「公衆電話は使えますか」1988年、妊娠7か月の女性が生き延びた夜を最後に連続事件はなぜ止まったのか

「公衆電話は使えますか」1988年、妊娠7か月の女性が生き延びた夜を最後に連続事件はなぜ止まったのか 未解決事件

1988年8月6日の夜、米ニューハンプシャー州南西部の小さな町。閉店後の店の駐車場に車を停め、自動販売機で買った飲み物を開けようとしていた22歳の女性に、隣に車を寄せた男が近づいてきた。「公衆電話は使えますか」。そう尋ねた直後、男は車のドアを開け、彼女を外へ引きずり出そうとした。

女性は刃物で何度も刺されながら生き延び、男の顔と車の特徴を警察に伝えた。そしてこの夜を最後に、コネチカット川※の流域で10年にわたって続いていた女性の殺害事件は止まったとされる。犯人は今も分かっていない。そもそも「1人の犯人」がいたのかどうかさえ、当局は公式には認めていない。

※ コネチカット川:米国北東部のニューイングランド地方を南北に流れる川。上流ではニューハンプシャー州とバーモント州の境になっている。

事件の概要

🗓️ 発生日:1978年10月〜1988年8月

🌫️ 場所:米ニューハンプシャー州西部とバーモント州東部、コネチカット川の流域

👤 被害者:17歳から30代後半までの女性6〜7人が死亡(数え方は出典によって異なる)。1988年に襲われた女性1人が生存

🔍 状況:多くはひとりで外出中やヒッチハイク中に姿を消し、のちに森の中などで遺体が見つかった。刃物で刺されていた例が目立つ

🕯️ 発見/結末:誰も起訴されておらず、犯人は特定されていない。当局は一連の事件を同一犯によるものと公式に認めていない

舞台は、地元で「アッパー・バレー」と呼ばれる森の多い一帯だ。ニューハンプシャー州側にはクレアモント、ニューポート、ユニティといった小さな町が並び、川を渡ればバーモント州になる。

米国では、州ごとに警察も検察も別々に置かれている。川を1本渡るだけで、事件を担当する組織が変わる。一連の事件でも、ニューハンプシャー側は同州の当局が、バーモント側の2件はバーモント州警察が、それぞれ別に抱えてきた。

最初の事件とされるのは1978年10月だ。ニューハンプシャー州ニューロンドンの湿地へ野鳥の観察に出かけた27歳のキャサリン・ミリカンさんが、翌日の夜、近くの森で遺体で見つかった。1981年7月には、州間高速道路91号線でヒッチハイクをしていた37歳の女性が消え、翌月、ユニティの森で発見された。

1984年には、クレアモントで2人が相次いで姿を消した。5月に17歳の高校生、7月には病院に勤める20代の看護師エレン・フリードさんだ。フリードさんは、店の外の公衆電話で話している姿を最後に行方が分からなくなった。翌1985年7月には、州道12号線でヒッチハイクをしていた27歳の女性も消えた。

1986年4月15日、バーモント州ウェストミンスターの自宅にひとりでいた36歳のリンダ・ムーアさんが刺殺された。4日後にはニューポートで、2年前に消えた高校生が遺体で見つかった。さらに6日後にはユニティで、前の年に消えた27歳の女性も見つかっている。わずか10日ほどのあいだの出来事だった。

翌1987年1月には、スキー場から帰る途中だった30代後半の看護師バーバラ・アグニューさんが行方不明になる。車は91号線の休憩所に残されていた。遺体が森で見つかったのは3月の終わりだった。そして1988年8月、冒頭の襲撃が起きる。

当時の米国では、ヒッチハイクは今よりずっと身近な移動手段だった。道ばたで手を挙げ、通りがかりの車に乗せてもらう。被害者のうち少なくとも2人は、そうして車を待つ姿を最後に消息を絶っている。

判明している事実

失踪から発見まで、長いときは2年近く
1984年5月に消えた17歳の高校生が見つかったのは1986年4月で、およそ1年11か月後だった。フリードさんは約1年2か月後、1985年に消えた27歳の女性は約9か月後に発見された。時間がたちすぎていて、遺体から分かることは限られた。1981年の女性については、死因そのものを特定できなかった。

遺体は狭い範囲に集中していた
地元紙によると、フリードさんとこの高校生は、ニューポートを流れるシュガー川沿いの森で、約300メートルしか離れていない場所から見つかった。ユニティでも、1986年の発見現場は、1981年に女性が見つかった場所から約150メートルの距離だったとされる。捜査員が事件どうしのつながりを疑ったのは、こうした場所の近さと、手口が似ていたことからだった。

