1960年11月の土曜の朝、米シカゴ。8歳のグロリア・コワレウィッツは、3ブロックほど先の教会へ1人で歩いて向かい、その途中で姿を消した。約2時間後、市の南西にある森林保護区で、遺体となって見つかる。警察は1300人以上から話を聞いたが、犯人にはたどり着けなかった。
それから65年あまりたった2026年10月、シカゴ市警は犯人を特定したと発表した。服に残っていたDNAを、家系調べのサイトに登録された遺伝子データと照らし合わせる「遺伝系図捜査」※が行き着いた名前は、トーマス・F・マキナニー・ジュニア。事件当時24歳で、前の年に市警へ入ったばかりの警察官だった。本人は2006年に亡くなっており、罪に問われることはない。
※ 遺伝系図捜査:現場に残されたDNAを、一般の人が家系調べのために登録した遺伝子データと照らし合わせ、遠い親族を手がかりに家系図をたどって本人を絞り込む捜査の手法。英語では investigative genetic genealogy と呼ばれる。2018年、米カリフォルニア州の連続殺人犯の逮捕につながったことで広く知られるようになった。
事件の概要
🗓️ 発生日:1960年11月12日(土)の朝
🌫️ 場所:米イリノイ州シカゴ南部のウェスト・エングルウッド地区(自宅から教会へ向かう道)
👤 被害者:グロリア・コワレウィッツ(8歳、小学3年生)
🔍 状況:午前8時前に家を出て、3ブロックほど先の教会の朝のミサへ向かう途中で連れ去られた
🕯️ 結末:約2時間後、市の南西の森林保護区で遺体で発見。2026年10月、市警が元警察官(2006年に死亡)を犯人と特定したと発表。訴追はされない
グロリアは小学3年生で、初聖体※を受けたばかりだった。この日の朝は、祈祷書を入れた白い手提げを持ち、セント・メアリー・オブ・マウント・カーメル教会のミサへ向かった。NBCによると、家を出たのは午前8時前だった。
※ 初聖体:カトリック教会で、子どもが初めて聖体(聖別されたパン)を受ける儀式。7〜8歳ごろに行うことが多く、家族にとって大きな節目になる。
市警は今回の声明で、この朝をこう振り返っている。「彼女はミサにたどり着かなかった」「あの土曜の朝、自宅と教会のあいだのどこかで、グロリアは連れ去られた」。
遺体は約2時間後※、シカゴ南西郊外の森林保護区の溝で見つかった。車で通りかかった人が、色鮮やかな服に気づいて確かめに行ったという。グロリアは銃で撃たれて亡くなっていた。4日後に同じ教会で営まれた葬儀には、1000人以上が参列した。
※ 日付と場所について:NBCは連れ去りを11月12日と書き、CBSは発見を「約2時間後」としている。CBSは発見の日付を11月13日とも書いているが、同じ記事の「約2時間後」とは合わないため、この記事では連れ去りも発見も12日として書いた。発見場所をCBSは「パロスヒルズの森林保護区」としている。
市警は特別班をつくり、数百軒の家を訪ねて回った。市警によれば、話を聞いた相手は1300人を超え、十数人がポリグラフ(うそ発見器)の検査を受けている。NBCは、市を挙げた捜索が数か月続き、数千人が調べを受けたと書く。それでも、犯人の名前は挙がらなかった。
判明している事実
60年以上保管されていた証拠
警察は当時、現場と、シカゴへ戻る幹線道路沿いで、いくつかの物を回収していた。弾丸1発、グロリアのコートと靴、祈祷書の入った白い手提げだ。手提げの肩ひもからは、指紋が1つ採取された。市警によると、これらは目録に記され、大切に保管され続けていた。
2010年に服から取り出されたDNA型
最初の手がかりは2010年に得られた。シカゴ・トリビューンによると、市警は補助金を使ってグロリアの服を鑑定に出し、服に残っていた男性の体液からDNA型が取り出された。このDNA型はFBI(連邦捜査局)のデータベース「CODIS」※に照会され、何人かの人物が浮かんだ。だが、その後の検査で全員が無関係と分かった。
※ CODIS:FBIが運用するDNA型のデータベース。有罪が確定した人や逮捕された人、未解決事件の現場に残された試料などのDNA型が登録されている。
