記憶がすっぽり抜け落ちる。そこにないものが見える。筋肉がやせ、目の焦点が合わなくなる——カナダ東部のニューブランズウィック州で、そんな症状を訴える人が次々に見つかっているのに、誰も病名を言い当てられない。しかも患者の中には、こうした症状がふつうは考えにくい若い世代までいるという。2022年1月、英紙ガーディアンは「公式に数えられている人数より、実際はずっと多いのではないか」と報じた。さらに、亡くなった患者の脳を調べようとした科学者が州の許可を得られていない、とも伝えた。事件ではない。犯人もいない。それでも、原因も規模も「そもそも一つの病気なのか」すらはっきりしないまま、話だけが積み上がっていく。
事件の概要
🗓️ 症例の時期:報道によれば2013年ごろまでさかのぼる(調査報道が出たのは2022年1月)
🌫️ 場所:カナダ東部・ニューブランズウィック州
👤 対象:診断名の付かない神経の症状を訴える住民。報道では最大150人とされ、こうした症状が稀な若年層も含まれるという
🔍 報じられている症状:記憶の障害、幻覚、視覚の異常、筋肉がやせていく、原因の分からない痛みなど
🕯️ 現状:原因は特定されていない。州の保健当局は「まとまった集団発生ではなく、既知の病気が別の病名で報告されたもの」との見方を示してきたと伝えられる
ニューブランズウィック州は、カナダ東部の大西洋岸にある人口80万人ほどの州だ。森林と海に囲まれ、漁業と林業、そして観光が地域経済を支えている。全国ニュースの中心になることは、ふだんはあまりない。
その州で、神経※の異常を訴える患者が一定の地域に集まっているのではないか、という話が表に出た。ところが、患者を診た医師たちが「これは自分の知っている病気ではない」と言い、当局は「既に知られている病気の見間違いが重なっただけだ」と言う。この記事は、その食い違いがどこまで確認できて、どこから先が推測なのかを整理したものだ。断定はしない——判断の材料が、そもそも公開されていないからである。
※ 神経変性疾患:脳や脊髄の神経細胞が少しずつ壊れていく病気の総称。アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などが含まれる。多くは高齢になるほど発症しやすい。
判明している事実
公式の人数より多いのではないか、という調査報道
2022年1月、英紙ガーディアンの調査報道として、2013年以降に説明のつかない神経症状を発症した人が最大150人に上る可能性がある、と伝えられた。これは州が公式に把握している人数を上回る数字で、医師たちが非公式に記録していた症例が含まれるとされる。ただし、地元の保健当局がこれらを「互いにつながりのある症例」と結論づけるかどうかは、当時まだ決まっていなかった。当局は月内に報告書を出す予定とされていた。
介護していた人が発症したとされる9件
報道によれば、150件のうち9件は、すでに同じような症状を抱えている人と近しく接したあとに発症している。多くはその人の介護をしている最中だったという。ただし、これが「人から人へうつった」ことを示しているのか、それとも同じ家で同じ水や食べものを共有していたことの表れなのかは、分かっていない。ガーディアンの記事自体も、近しい接触者に症例が出たことは「共通する環境要因の存在を示唆する」という慎重な書き方をしている。
若い患者が含まれるという指摘
神経変性疾患は、ふつう年齢が上がるほど発症しやすくなる。だからこそ、公式の集計の内側にも外側にも若年層の患者が確認された、という報道が引っかかりを生んだ。「高齢者の既知の病気を数え間違えただけ」という説明では、若い患者の存在をうまく飲み込めないからだ。もっとも、若くても神経の病気にかからないわけではない。何人が該当するのか、その人たちが本当に同じ症状なのかまでは、この記事の情報源からは確認できない。
遺族が望んだ脳の検査が行われていない、との報道
一部の専門家は、シアノバクテリア※(青緑藻)が作る BMAA という物質を疑ってきた。ガーディアンは、連邦政府の科学者が亡くなった患者の脳をこの物質について調べようとしたものの、州政府の許可がこれまで下りていないと報じた。遺族自身は検査を望んでいたという。州側がどのような理由でそう判断したのか、実際にどんなやり取りがあったのかは、この記事の情報源からは確認できない。
