2020年5月、アメリカ・アリゾナ州ギルバートの空調会社のオフィスで、一人の男性が妻と幼い子どもたちとビデオ通話をしている最中に銃殺された。画面の向こうで叫ぶ妻。だが電話に出たのは夫ではなく、共同経営者の男だった——「ニックが撃たれた」。強盗が動機とされたが、現金は一切奪われていない。犯人の一人と思われる男は、5年以上経った今も身元不明のままだ。そして、この事件を追ううちに浮かび上がるのは、たった一人の男をめぐる「二つの不審死」だった。
事件の概要
🗓️ 発生日:2020年5月
🌫️ 場所:アメリカ・アリゾナ州ギルバート、空調会社「ギルバート・エア」のオフィス
👤 被害者:ニック・コルドバ(空調会社の共同経営者、二児の父)
🔍 状況:妻子とビデオ通話中に、身元不明の男2人がオフィスに押し入り射殺
🕯️ 結末:5年以上未解決。2025年に匿名通報制度サイレント・ウィットネスに登録され、懸賞金2万ドルが提示されている
ニック・コルドバは、空調(HVAC)会社ギルバート・エアを、共同経営者のデイビッド・マイケル・スウィートマンと二人で営んでいた。事件当日、ニックはオフィスから妻アリーシャと二人の子どもとビデオ通話をつないでいた。そのさなか、身元不明の男2人が突然店内に押し入り、ニックを撃った。電話越しに異変を察したアリーシャが叫ぶと、応答したのはスウィートマンで、「ニックが撃たれた」と告げたという。
この事件が2025年に匿名通報・懸賞金制度「サイレント・ウィットネス」※へ登録されたことで、地元アリゾナで再び関心が高まっている。だが、捜査に大きな進展は見られないまま時間だけが過ぎている。
※ サイレント・ウィットネス:アリゾナ州フェニックス圏で運営される匿名通報・懸賞金制度。未解決事件の情報提供を匿名で受け付け、逮捕につながる情報に報奨金を支払う。
判明している事実
現金が奪われなかった「強盗」
スウィートマンは当初、事件を強盗だと捜査当局に説明した。しかし現場から金は一切奪われていない。犯人たちはただオフィスに押し入り、ニックを撃って立ち去っただけだった。「強盗」という説明と、何も盗まれていないという事実は最初から噛み合っていない。
発砲されなかった拳銃とジャガイモ
捜査当局はスウィートマンの拳銃を押収したが、鑑定の結果、発砲された形跡はなかった。一方で現場からは、穴の開いたジャガイモが見つかっている。消音器の代わりに使われた可能性が指摘されているが、実効性は疑わしい。
身元不明のヒスパニック系の男
容疑者の一人の特徴と一致するヒスパニック系の男が、近くのコンビニエンスストアの防犯カメラに映っていた。だが、この男は今日に至るまで一度も身元が特定されていない。事件の実行犯に最も近い人物でありながら、名前すら分かっていない。
家族から会社へ書き換えられた生命保険
アリーシャは後に、ニックが自身にかけていた生命保険の受取人が、彼女と子どもたちからギルバート・エア社へ変更されていたことを知る。スウィートマンは保険金と会社の権利をめぐって数年にわたり法廷でアリーシャと争い、彼女は闘い疲れて和解に応じた。
もう一つの浴槽での不審死
スウィートマンは2013年、当時の妻ローラ・スウィートマン医師への家庭内暴力で逮捕されている。ローラは彼が殺害をほのめかす会話を録音し警察に届けたが、立件は見送られた。離婚を申請した同年12月、ローラは自宅の浴槽で死亡しているのが見つかる。当局は「事故による溺死」と結論づけた。当時、デイビッドは自宅にいたという。
主な仮説
仮説1:共同経営者による殺人依頼説
最も多くの人が支持するのがこの見方だ。動機は明白で、ニックの死によってスウィートマンは会社の単独所有者となり、生命保険金も手にできる立場になった。自ら手を下すタイプではなく、実行犯を雇ったか、共犯者を使ったのではないか——防犯カメラの身元不明の男や、発砲されていないスウィートマンの拳銃が、この説を後押しする。
仮説2:本物の強盗が偶発的に殺害した説
一方で、これを額面どおり強盗事件と捉える懐疑的な意見もある。生命保険の受取人が会社になっていた点についても、「キーマン保険※」として経営上ごく普通の契約であり、それ自体は疑いの根拠にならないという指摘だ。ただしこの説は、何も盗まれなかった理由をうまく説明できない。
※ キーマン保険:経営に不可欠な人物の死亡による損失に備え、会社が受取人となって加入する生命保険。共同経営者同士で掛け合うのは一般的な実務でもある。