2024年に始まった家系調べサイトとの照合
それから14年が過ぎた2024年、市警はFBIに協力を求めた。FBIは、服に残っていたDNAを、家系調べのサイトに登録された遺伝子データと照らし合わせた。トリビューンによれば、このときFBIに送られたのはコートだった。2026年7月、DNAの持ち主がマキナニーだと特定された。
採用時に提出した指紋との一致
名前が浮かんだあと、刑事たちは、マキナニーが1959年に市警へ応募したときの書類を取り出した。そこに残っていた指紋は、手提げの肩ひもの指紋と一致した。トリビューンは、彼がコルト社製の回転式拳銃を3丁持っており、現場の弾丸を撃った銃と同じ種類だったとも伝えている。
ただし、銃について確認できた報道にあるのは「同じ種類」というところまでだ。市警は声明で、特定の決め手を「現場に残された指紋とDNA」としている。
特定された人物の経歴
マキナニーは陸軍にいた経歴があり、1959年にシカゴ市警に入った。事件当時は24歳で、市の西部を受け持つ巡回の警察官だった。1964年に刑事へ昇進し、1987年、28年勤めたのちに暴力犯罪を担当する刑事として退職している。
その後はネバダ州に移り、連邦公設弁護人事務所※で調査員として働いた。2003年には優秀な調査員として表彰を受け、2004年に退職。2006年、ラスベガスで70歳で亡くなった。
※ 連邦公設弁護人事務所:弁護士を雇う資力のない被告人を、連邦の刑事裁判で弁護する公的な機関。調査員は、弁護側の立場で事実関係を調べる。
市警は、鑑識部門がイリノイ州警察とFBIの協力を得て特定に至ったと説明している。10月12日の声明にはこうある。「マキナニーはシカゴ市警の星章(星形のバッジ)を着けるべきではなかった。彼が生きているうちに特定されず、責任を問われなかったことは、受け入れるにはあまりにつらい」。
なお、事件からの年数は媒体によって書き方が違う。CBSとNBCは「65年」とし、「66年」と書く媒体もある。1960年11月から2026年10月の発表までを数えると、65年と11か月になる。
主な仮説
犯人とされる人物の名前が出た今、問いは「誰が」から「なぜ65年も分からなかったのか」に移っている。報道とコメント欄で挙がっている見方を4つに整理する。
仮説1:当時の科学捜査では、残された試料を読み解けなかった
1960年には、DNA型鑑定そのものが存在しなかった。この技術が犯罪捜査に使われはじめるのは、1980年代の後半になってからだ。市警も今回、決め手を「グロリアが殺害された当時は存在しなかったDNA技術」と説明している。現場に残った1つの指紋を、大量の記録と機械で照らし合わせる仕組みも、まだなかった。
仮説2:1300人を超える聞き込みの外に、犯人がいた
特別班は数百軒を回り、1300人以上から話を聞いた。それでも名前が挙がらなかったのは、彼が調べの網の外にいたからだ、という見方がある。警察によれば、マキナニーの両親の家は、コワレウィッツ家から1マイル(約1.6キロ)足らずの場所にあった。一方で、彼とグロリアのあいだに、事件前の接点があった形跡は見つかっていない。
接点のない相手は、聞き込みではたどりにくい。なお「すぐ近所に住んでいた」と書く報道もあるが、NBCが警察の説明として伝えているのは「両親の家が1マイル足らず」という距離である。
仮説3:身内の警察官は、調べの対象になりにくかった
コメント欄で目立ったのが、この見方だ。採用時の指紋は、65年間ずっと市警の手元にあった。それなのに現場の指紋と照らし合わされなかったのは、警察官を疑う発想がなかったからではないか、というわけだ。
ただし、これはコメント欄の見方である。確認できた範囲で、当局は「同僚がかばった」とも「本人が捜査を妨げた」とも述べていない。彼がこの事件の捜査に加わっていたかどうかも、はっきりしていないとNBCは書く。市警の刑事部門のトップはトリビューンに対し、彼が警察官だった事実は「私たち全員にとって深く心を乱すものだ」と語り、小さく見せることも、目をそらすこともしないと述べている。
