1996年1月、米カリフォルニア州の町モデストで、引退を間近に控えたタクシー運転手が、乗せた客に拳銃を突きつけられた。男は運転手の腰に黒い金属の箱を鎖で巻き付け、「携帯電話でいつでも爆破できる」と告げて、銀行から金を受け取ってくるよう命じた。運転手の名はフレッド・マクラウドさん。周りからは「ハーヴィー」と呼ばれていた。
マクラウドさんは命じられたとおり銀行へ入って金を受け取り、その金は指示された場所から持ち去られた。あとで分かったことだが、「爆弾」は2つとも偽物だった。男はターバンと付けひげで変装していて、目撃者によれば、近くに止めてあったバンのところで変装を解き、そのまま走り去ったという。それから30年、男が誰だったのかは分かっていない。海外掲示板では、手口の周到さと、捕まらない理由をめぐって議論になっていた。
事件の概要
🗓️ 発生日:1996年1月8日
🌫️ 場所:米カリフォルニア州モデスト(州中部の内陸にある町)
👤 被害者:フレッド・マクラウドさん(通称ハーヴィー)。タクシー運転手になって10年、番組の公式サイトによれば当時65歳
🔍 状況:変装した乗客に拳銃で脅され、「爆弾」だという装置を体に付けられて、銀行から金を受け取ってくるよう命じられた
🕯️ 結末:装置は2つとも偽物。金は持ち去られ、男は特定されていない。元スレによれば、マクラウドさんは2006年に亡くなった
マクラウドさんはカリフォルニア州ストックトンの生まれで、1940年代からモデストで暮らしていた。1949年にモデスト高校を卒業し、1951年から1955年まで米空軍に勤務。その後は、モデストのあるスタニスラウス郡の住宅公社(公営住宅などを扱う郡の機関)で、賃貸契約の交渉を担当する仕事を16年続けた。1996年の時点ではタクシー運転手になって10年がたち、引退が近かったという。
モデストは、サンフランシスコから東へ内陸に入った農業地帯「セントラルバレー」にある町だ。事件は、未解決事件を扱う米国のテレビ番組『Unsolved Mysteries』※で取り上げられ、番組の公式サイトにはいまも事件のページが残っている。この記事の経過は、2020年8月に立てられた元スレの説明に沿っていて、公式サイトの記述で補った箇所はそのつど断っている。当時の新聞記事は、今回オンラインでは確認できなかった。
※ Unsolved Mysteries:1980年代後半に始まった米国の番組。未解決の事件や失踪を再現ドラマで紹介し、視聴者に情報提供を呼びかける。
判明している事実
「運賃は半分しかない」と言う客
1996年1月8日、マクラウドさんがいつもどおり客を拾っていると、頭にターバンを巻き、口ひげとあごひげを着けた男が乗り込んできた。ひげは付けひげで、身なりごと変装だったことはあとで分かる。男はささやくような声で「運賃は半分しかないが、残りは兄弟の家に着けば払える」と言い、道順を指示した。車はモデストの町を出て、交通量の少ない道に入っていく。番組の公式サイトにある本人の話では、町ではターバン姿の人が珍しくなかったので、気にも留めなかったという。
車を止めるよう言われ、話しかけようと振り向くと、顔の前に回転式の拳銃があった。男の指示で2人は車を降りた。金を取られるのだと思ったマクラウドさんの前で、男はかばんから道具を次々に取り出した。
腰に鎖で巻かれた黒い箱
男は、大きな黒い金属の箱と、番号を打ち込むキーパッドを、鎖でマクラウドさんの腰に巻き付けた。さらに金属のワイヤーを首に回して留め具で閉じ、簡単には外せないようにした。それから装置のスイッチを入れ、「携帯電話でいつでも爆破できる」と告げた。携帯電話が、まだ誰もが持つ道具ではなかった時代のことだ。公式サイトによると、マクラウドさんは「電子機器には詳しくないが、いまは何でもできると新聞やテレビで見ていたから、信じた」という趣旨の話をしている。
置いてくるはずの箱を持って銀行を出た
2人は車に戻り、モデストへ引き返した。銀行から金を取ってこさせるつもりだと男が明かしたのは、この帰り道だった。マクラウドさんは銀行の向かいに車を止めた。元スレは「ファースト・グレンデール銀行」としているが、公式サイトの事件ページに銀行名は出てこない。男はここで、箱をひとつと、支店長あての手紙を渡した。