生存者が残した証言と似顔絵
生き延びたのは、当時22歳で妊娠7か月だったジェーン・ボロスキさんだ。郡の祭り(カウンティ・フェア)から車で帰る途中、ウェスト・スウォンジーの閉店後の店に立ち寄ったところを襲われた。本人の証言によれば、抵抗する彼女に男は刃物を見せ、「お前は俺の恋人を殴った」と言いがかりをつけた。さらに「これはマサチューセッツの車じゃないのか」と尋ねたという。

ニューハンプシャーのナンバーだと答えると、男はいったん自分の車へ戻りかけた。ところが、抵抗したはずみで割れたフロントガラスのことをボロスキさんがなじった直後、引き返してきて彼女を襲った。ボロスキさんは重傷を負ったまま自分で車を運転し、知人の家にたどり着いた。男の車はその後もう一度近くに現れ、ゆっくり通り過ぎてから走り去ったという。

母子ともに命は助かった。彼女の証言から似顔絵が作られ、男の車が木目調の飾りの付いたジープ・ワゴニアだったことも分かった。ナンバーの一部も伝えたとされる。1991年には、未解決事件を再現ドラマで紹介する米国のテレビ番組『Unsolved Mysteries』が彼女の体験を取り上げた。

当局は「同一犯」と公式に認めていない
「コネチカット川流域の殺人鬼」という呼び名は広く知られている。しかし地元テレビ局WMURなどによると、ニューハンプシャー州司法長官事務所の捜査員が、これらの事件すべてを公式に結びつけたことは一度もない。

被害者の数も一定しない。2006年の米紙は1980年代の6人を挙げ、2025年の地元報道は1978年のミリカンさんを含む7人としている。英語版ウィキペディアは「少なくとも7件」と書きつつ、フリードさんを「可能性のある被害者」の側に入れている。

2024年と2025年に捜索が行われた
ニューハンプシャー州は2009年に未解決事件班※を設けた。2024年5月、この班を含む複数の機関が、州西部の住宅を令状にもとづいて捜索した。司法長官事務所は、どの事件の捜査かを明らかにせず、憶測したり結論を引き出したりしないよう呼びかけた。その後、誰かが起訴されたという報道はない。

※ 未解決事件班:長く解決していない殺人や失踪を専門に調べ直す捜査班。米国では「コールドケース・ユニット」と呼ばれる。

2025年10月29日には、ミリカンさんの遺体が見つかった一帯(現在は野生生物の管理区域)で、物証を探す捜索が行われた。班の責任者は「事件当時には無かった技術を使っている」と説明している。結果は公表されていない。2026年10月の時点で、逮捕や犯人の特定につながる進展は報じられていない。

主な仮説

仮説1:土地をよく知る1人の男による連続犯行

もっとも広く語られてきた見方。遺体の見つかった場所が近く、多くが刃物による犯行で、ヒッチハイク中などひとりでいる女性が狙われている。1980年代には、警察の依頼を受けた犯罪心理学者が犯人像の分析に加わった。弱点は、ムーアさんが自宅で襲われ、ボロスキさんの現場がほかから南に離れているなど、型に収まらない事件が混じっていることだ。

仮説2:いくつかの事件は別の犯人によるもの

当局が同一犯と認めていないことを重く見る立場。1984年から85年にクレアモントの周辺で消えた3人は、場所も状況も近い。一方、1978年の事件はそれより6年も前で、ムーアさんの事件は屋内で起きた。

同じ時期、この一帯では別の刺殺事件も起きている。そのうち1件では男性が起訴されたが、裁判で無罪になった。刃物を使う犯人が1人しかいなかったとは言い切れない。

仮説3:犯人は1988年以降に死亡・収監・転居した

事件が止まった理由を、犯人の側の事情に求める見方。亡くなった、別の罪で刑務所に入った、遠くへ引っ越した、といった可能性が語られてきた。

この線でたびたび名前が挙がってきたのが、2005年の大みそかに米フロリダ州で別居中の妻とその娘を殺害し、自殺したマイケル・ニコラウだ。1980年代後半にはマサチューセッツ州に住んでいて、ボロスキさんの事件の数か月後にその土地を離れたとされる。フロリダ州の私立探偵が、流域の事件との関連を指摘した。