仮説4:親族のデータが登録されるまで、たどる道がなかった
DNA型は2010年に手に入っていた。それでも14年間進まなかったのは、照らし合わせる相手がいなかったからだ、という見方である。CODISの照会で本人に行き当たらなかったのは、彼のDNA型がそこに登録されていなかったためと考えられる。
遺伝系図捜査は、家系調べのサイトに血のつながった誰かのデータがあって、初めて働く。トリビューンによれば、この手法が捜査に使われたのは2018年が最初だった。そのとき、マキナニーはすでに亡くなっていた。
海外の反応
1. 謎の名無しさん
事件当時24歳で、市警に入った翌年。両親の家は少女の家から1マイルも離れていなかったと報じられてる。こんな近くにいた人間に、65年もたどり着けなかったのか。
2. 謎の名無しさん
シカゴの南の郊外で育ったけど、この事件は聞いたことがなかった。ほかにも何かしていないのか、どうしても考えてしまう。
3. 謎の名無しさん(>>2への返信)
NBCの記事によると、FBIが同じ時期にあの地域で起きた未解決事件との関わりを調べているそうだよ。
4. 謎の名無しさん
連れ去られてから見つかるまで、たった2時間ほどだったというのも気になる。土曜の朝の、ほんの短い時間の出来事だったんだな。
5. 謎の名無しさん
前からずっと言ってるんだけど、警察官は採用のときにDNAを提出する決まりにしたほうがいい。
6. 謎の名無しさん(>>5への返信)
指紋もね。現場の指紋が、実は最初に駆けつけた隊員のものだったという例をいくつも読んだ。除外のためにも記録は要るし、責任を問われる可能性が上がれば、向いていない人は応募しにくくなると思う。
7. 謎の名無しさん(>>6への返信)
指紋は提出してるよ。今回も、彼が市警に応募したときの指紋が、現場の手提げに残っていた指紋と一致したんだから。
8. 謎の名無しさん(>>7への返信)
待って。採用時の指紋も現場の指紋も、ずっと手元にあったのに、一致していることに気づかなかったってこと?
9. 謎の名無しさん(>>8への返信)
最近の系図の調査で名前が出るまで、彼を疑う理由がなかったんだと思う。60年代には照合用のデータベースなんて無いし、身内の指紋と突き合わせる発想も無かっただろう。古い採用時の指紋カードは、電子化しておくべきだね。
10. 謎の名無しさん
私は看護師になるとき、州に指紋を提出した。公共の仕事に就く人はみんなそうだと思ってたけど、違うの?
11. 謎の名無しさん(>>10への返信)
イギリスで警察に入ったときは、全部の指の指紋とDNAの試料を提出したよ。辞めて何年もたつけど、記録はまだ残っているかもしれない。提出しなくていいほうが信じられない。
12. 謎の名無しさん
ご両親は、誰がやったのかを知らないまま亡くなったんだね。それでも弟さんに答えが届いたことは、せめてもの救いだと思いたい。
13. 謎の名無しさん
弟さんの「彼は報いを受けなかった」という言葉が重い。答えは出たけど、裁きは無い。65年待った結果がそれなのか。
14. 謎の名無しさん
退職後は別の仕事で表彰まで受けて、70歳で亡くなっている。そのあいだずっと、遺族は答えを待っていた。この落差がやりきれない。
15. 謎の名無しさん
加害者がもうこの世の裁きの届かないところにいても、名前が分かることには意味がある。遺族や友人にひとつの区切りが来るから。DNAを追い続ける人たちは、本当にいい仕事をしてる。
16. 謎の名無しさん
DNAで解決した何十年も前の殺人事件って、全部でどのくらいあるんだろう。
17. 謎の名無しさん(>>16への返信)
数えるのは難しいと思う。毎日のようにどこかで解決しているから。親族のDNAから家系図をたどる手法は、長く止まっていた事件にとって奇跡みたいな道具だよ。
18. 謎の名無しさん
記事を読んでも分からなかったんだけど、鑑定に使ったDNAはどこに残っていたの?