仮説3:警察の捜査不足・地元との癒着説
録音という証拠がありながら家庭内暴力が立件されず、浴槽死が簡単に事故と処理され、そして殺人事件も進展しない——ここまで重なると、スウィートマンが地元警察と近い関係にあるのではないか、という不信が生まれる。もっとも、これは「腐敗」ではなく単なる捜査能力の欠如や証拠不足の結果だという冷静な反論もある。
仮説4:二つの死をつなぐ「同一人物」説
元妻ローラの死とニックの死。まったく無関係に見える二つの死が、いずれもスウィートマンが現場か自宅にいた状況で起き、いずれも彼に金銭的利益をもたらした。この一致を偶然と片づけられるのか。二つの死を一本の線で結ぶこの見方が、事件をより不気味なものにしている。
海外の反応
1. 謎の名無しさん
犯人が誰かって?100パーセント、共同経営者のスウィートマンだよ。ただ証明できないだけ。そしてそれが一番恐ろしいところなんだ。
2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
いや、犯人がスウィートマンかどうか以前に、警察がちゃんと捜査してないだけって可能性の方が高い気がする。やる気があればもっと分かってるはずだ。
3. 謎の名無しさん(>>2への返信)
この男、ギルバート警察の誰かと仲がいいんじゃないの。録音までされてる家庭内暴力の脅迫が立件されないなんて、普通に考えたらありえないだろ。
4. 謎の名無しさん
このスウィートマンって男、本当にヤバい。テンピのジャック・イン・ザ・ボックスの駐車場で、予約レッカー商法をやってた「モンスター・トーイング」のオーナーだ。俺も一時間ランチしただけで車を持っていかれて、返してもらうのに現金でぼったくられた。従業員が全員銃を体に着けてて、心底怖かった。
5. 謎の名無しさん(>>4への返信)
州法だと、現金がないからって車を返さないのは違法なんだよね。警察を呼んで取り返して裁判で争えば勝てた。スウィートマンは裁判に一度も出廷しなかったから、争った被害者はみんな勝ってたらしい。
6. 謎の名無しさん
強盗が動機のはずなのに現金が一切奪われてないってのが一番引っかかる。しかもスウィートマンは自分も銃を持ってたのに使ってない。どう考えても話ができすぎてる。
7. 謎の名無しさん(>>6への返信)
それな。おまけに生命保険の受取人を都合よく会社に変更して、共同経営者だった自分が全額持っていく形になってる。偶然が重なりすぎだ。
8. 謎の名無しさん
一番の疑問は、なぜ生命保険の受取人を妻子から「会社」に変えるんだ、ってこと。よほど特殊な事情でもない限り、そんなことをする人間はいない。この時点で相当きな臭い。
9. 謎の名無しさん(>>8への返信)
変更されたのは事件の半年ほど前らしい。しかも妻は署名した覚えがないのに、保険会社には彼女の署名入りの書類がすでに届いていたって。偽造されたとしか思えない。
10. 謎の名無しさん
消音器の代わりに穴を開けたジャガイモ…って、プロの殺し屋にしては素人すぎないか?ゲータレードの空きボトルすら切らしてたのかよ。
11. 謎の名無しさん(>>10への返信)
そもそもジャガイモで銃声は消えない。何かをかぶせれば消えると思い込んでる人が多いけど、現実には全然無理なんだよね。
12. 謎の名無しさん
スウィートマンが実行犯を雇ったか、共犯者がいたと思う。自分で手を汚すタイプには見えない。だからこそ直接の証拠が残らず、ずっと捕まらないんだ。
13. 謎の名無しさん
一番不気味なのは、事件現場近くのカメラに映ってた男が今も身元不明ってことだよ。実行犯にこれだけ近い人物なのに、名前すら分かってないなんて信じられない。
14. 謎の名無しさん
去年、妻のアリーシャさんに話を聞く機会があった。今も必死に夫の名誉と正義のために動いてる。家族はみんな本当に優しくて、気の毒でならなかった。
15. 謎の名無しさん(>>14への返信)
自分は証拠を見て多角的に考えたいタイプなんだけど、この件はどうしてもオッカムの剃刀が頭をよぎる。ローラ医師の不可解な浴槽死まで含めると、一番単純な答えが一番ありそうに見えてしまう。
16. 謎の名無しさん
ちょっと待って、この男、二つの不審死の現場に居合わせてるの?たいていの人間は一生に一度も殺人の容疑者にすらならないのに、二度もって。それだけで異常だ。
17. 謎の名無しさん