2006年、ニューハンプシャー州警察の刑事は米紙に対し、指紋を入手し、DNAも取り寄せて照合する考えを示した。2008年にはバーモント州警察の刑事も「関連があるかどうか調べている」と述べている。ただ、その結果が公表されたという報道は見当たらず、関与は確認されていない。ボロスキさんは一時、写真を見て自分を襲った男だと述べたが、のちに「彼が流域の連続殺人犯だとは思わない」と語っている。

仮説4:生存者が出たことで、自ら犯行をやめた

ボロスキさんが生き延び、似顔絵と車の特徴が公表された。全米で放送される番組にも取り上げられた。顔を知られた犯人が、怖くなって手を引いたという見方だ。元スレの投稿者もこの可能性を挙げている。

ただ、これは事件が止まった時期から逆算した推測で、裏づける証拠はない。別の土地で犯行を続けた可能性を否定する材料もない。

海外の反応

1. 謎の名無しさん
どの州にも連続殺人犯が1人はいたんじゃないか、と思えてくるのが70〜80年代のアメリカなんだよな。この事件もその一つだ。

2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
まさに「連続殺人の黄金時代」ってやつだ。ロサンゼルスなんて、あの街だけでいくつかの州を合わせたより多かったくらいだし。

3. 謎の名無しさん(>>1への返信)
いろんな条件が重なった結果だよ。防犯カメラは無い、科学捜査はまだ発展途上、車が普及して遠くまで動ける、ネットが無いから人が消えても気づかれにくい。

4. 謎の名無しさん
高速道路が延びたのも大きいと思う。それに、女性が進学や仕事でひとりで動くようになった時代で、ヒッチハイクはごく普通のことだった。たいていは何事もなく目的地に着いていたはずなんだ。

5. 謎の名無しさん
事件が止まったのは、ジェーンさんが生き延びたからだと自分は思ってる。似顔絵まで出回ったら、さすがに怖くなったんだろう。どこかにDNAの残った証拠が保管されていることを願うよ。

6. 謎の名無しさん
ジェーン・ボロスキさんは本当に強い人だ。あの状態で自分でハンドルを握って助けを求めに行ったなんて、言葉が出ない。

7. 謎の名無しさん
あれだけの重傷でどうして助かったのか、不思議でならない。運が味方したんだろうけど、それだけでは説明がつかない気がする。

8. 謎の名無しさん
子どもの頃、『Unsolved Mysteries』のこの事件の回を見て本気で震え上がった。襲ったあとに男の車がもう一度現れて、ゆっくり通り過ぎていく場面が今も頭から離れない。

9. 謎の名無しさん(>>8への返信)
同じく。子どもの頃いちばん好きな番組だったのに、この回だけは夜になると思い出して眠れなかった。

10. 謎の名無しさん
水を差すようで悪いけど、「確定した被害者」って誰が確定させたの? ニューハンプシャーとバーモントの捜査当局がそう発表した資料を、自分は見たことがない。全部が1人の犯行というのは、あくまで一つの説だよ。

11. 謎の名無しさん(>>10への返信)
同感。場所も状況も近いと言えるのは、1984年から85年にクレアモントの近くで消えた3人くらいだと思う。それ以外まで一括りにする語り方が、どの事件も立件されない理由の一つになってる気がする。

12. 謎の名無しさん
でも、あんな小さな町ばかりの土地で、同じ時期に女性を刃物で襲う人間が何人もいたと考えるほうが、よほど怖くないか。自分は1人の犯行だと思ってる。

13. 謎の名無しさん(>>12への返信)
この地域の事件を調べている者だけど、ニューハンプシャーでもバーモントでも、暴力事件は昔から珍しくないんだ。何でも1人の殺人鬼の話にまとめてしまうと、被害者それぞれの暮らしや人間関係を誰も調べなくなる。

14. 謎の名無しさん
リンダ・ムーアさんの事件は、どうして同じ連続事件に数えられているんだろう。ほかは道路沿いやヒッチハイク中なのに、彼女だけ自宅で襲われている。何かつながりを示すものがあるのかな。

15. 謎の名無しさん(>>14への返信)
自分は別の事件だと思ってる。ジェーンさんが襲われた場所も、ほかの現場からはかなり南に離れているしね。

16. 謎の名無しさん
当時の証拠品がきちんと保管されているなら、今のDNA技術で調べ直せば何か出てくるんじゃないかな。必死に抵抗した被害者だっていたんだから。

17. 謎の名無しさん
たしか2年くらい前に、警察がどこかの家を捜索していなかった? あれから何も聞かないんだけど、結果はどうなったんだろう。

18. 謎の名無しさん(>>17への返信)
捜索は実際に行われたよ。ただ、何か見つかったという発表は今のところ出ていない。

19. 謎の名無しさん
この事件を知りたいなら『Dark Valley』というポッドキャストがいちばんだと思う。記者がジェーンさんと一緒に現場を一つずつ訪ねて、事件を洗い直していく。被害者への向き合い方がとても丁寧なんだ。