行内に入ったマクラウドさんは落ち着かない様子で、それに気づいた女性の支店長のほうから近づいてきた。彼は体に付けられた装置を見せ、手紙を渡した。手紙には、箱の中身は爆弾であること、支店長が金を用意するあいだに箱を行内へ置いていかせることが書かれていた。要求された金額は明らかにされていない。銀行は要求に応じた。ところがマクラウドさんは、ここで指示に背く。金を受け取ると、置いてくるはずだった箱も抱えて銀行を出たのだ。公式サイトには、本人のこんな趣旨の言葉が残っている。罪のない人たちが死ぬのは見たくなかった。自分のことはどうにもできないが、爆弾を持って出れば、銀行にいる人たちは守れる——。
「着信不可」の公衆電話
車に戻ると男の姿はなく、後部座席にタイプで打った指示書だけが残されていた。マクラウドさんは指示に従って金物店の駐車場まで車を走らせ、車と金と鍵をそこに残して、半マイル(約800メートル)先の公衆電話※まで歩いた。そこで次の指示を待て、ということだった。公式サイトによれば、装置の外し方を電話で教えるという話だったらしい。
※ 米国の公衆電話:1台ごとに電話番号が割り振られていて、外からかけて呼び出せるものが多かった。なかには着信を受け付けない設定の電話機もあり、その旨が本体に表示されていた。
しばらく待ってから、マクラウドさんは電話機の表示に気づいた。この電話は「着信不可」、つまり外からの電話を受けられないと書いてある。男からの電話は来ない。そう悟った彼は、タクシー会社に電話をかけて、何が起きているかを伝えた。待った時間は、公式サイトにある本人の話では「5分か10分」。金物店までの距離は、元スレでは「近く」、公式サイトでは車で15分とされている。
装置は2つとも偽物、金は消えていた
配車係の通報で警察が駆けつけ、周囲から人を遠ざけたうえで、爆発物処理班が装置を調べた。腰に巻かれたものも、箱に入った2つ目も、簡単な作りの偽物だった。公式サイトによれば、X線検査で確かめられたという。タクシーは見つかったが、金はすでに持ち去られていた。
その後の捜査で、2人の目撃者がいたことが分かった。マクラウドさんが銀行にいるあいだに、ターバンの男はタクシーを降り、近くに止めてあったバンまで歩いた。そこでターバンと付けひげを外し、服の下から、体を大きく見せるための詰め物を取り出すと、バンに乗って走り去ったという。変装を解いた男は白人で、身長約183センチ、体重約73キロ、髪は白髪まじり。公式サイトは、髪は短く刈り込まれ、生まれは1941〜51年ごろと推定している。ターバンも付けひげも姿を偽るための道具で、男の出自を示すものではなかったことになる。公式サイトによると、目撃者は車のナンバーまでは伝えられなかった。
指紋やDNAは採取されていないとみられ、容疑者の名前が公表されたこともない。元スレによれば、マクラウドさんが容疑者と見なされたことは一度もない。被害額はいまも公表されず、金は戻っていない。この地域で似た事件が報告されたこともないという。
主な仮説
仮説1:下見と準備を重ねた単独犯
ターバンと付けひげ、体形を変える詰め物、鎖とワイヤーの付いた装置、支店長あての手紙、タイプで打った指示書、逃走用のバン。どれも、その日の思いつきでそろえられるものではない。目撃されたのは男ひとりで、バンも自分で運転して去っている。金物店の駐車場に先回りして金を回収するところまで、ひとりでもこなせる段取りに見える。ただ、ひとりでは銀行の中で何が起きているかを見張れない。現にマクラウドさんは指示に背いて箱を持ち出したが、それでも金は持ち去られた。脅しさえ効けば細部はどうでもよい、という組み立てだったとも読める。
仮説2:運転手は誰でもよかった
元スレを読むかぎり、男がマクラウドさんを名指しで選んだ様子はない。必要だったのは、自分の代わりに銀行へ入り、行員と顔を合わせてくれる人間だった、という見方だ。タクシーなら、客が道を指示すれば人けのない場所へも向かってくれるし、車そのものを金の受け渡し場所に使える。スレには「運転手も計画に関わっていたのでは」と尋ねる書き込みもあったが、それを支える根拠は示されていない。元スレによれば、マクラウドさんが容疑者と見なされたことは一度もない。
仮説3:土地勘のある人物による一度きりの犯行
町はずれの交通量の少ない道、銀行の向かいの停車位置、金物店の駐車場、そこから歩いて行ける公衆電話。場所の選び方が具体的なので、この一帯をよく知る人物ではないか、という推測が成り立つ。一方で、この地域で似た事件は報告されていない。同じ手口を繰り返さなかったのなら、警察が照らし合わせる材料も増えなかったことになる。もっとも、よそから来て何日か下見をしただけでも、同じことはできる。
仮説4:見張りや回収役の仲間がいた
