謎の名無しさん
4年半、家族はどんな気持ちで過ごしてきたんだろう。見つかっただけでも救いだと思いたいけれど、簡単に割り切れる話ではないよな
25. 謎の名無しさん
医療画像の記録で身元が判明したというのが現代的だ。歯科記録が残っていなくても本人と特定できる時代になったんだな
26. 謎の名無しさん(>>25への返信)
過去に撮影したレントゲンやCTに写った骨の形と照合する方法だね。条件が揃えば比較的短い時間で結論が出ることもあると聞く
27. 謎の名無しさん
携帯の電波が届かない場所の怖さがよく伝わってくる。何かあったその瞬間に、外の世界と完全に切り離されるということだ
28. 謎の名無しさん
2022年の初めで捜索が打ち切られたのは早すぎないだろうか。もう少し続けていれば違う結果になったかもしれないのに
29. 謎の名無しさん(>>28への返信)
冬山で生存の見込みが消えると、救助から回収へ目的が切り替わってしまう。人員も予算も無限ではないから、どこかで線を引くしかない
30. 謎の名無しさん
結局、彼が長い距離を歩いたという事実だけが残った。何を目指してそこまで進んだのかは、もう誰にも分からないままだ
未解決の謎
身元が判明したことで、この件は「行方不明」から「死亡確認」へと区分が変わった。だが、彼が車を降りてから息絶えるまでに何があったのかは、依然として何ひとつ確定していない。死因も、遺骨の状態も、公表されていないからだ。
最大の空白は距離である。雪の積もった山中を、なぜあれほど歩けたのか。助けを求める合理的な行動だったのか、それとも方向を見失ったまま進み続けた結果なのか。あるいは、そもそも戻るつもりがなかったのか。自動撮影カメラに残った一枚は、彼がまだ歩いていたことを示すだけで、その意図までは何も語らない。
もうひとつは、捜索の網が最後まで彼に届かなかった理由だ。警察犬が一度も匂いを取れず、山小屋も空振りに終わり、カメラの周辺を繰り返し歩いても見つからなかった。降雪が痕跡を消したのか、それとも捜索範囲そのものが最初からずれていたのか。答えが出るとすれば、公表されていない検死報告の中だろう。それが出てくるまで、この事件はスワンプ・クリークの雪解けと同じくらいゆっくりとしか進まない。


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