20. 謎の名無しさん(>>19への返信)
自分も全部聞いた。ただ、終盤である人物に疑いを向けていくところは、飛躍が大きいと感じた。公的な裏づけが無いのに、実名を出して連続殺人を疑うのはどうなんだろう。

21. 謎の名無しさん
何年か前に調べたときは、フロリダで死んだニコラウという男が有力に見えたんだけどな。記憶が古いから、今どう扱われているのかは分からない。

22. 謎の名無しさん(>>21への返信)
警察が指紋やDNAを照合するという話は当時の新聞に出ていたけど、結果は聞かないね。ジェーンさん本人も、今は彼が連続殺人犯だとは思わないと話しているそうだよ。

23. 謎の名無しさん
おじがニューロンドンに住んでいて、自分もほとんどあの町で育ったようなものなんだ。あんなに静かで美しい場所が犯罪で汚されたことを、今も受け止めきれない。好きなことをしている最中に命を奪われた人がいるなんて。

24. 謎の名無しさん
とてもよくまとまってる。自分はマサチューセッツ育ちなのに、この事件のことは一度も聞いたことがなかった。

25. 謎の名無しさん(>>24への返信)
なぜか犯罪実話の好きな人たちのあいだでも、あまり話題にならない事件なんだよね。もっと注目されていいと思う。

26. 謎の名無しさん
自分は同じ男の仕業だと思う。川を渡れば別の州で、警察も別になる。80年代に州をまたいで情報をやり取りするのは、今よりずっと手間がかかったはずだ。犯人がそこまで計算していたのかは分からないけど。

27. 謎の名無しさん
見つかるまでに何か月も、長いと2年近くかかっているのがつらい。家族はそのあいだ、どこかで生きていると信じて待っていたんだろうな。

28. 謎の名無しさん(>>27への返信)
森の深い土地だから、道から少し入っただけで長いこと人目につかないんだと思う。見つかるのが遅れれば、分かることも限られてしまうしね。

29. 謎の名無しさん
「1988年で止まった」というのも、同じ犯人だと分かる事件がその後見つかっていないだけかもしれない。引っ越した先で続けていた可能性だってあるわけで。

30. 謎の名無しさん
2025年の秋にも、未解決事件班が最初の事件の現場を捜索したそうだね。50年近くたっても動いている人がいるなら、まだ望みはあると思いたい。

未解決の謎

この事件でいちばん大きな謎は、犯人が誰かという以前のところにある。「コネチカット川流域の殺人鬼」と呼ばれる1人の人物が、本当にいたのかどうかだ。場所の近さと手口の共通点は、1人の犯行を強く思わせる。一方で当局は、半世紀近くたった今も、事件どうしを公式には結びつけていない。

1988年を境に事件が止まった理由も分かっていない。生存者が出て怖くなったのか、死んだのか、遠くへ移ったのか。どの説にも決め手がない。「止まった」という見方そのものも、同じ犯人だと分かる事件がその後見つかっていない、というだけのことかもしれない。

物証の問題もある。DNA鑑定が米国の刑事事件で使われ始めたのは1980年代の後半で、一連の事件の多くはそれより前に起きている。当時集められた証拠がどれだけ残り、今の技術でどこまで調べられるのかは公表されていない。2025年の捜索が「当時は無かった技術」を使って行われたことは、当局がまだ物証をあきらめていないことを示している。

ボロスキさんは今も自分のポッドキャストで体験を語り、ほかの未解決事件の遺族とともに捜査の進展を求めている。ミリカンさんの遺族は2025年、事件が解決するという望みを今も持ち続けているとコメントした。ニューハンプシャー州の未解決事件班とバーモント州警察は、現在も情報提供を受け付けている。2026年10月の時点で、公に確認できる進展は報じられていない。

出典:r/UnresolvedMysteries 元スレ / 英語版ウィキペディア / FOXニュース / ニューハンプシャー州司法省・未解決事件班 / バーモント州警察 / WMUR / Valley News / New Hampshire Union Leader / Concord Monitor / WCAX / St. Petersburg Times / Murder, She Told

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