1991年8月24日の土曜、深夜が近づく午後10時すぎ。イングランド北西部の町ウィドネスに暮らす42歳の女性、ヴェラ・アンダーソンのもとに一本の電話がかかってきた。誰からの電話だったのか、いまも分かっていない。ただ、受話器を置いた彼女は顔を青ざめさせ、車のトランクを空にし、眠っていた7歳の息子を起こして隣家に預けると、「すぐ戻る」とだけ言い残して夜の闇へ消えた。数時間後、彼女は自分の車の中で変わり果てた姿で見つかる。喉を切られ、首を絞められた痕があった。あれから34年、犯人はいまも捕まっていない。
事件の概要
🗓️ 発生日:1991年8月24日(土)深夜〜25日(日)未明
🌫️ 場所:イングランド北西部、ワリントン近郊ペンケスのタナリー・レーン(自宅はウィドネス)
👤 被害者:ヴェラ・アンダーソン(42歳)/2児の母、サンドイッチの仕出し業を経営
🔍 状況:深夜の電話で家を飛び出し、自分の車内で殺害される。強盗・性的暴行の形跡はなく、動機は不明
🕯️ 発見/現状:25日午前3時過ぎに車内で遺体発見。DNAは検出されず、34年経った現在も未解決
ヴェラ・アンダーソンは、娘のロレインとともにサンドイッチの仕出し業を切り盛りする働き者の母親だった。19歳の娘と7歳の息子ニールを育て、事件当時は長距離トラックの運転手と3年ほど交際していたという。犯罪とは無縁の、どこにでもいる普通の暮らし。それだけに、深夜の電話一本から始まった惨劇は、地元ウィドネスの人々に大きな衝撃を残した。
判明している事実
誰からか分からない深夜の電話
事件の起点は、24日午後10時ごろにかかってきた一本の電話だ。相手も内容も不明だが、それを受けたヴェラは顔色を変え、家の電気とテレビをつけたまま、寝ていた息子を起こして隣家に預け、飛び出した。隣人には「兄のために何かを取りに行く、すぐ戻る」と言い残していたとされる。
車のトランクをわざわざ空にして出発
出発前、彼女は車のトランクからベビーカーや、ジャンプケーブルと工具の入った赤い箱を降ろし、荷室を空にしていた。何か大きな物を積むつもりだったのか、その理由はいまも分かっていない。目撃者は、彼女がいったんウィドネス方面へ向かい、その後ワリントン方向へ引き返した可能性を証言している。
犯人の血ではなく被害者の血だった手袋
現場には血のついた白い手袋が残されていた。鑑定の結果、付着していたのは被害者自身の血で、警察は「犯人が着用していたもの」と結論づけた。しかし現場からは犯人につながるDNAは一切検出されておらず、これが34年間にわたって捜査を阻んでいる。
現場に残されたコードと空砲の薬莢
遺体には喉を切られた傷と、首を絞められた索状痕、そして激しく抵抗したことを示す下肢の傷があった。現場にはサッシュ窓用とみられる紐が残され、車の足元からは空砲用拳銃の薬莢が回収されている。ただし拳銃本体は見つかっていない。
パブの目撃者と揺らぐフォトフィット
午後10時半ごろ、近くの「クラウン・アンド・クッション」というパブで、彼女に似た女性が一人の男といるのを目撃されている。この男のフォトフィット※が公開され第一容疑者とされたが、後にその女性の服装や注文した酒がヴェラらしくないと判明し、目撃の信憑性そのものが揺らいでいる。
※ フォトフィット:目撃者の証言をもとに顔の各パーツを組み合わせて作る、犯人の似顔絵(モンタージュ写真)のこと。
主な仮説
仮説1:顔見知りによる計画的な呼び出し
最も多く支持されているのがこの説だ。深夜の電話一本で、彼女は部屋着のまま迷わず家を出た。見知らぬ相手なら、まず身支度をするか、そもそも応じなかったはず。地元でも「よく知った人物が周到に計画した犯行」という見方が根強い。警察は長年、車内に2人がいて後部座席の人物が手を下したという構図を描いていた。
仮説2:プロの手口(ヒットマン)による処刑
地元紙は、まず紐で首を絞めて意識を奪い、その後に喉を切るという冷徹な手順を報じている。絞め紐・刃物・拳銃を持参し、人目につかない場所を選んだ点は、明確な殺意と入念な準備を物語る。一方で、「狙われる理由が何もない主婦」に、誰がなぜ殺し屋を差し向けるのか——動機がまったく見えないのが最大の弱点だ。