目撃されたのはひとりでも、金物店の駐車場から金を持ち去ったのが同じ男だったのかは分かっていない。「携帯電話でいつでも爆破できる」という脅しも、どこかで誰かが見ていると思わせてこそ効く。そう考えると、もうひとり関わっていた可能性は残る。ただし、仲間の存在を示す証言や物証は、元スレにも番組の公式サイトにも出てこない。
海外の反応
1. 謎の名無しさん
これとよく似た事件を『Unsolved Mysteries』で見た覚えがある。あっちは爆弾が本物で、付けられた男性が亡くなってしまったやつ。
2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
自分も同じことを考えた。ピザ配達員の事件だよね。あれだと思ってスレを開いたら別の事件で、しかもこっちは未解決のままだと知って驚いてる。
3. 謎の名無しさん(>>2への返信)
あっちは2003年にペンシルベニア州のエリーで起きた事件で、Netflixの『邪悪な天才:ピザ配達人爆死事件の真相』というドキュメンタリーにもなってる。こっちはそれより7年も前の話なんだね。
4. 謎の名無しさん
この事件は初めて知った。体に爆弾を付けて銀行へ行かせるなんてことが、別々の場所で2回も起きていたとは信じられない。
5. 謎の名無しさん
モデストに20年近く住んでいるのに、この事件を聞いたのは本当に今日が初めて。自分でもびっくりしてる。
6. 謎の名無しさん(>>5への返信)
自分もモデスト在住だけど初耳。似た筋書きの映画は観たことがあるのに、まさか地元でこんな事件が起きていたとは知らなかった。
7. 謎の名無しさん
悔しいけど、やり口が賢くて無駄がない。銀行に入るのも、行員と向き合うのも、カメラに映るのも全部他人。自分は一度も建物に足を踏み入れていない。
8. 謎の名無しさん
タクシーを使ったのがまた巧妙だと思う。客が「この道を行ってくれ」と言えば、人けのない道でも運転手は疑わずに走ってくれるんだから。
9. 謎の名無しさん
そもそも、見るからに怪しい客を乗せるかな、と最初は思った。でも覆面ならともかく、付けひげくらいなら「ちょっと変わった身なりの人」で済む。運転手は普通に乗せるよね。
10. 謎の名無しさん
目撃者のいる場所で変装を解いたのは、うかつだったのか計算だったのか、判断がつかない。途中で車を止められても気づかれないための策とも取れるけど、車内を調べられたら衣装が出てきて終わりだ。まあ、結局見つかっていないんだから、言っても仕方ないか。
11. 謎の名無しさん(>>10への返信)
人前で外したということは、その下にもう一段の変装をしていた可能性もあると思う。ここまで細かく計画を立てる人物なんだから、白髪まじりの髪だって本物とは限らない。
12. 謎の名無しさん
念のため聞くけど、運転手のハーヴィーさんが誰かと手を組んでいた可能性は、きちんと調べられたのかな。疑う根拠が何かあるわけじゃないんだけど。
13. 謎の名無しさん(>>12への返信)
警察は通話記録から何から徹底的に洗ったはずで、関わっていたなら、まず分かっていたと思う。口座の動きも見られていただろうから、その後の何年かでまとまった金が入れば目に留まる。可能性がゼロとは言わないけど、自分は低いと見ている。
14. 謎の名無しさん(>>12への返信)
目撃者2人が見たのは、変装を解いてバンで走り去る別の男だよ。それに彼は、銀行に置いてこいと言われた箱をわざわざ持って出ている。スレにも、容疑者として扱われたことは一度もないと書いてある。
15. 謎の名無しさん
盗まれた金って追跡できるものだと思ってた。銀行から出た紙幣ならなおさら。ただ、何年も銀行に戻さず、大きな買い物もしないでしまい込まれていたら、たどるのは相当むずかしいのかもしれない。
16. 謎の名無しさん(>>15への返信)
元銀行員だけど、追えるのは番号を控えてある紙幣だけだよ。窓口の引き出しには、強盗に渡すための紙幣が専用の仕切りに入れてあって、研修でも必ず教わる。ただ、これは広く知られた話なので、強盗の多くは「番号を控えた札は入れるな」と指示してくる。行員は自分の命を守るために指示どおりに動く決まりだから、ハーヴィーさんに渡された金にその紙幣が入っていなかった可能性は十分ある。
17. 謎の名無しさん(>>16への返信)
じゃあ「印つきの紙幣」といっても、見て分かる印が付いているわけじゃないんだ。それでも入れないのは、だましたと知った犯人が仕返しに戻ってくるのが怖いから?