そもそも「事故による浴槽での溺死」なんて、世の中にどれだけあるんだよ。都合よく死んでくれた相手が、たまたま風呂で溺れましたって、そう何度も信じられるか。
18. 謎の名無しさん(>>17への返信)
パッと思いつくのはクランベリーズのドロレス・オリオーダンくらい。あれは飲酒後に入浴して意識を失った本物の事故だった。逆に言えば、それくらい珍しいってことだよ。
19. 謎の名無しさん
遺族が民事で不当死の訴訟を起こすことはできないの?刑事でダメでも、民事なら基準が違うはずだけど。
20. 謎の名無しさん(>>19への返信)
警察がまともに捜査してない以上、遺族が独力で証拠をそろえて勝つのはほぼ不可能なんだ。有名な民事勝訴のケースも、たいていは刑事捜査や裁判が先にあった。最初から手を抜かれると打つ手がない。
21. 謎の名無しさん
この事件で唯一「未解決」なのは、犯人が誰かじゃなくて、スウィートマンが地元警察の誰と繋がってるのか、って部分だけな気がする。
22. 謎の名無しさん(>>21への返信)
検察も監察医も警察も、そろって腐ってるように見えて、しかもそれを隠そうともしてない感じが余計に怖い。少なくとも外からはそう見えてしまう。
23. 謎の名無しさん
「なぜ女性は虐待の通報をこんなに我慢するのか」ってよく言われるけど、答えはこれだよ。デイビッドみたいな男がいて、そして女性の訴えはなかなか信じてもらえないから。ローラさんの件がまさにそれだ。
24. 謎の名無しさん
今年読んだ中でも一番よく調べられたまとめだった。これだけ状況証拠がそろってるなら、どこかに彼へ繋がる決定的な証拠があるはず。あとは法執行機関がどこまで本気で動くかだと思う。
25. 謎の名無しさん
監察医が「事故」と断定した根拠が薄いなら、生命保険会社が独自調査で覆せそうなものなのに、いまだに支払われているっぽいのが不思議。保険会社ほど支払いを渋る組織はないはずなんだけど。
26. 謎の名無しさん
ニック夫妻の友人だけど、あの日のことは今も信じられない。高校からの付き合いで、二人が若い頃から本当に仲の良い家族だった。ニックは誰かに恨まれるような人間じゃなかった。だからこそ、この事件が受け入れられない。
27. 謎の名無しさん(>>26への返信)
お気の毒に、本当に。そのうえ、通話の相手が幼い娘さんだったっていう事実が、何より胸を締めつける。子どもたちが背負うものを思うと言葉が出ない。
28. 謎の名無しさん
そもそも警察はなぜ一度スウィートマンを逮捕して、その後釈放したんだろう。目撃者をわざわざ拘束するってことは、最初から彼の話に何か引っかかるものがあったんじゃないの。
29. 謎の名無しさん(>>28への返信)
現場に唯一残っていて、しかも銃を所持していたら、拘束しない方がどうかしてる。たとえ話が完璧でも、その状況なら文句なしの最有力容疑者だからね。逮捕自体は普通の判断だと思う。
30. 謎の名無しさん
一人の人間が妻と共同経営者という二つの不審死に関わってるなんて、出来の悪い犯罪ドラマの筋書きみたいだ。でも現実に起きてて、しかも誰も裁かれていない。それが一番ぞっとする。
未解決の謎
ニック・コルドバを撃った二人組は誰だったのか、なぜ強盗のはずが現金には一切手をつけなかったのか、防犯カメラに映った身元不明の男は何者なのか——事件の核心はすべて闇の中にある。実行犯そのものが特定されていない以上、背後に誰がいたのかを立証する糸口すら掴めていない。
多くの人が指摘するように、動機と状況だけを並べれば、疑いの目は自然と一人の人物へ向かう。会社の単独所有、生命保険金、争われた末の和解、そして遡ること7年前に起きた元妻の不可解な浴槽死。だが「疑わしい」ことと「立証できる」ことの間には、深い溝がある。地元警察の捜査が進まない理由が、能力不足なのか、それとも別の何かなのかも、外からは判然としない。
一方で、この事件を額面どおりの強盗と見る冷静な視点も消えてはいない。会社を受取人とする保険は珍しくなく、現場に残された不可解な物証も、無能な実行犯の仕業と考えれば辻褄が合わなくもない。真相がどちらに転ぶにせよ、決定的な一片が欠けたまま、事件は宙づりのままだ。
2025年、ニックの事件はサイレント・ウィットネスに登録され、逮捕につながる情報には2万ドルの懸賞金が提示されている。あの日、娘とのビデオ通話の向こうで何が起きたのか。それを知る誰かは、今もどこかで沈黙を守っている。