仮説3:元交際相手による痴情のもつれ
警察は彼女の元交際相手を全員捜査し、一部は再聴取もしている。「元恋人が犯人」という噂も地元では流れていた。ただし担当刑事は「痴情のもつれにしては暴力の程度が異常だ」と語り、単純な怨恨説には慎重な姿勢を見せた。3年付き合っていたトラック運転手は当夜のアリバイがあり、捜査線上から外れている。
仮説4:パブの男=フォトフィットの人物
事件直後、近くのパブで被害者に似た女性と一緒にいた男が第一容疑者とされ、フォトフィットも公開された。しかし後年、その女性の服装や注文した酒が「ヴェラらしくない」と判明し、パブの目撃自体が別人だった=手がかりのミスリードだった可能性が浮上している。もしそうなら、捜査は長年、幻を追い続けていたことになる。
海外の反応
1. 謎の名無しさん
電話の相手が誰だったのか、そこが全ての鍵だと思う。慌てて家を飛び出したってことは、断れない、あるいは無視できない相手からの連絡だったはず。
2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
家の中でくつろぐ時の服装のまま出てるのが引っかかる。近所のパブに寄る格好ですらない。相当親しい相手じゃないと、あの時間にあんな格好で出ないよ。
3. 謎の名無しさん
2022年に70歳の男と61歳の女が逮捕されてる。事件当時だと男が40歳前後、女が30歳くらい。証拠不十分で釈放されたけど、まだ完全には容疑が晴れてないらしい。
4. 謎の名無しさん(>>3への返信)
逮捕まで踏み切ったってことは、警察はある程度目星をつけてるんだと思う。あとは決定的なDNAが一つ出れば一気に動くはず。
5. 謎の名無しさん
タナリー・レーンって基本は住宅地なんだよね。遺体や車を置き去りにするには、窓から誰かに見られるリスクが高すぎる。土地勘のある人間の仕業に見えてくる。
6. 謎の名無しさん(>>5への返信)
でも空砲の薬莢やコードを持参してる時点で、行き当たりばったりじゃなく計画的だよ。場所も含めて全部下見してた可能性がある。
7. 謎の名無しさん
トランクをわざわざ空にしてから出かけた理由がずっと気になる。何か大きい物を積む、あるいは運ぶつもりだったとしか思えないんだよな。
8. 謎の名無しさん(>>7への返信)
犯人が「大きい物を取りに来てくれ」と口実を作って、彼女自身にトランクを空けさせた可能性もあるよね。運ぶ対象は、彼女自身だったのかもしれない。
9. 謎の名無しさん
手袋についていた血が被害者本人のものだけ、というのが不気味でならない。これだけ激しく抵抗したなら、普通は犯人も傷を負って血を残しそうなのに。
10. 謎の名無しさん(>>9への返信)
交際してたトラック運転手は3年付き合ってたけど、事件当日は仕事で遠方。しかも同居はしてなかったみたいだから、勤務のアリバイは立証しやすかったんだろうね。
11. 謎の名無しさん
今の技術なら、手袋の内側に残った皮膚細胞からDNAが取れるかもしれない。当時は量が足りなくて使えなかった微量サンプルでも、いまなら解析できる可能性がある。
12. 謎の名無しさん
正直これは解決しない気がしてる。DNAは残ってない、最後の目撃場所は長距離トラック運転手が集まるパブ。犯人は英国のどこの人間でも、なんなら国外でもおかしくない。
13. 謎の名無しさん
サンドイッチの仕出し業を娘と切り盛りしてた、ごく普通の女性なんだよね。警察も「過去に狙われるような要素は何もない」とはっきり言っている。
14. 謎の名無しさん
担当刑事が「これほどありえない被害者はいない」と言うくらいだからね。狙われる理由が見当たらないのに、これだけ執拗に殺されてる。そこがかえって怖い。
15. 謎の名無しさん
警察が長年立ててた見立ては、車内に2人(前に1人、後ろに1人)いて、後部座席の人物が彼女を殺した、というもの。前の人物は誘い出し役だったのかもね。
16. 謎の名無しさん