19. 謎の名無しさん(>>18への返信)
着ていた服だそうだ。2010年の鑑定で男性のDNA型が取れて、そこから14年たって、FBIが家系調べのサイトのデータと照らし合わせたという流れ。
20. 謎の名無しさん
65年も前の服や手提げを、鑑定できる状態で保管し続けた人たちがいたことに驚く。どこかで誰かが処分していたら、この結論には届かなかった。
21. 謎の名無しさん
これが唯一だったのか、当局は確かめるべきだ。当時、彼の周りで起きた未解決の事件や、行方が分からなくなった子どもの記録を、洗い直してほしい。
22. 謎の名無しさん(>>21への返信)
若いころの足取りもね。軍にいた時期も含めて、成人してからの人生と職歴を丸ごと見直す必要があると思う。
23. 謎の名無しさん
しかも、のちに刑事になった人だ。彼が関わった捜査に問題がなかったかどうかも、念のため確かめてほしい。
24. 謎の名無しさん
相手が警察官だというだけで、彼のそばで安心していた人は大勢いたはずだ。何をしたのか、誰も知らないまま。
25. 謎の名無しさん
警察官だったことに驚く声が多いけど、警察全体を責める話ではないと思う。信頼されやすい立場に悪意のある人間がまぎれ込むのは、学校でもどんな組織でも起きてきたことだ。
26. 謎の名無しさん(>>25への返信)
それはそうだけど、だからこそ組織の側に仕組みが要るんだよ。採用時の記録を照合できる形で残すとか、身内でも例外にしないとか。
27. 謎の名無しさん
本人は亡くなっていて反論できないし、裁判で確かめられたわけでもない。そこは頭に置いておきたい。ただ、DNAと指紋という別々の証拠が同じ人物を指しているなら、重い結論だと思う。
28. 謎の名無しさん
犯人が身内だったという結果を、市警が自分たちの口から発表したことは評価したい。目をそらさないと言い切ったのも良かった。
29. 謎の名無しさん(>>28への返信)
評価はするけど、65年かかった理由の説明はまだ足りないと感じる。手元にあった採用時の指紋がなぜ照合されなかったのか、きちんと検証してほしい。
30. 謎の名無しさん
「悪いことをした側なら、いずれたどり着かれる」。逃げ切ったつもりでいる人間全員に、毎晩この言葉が届けばいい。グロリアのことを忘れなかった人たちに感謝したい。
未解決の謎
犯人とされる人物の名前は分かった。だが、動機は分からないままだ。警察は、マキナニーとグロリアのあいだに事件前の接点は見当たらないとしており、なぜ彼女だったのかは説明されていない。本人が亡くなった今、その答えを本人の口から聞くことはできない。
ほかに被害者がいたのかどうかも、まだ分かっていない。FBIはマキナニーのDNA型をCODISに登録し、ほかの事件との関わりを調べている。声明では、同じ時期にこの地域で起きた未解決事件について、解決につながりうる手がかりをすべて追っていると述べた。確認できた範囲では、ほかの事件への関与が確かめられたという発表は出ていない。
裁判が開かれないことも、問いを残す。DNAと指紋という別々の証拠が同じ人物を指しているとはいえ、それが法廷で検証される機会はない。彼が当時この事件の捜査に関わっていたのか、採用時の指紋がなぜ照合されないままだったのかも、確認できた報道からは分からなかった。
グロリアの両親は、犯人を知らないまま亡くなった。事件当時は赤ん坊だった弟は、トリビューンの取材に、安堵とやりきれなさの両方を語っている。「彼は報いを受けなかった」。そして、どうしても頭をよぎるのは、彼がまっとうな人生を送ってそのまま逝ったことだ、とも話した。
市警の刑事部門のトップは、65年ごしの特定を「私たちは忘れない」ことの証しだと表現した。保管され続けた服と手提げは、名前という答えを届けた。なぜ、という問いへの答えは、もう誰にも聞けないところにある。
出典:r/UnresolvedMysteries 元スレ / CBS News Chicago / NBC News / シカゴ・トリビューン(2026年10月11日付。NBCと元スレでの引用による)


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