18. 謎の名無しさん
紙幣には1枚ずつ通し番号があるから、理屈の上ではどれも見分けがつく。ただ、銀行にある紙幣の番号を残らず記録するなんて、コンピューターが行き渡る前には無理だっただろうね。
19. 謎の名無しさん
犯人はD・B・クーパー※だよ。ハイジャックで手に入れた金を、ついに使い果たしたんだ。
※ D・B・クーパー:1971年に米国で旅客機を乗っ取り、身代金20万ドル(約3000万円)を受け取ったあとパラシュートで飛び降りて、行方が分からなくなった男の通称。正体はいまも分かっていない。
20. 謎の名無しさん
装置が2つとも偽物だったと聞くと、なんだ、と思いそうになる。でも付けられた本人は本物だと信じたまま町を走り回ったわけで、偽物だったから軽い話、ということにはならない。
21. 謎の名無しさん
逆に言うと、犯人は人を死なせる気までは無かったのかも。本物を作る腕が無かっただけかもしれないけど、どちらにしても「怖がらせれば足りる」と読み切っていたことになる。
22. 謎の名無しさん(>>21への返信)
それは善意に取りすぎじゃないかな。顔に拳銃を突きつけて連れ回した時点で、十分に凶悪だよ。偽物にしたのは、捕まったときの罪を少しでも軽くするためという気がする。
23. 謎の名無しさん
いちばん引っかかるのは公衆電話。着信を受けられない電話機だと、犯人は知っていて選んだのか、それとも確かめていなかっただけなのか。
24. 謎の名無しさん(>>23への返信)
知っていて選んだほうに一票。最初から電話をかける気なんて無くて、運転手を車と金から引き離して、通報を遅らせたかっただけだと思う。800メートル歩かせているあいだに金を回収すればいい。
25. 謎の名無しさん
65歳で、引退も近かった人がこんな目に遭ったのかと思うと胸が痛い。それでも箱を持って銀行を出たんだから、たいした人だと思う。
26. 謎の名無しさん
セントラルバレーでは妙な事件が起きる、とはよく言われるけど、これは群を抜いて妙だ。この辺りで似た事件がひとつも報告されていないことも含めて。
27. 謎の名無しさん
捕まらないのも無理はないのかも。指紋もDNAも採れていないらしいし、顔は変装、被害額すら公表されていない。同じ手口を繰り返さなかったから、手がかりが増えることもなかった。
28. 謎の名無しさん(>>27への返信)
一度きりでやめた、というのがいちばん不気味だね。味をしめて二度目をやる犯人は多いだろうに、必要な分を手に入れて、きっぱり手を引いたように見える。
29. 謎の名無しさん
強盗のほうはもう時効だというのがもどかしい。誘拐のほうは捜査が続いているそうだけど、これだけ年月がたつと、解決のきっかけになるのは犯人の身近にいた誰かの証言くらいだろうね。
30. 謎の名無しさん
ハーヴィーさんは2006年に亡くなったそうだね。自分をあんな目に遭わせたのが誰だったのか、知らないままだったのが残念だ。あの日、箱を持って銀行を出たことだけは、ちゃんと語り継がれてほしい。
未解決の謎
元スレの題は「25年近く捜査しても、警察は犯人に近づけていない」という趣旨だった。それからさらに6年がたった2026年10月の時点でも、調べた範囲では、男が特定された、あるいは逮捕されたという報道は確認できない。番組の公式サイトも事件を未解決として扱い、いまも情報を募っている。強盗については、すでに公訴時効が成立した。誘拐については、公式サイトが「時効は成立していない」とする一方、元スレは「捜査は続いているが、こちらも時効を迎えたのかどうかは、はっきりしない」と書いている。
解けない理由は、手がかりの少なさに尽きる。指紋もDNAも採取されていないとみられ、顔は変装で隠され、目撃者はバンのナンバーまでは伝えられなかった。被害額は公表されず、金は戻っていない。そして、この地域で同じ手口の事件が報告されることは、その後なかった。
細かい疑問も残る。着信不可の公衆電話は、マクラウドさんを車と金から引き離して時間を稼ぐための計算だったのか、それとも確かめ忘れただけなのか。装置を偽物にしたのは、人を傷つける気がなかったからか、本物を用意できなかったからか。金物店の駐車場から金を持ち去ったのは、バンで去ったあの男だったのか。どれも、男が見つからないかぎり答えは出ない。
体に爆発物を付けられて銀行へ行かされる事件と聞いて、2003年にペンシルベニア州で起きたピザ配達員の事件を思い出す人は多い。あちらの装置は本物で、配達員の男性は命を落とした。モデストの事件はその7年前に起きていて、2つの事件につながりがあるという情報は確認されていない。
マクラウドさんは、本物だと信じていた箱を、言いつけに背いて銀行の外へ運び出した。元スレによれば、彼は2006年に亡くなっている。自分の腰に箱を巻き付けた男が誰だったのかを、知ることはなかった。
出典:r/UnresolvedMysteries 元スレ / Unsolved Mysteries Wiki(元スレ掲載の資料) / 参考:『Unsolved Mysteries』公式サイトの事件ページ「Human Time Bomb」

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