隣人には「兄のために何かを取りに行く」と言い残してたって記事もある。その「何か」自体が、彼女を呼び出すための作り話=罠だったのかもしれない。
17. 謎の名無しさん
マンチェスターの地元紙が詳報を出してた。喉を切る前に、まず紐で首を絞めて意識を奪ったらしい。手口があまりにプロっぽくて、ヒットマン説まで出てるくらいだ。
18. 謎の名無しさん(>>17への返信)
絞め紐、刃物、拳銃を全部持参してる時点で、明確に「殺す」目的で来てるよね。口論がエスカレートしたような突発的な犯行とは、とても思えない。
19. 謎の名無しさん
フォトフィットの男が長年の第一容疑者だったけど、そもそもパブにいたのはヴェラじゃなかったんじゃないか、という説が今は有力になってる。
20. 謎の名無しさん(>>19への返信)
服装が決め手なんだよね。ビーチサンダルに中華風の柄シャツ姿だったらしくて、身なりに気を遣う彼女が絶対にそんな格好で人前に出ない、と友人が証言してる。
21. 謎の名無しさん
足元に空砲の薬莢が落ちてたのも謎。脅すために撃ったのかな。銃声で言うことを聞かせて、車をあの場所まで移動させたのかもしれない。
22. 謎の名無しさん(>>21への返信)
拳銃自体は見つかってないんだよね。「命を奪った証」として犯人が持ち帰った、という見立てもあってゾッとする。だとしたら相当冷静な人間だ。
23. 謎の名無しさん
売春してたっていう噂も一部で出てたけど、警察がそれを見落とすとは思えない。結局は根拠のない、女性を貶めるだけの憶測でしかないと思う。
24. 謎の名無しさん(>>23への返信)
同意。あの時代のタブロイドなら、そんな事実があれば真っ先に書き立ててる。それが一切ないってことは、やっぱり事実無根なんだと思うよ。
25. 謎の名無しさん
家の電気もテレビもつけっぱなしのまま出てるんだよね。本人は本当に「すぐ戻る」つもりだった。長時間出かける気は微塵もなかったってことだ。
26. 謎の名無しさん
「外に着ていく服」と「家でだけ着る服」を分ける感覚、ヴェラの世代のイギリスではごく普通だったらしい。だからあの格好で出たこと自体が異常事態なんだ。
27. 謎の名無しさん(>>26への返信)
アメリカの年配の女性にもいるよ。階級や世代の意識で、部屋着のままでは絶対に人前に出ない人。日本の「よそ行き」の感覚に近いのかもしれない。
28. 謎の名無しさん
犯人像の髪の色「マウジー」、ネズミ(mouse)から連想して灰色かと思ってた。実際は薄い茶色〜金髪寄りの色なのね。「フォーン」はもう少し濃い茶色だとか。
29. 謎の名無しさん
もう34年か…。娘のロレインさんの気持ちを思うと胸が痛い。せめて彼女が生きているうちに、真相だけでも明らかになってほしい。
30. 謎の名無しさん(>>29への返信)
逮捕された2人がまだ容疑圏内にいるなら、DNA技術の進歩に一縷の望みはある。34年前には解けなかったものが、今なら解けるかもしれない。諦めないでほしい。
未解決の謎
なぜこの事件は34年ものあいだ解けないのか。最大の壁は、これだけ激しい犯行にもかかわらず、現場に犯人のDNAがまったく残されていないことだ。血のついた手袋から検出されたのも、被害者自身の血だけだった。DNA鑑定が実用化されてわずか数年、必要な試料も大量だった当時の技術では、微量の痕跡を拾いきれなかったのだ。
もっとも妥当に見えるのは、やはり「顔見知りによる計画的犯行」だろう。部屋着のまま迷わず家を出たこと、周到に用意された凶器、そして動機の見えなさ——これらは、彼女が相手を信用しきっていたことと、犯人が捕まらない自信を持っていたことの、両方を示しているように思える。
それでも違和感は消えない。狙われる理由が何一つない主婦が、なぜ絞め紐と拳銃まで用意した人間に、住宅街のすぐそばで処刑されねばならなかったのか。空砲の薬莢は何のために撃たれ、消えた拳銃はどこへ行ったのか。2022年に逮捕された男女がいまも容疑圏内に残るなか、進化したDNA技術が手袋の内側からわずかな細胞を拾い上げる日を、遺族はいまも待ち続けている。