※ シアノバクテリア(青緑藻):水中で増える細菌の仲間で、夏場の湖や池を緑色に濁らせる「アオコ」の正体。種類によっては毒を作るものがあり、水浴びや飲用で人や動物に害が出た例が各地で報告されている。
州当局の立場は「まとまった集団発生ではない」
一方で、州の保健当局はこれらを一つのクラスターとは見ておらず、アルツハイマー病など既に知られている病気が別の病名で報告されたもの——つまり診断の誤りが重なった結果だ、という見方を示してきたと伝えられる。この立場に立てば、そもそも新しい病気を探す検査は必要ない、ということになる。患者や遺族の側からは「他のどの医師からもそんな診断は受けていない」という反発が出ているとされ、両者の主張は真正面からぶつかったままである。
主な仮説
仮説1:水や食べものを通じた、環境由来の毒素
もっとも多く語られてきたのが、シアノバクテリアの作る BMAA※ のような環境中の毒素を体に取り込んだのではないか、という見方だ。過去の研究では、この州でよく獲れて食卓にも上るロブスターが高い濃度の BMAA を含みうると報告されたことがあるとされる。有害な藻の大発生そのものは世界的に増えており、コロンビア大学の紹介記事は、世界71の淡水湖を調べた研究で約7割の湖に悪化の兆候が見られたと伝えている。「近しい人どうしで発症した」という点も、うつったのではなく同じ食材・同じ水源を共有していたと考えれば説明はつく。ただし、BMAA と神経の病気の関係は長年研究されてきたテーマではあるものの、「これが原因だと確定した」という段階ではない。そして肝心の検査が行われていない以上、この説は支持も否定もできない。
※ BMAA:シアノバクテリアが作るアミノ酸に似た物質。1940年代以降、グアムの住民に多発した神経疾患をきっかけに研究が続き、複数の神経変性疾患との関連が議論されてきた。動物実験や細胞実験の段階の知見が中心で、人の病気の原因として確定しているわけではない。
仮説2:既に知られている病気が、別々に誤診されて積み上がった
州当局が取ってきたとされる立場がこれである。アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS、レビー小体病、脳腫瘍——症状が重なり合う病気は少なくなく、初期の段階では専門医でも判断が割れる。似た患者が同じ地域で見つかったとしても、それは「新しい病気」ではなく、たまたま近い時期に別々の病気が診断された結果かもしれない。この説の強みは、新しい病原体も新しい毒素も持ち出さずに済むことだ。弱いのは、若い患者や、介護者が続けて発症したという報告をうまく説明できないところ。そして「全部誤診だった」と言い切るには、それを外部が検証できる形にする必要がある。
仮説3:まだ知られていない感染性の病気
近しい接触のあとに発症した例があるなら、何かがうつっているのではないか——そう考えて、当初はプリオン病※を疑う声も上がっていた。実際、この件が最初に注目されたときは、クロイツフェルト・ヤコブ病に似た病気ではないかという見立てが流れた経緯がある。ただし専門的には、プリオン病が日常的な接触で人から人へ広がるとは考えにくい。ならばまったく未知の病原体か、という話になるが、その痕跡は今のところ示されていない。可能性としては残るが、根拠は薄い部類に入る。
※ プリオン病:異常な形になったタンパク質が脳に蓄積して神経細胞を壊していく病気の総称。クロイツフェルト・ヤコブ病が代表で、進行が速く治療法は確立していない。日常生活での接触や咳などでうつるものではないとされる。
仮説4:藻以外の環境汚染
藻の毒素にこだわらず、重金属や工業排水など別の汚染を疑う声もある。脳に影響を及ぼす環境要因としては、鉛や銅などの金属のほうがむしろ古くから知られている。水処理の現場を知る人からは「青緑藻は塩素やオゾンで比較的処理しやすいし、教科書に出てくるのは呼吸器や消化器の症状だ」という指摘も出ていた。この説を確かめるにも、結局は環境と患者の両方を突き合わせる疫学調査※と検体の分析が要る。つまり、どの仮説を取っても、行き着く先は同じ「調べないと分からない」である。
※ 疫学調査:病気にかかった人とかからなかった人を集団単位で比べ、共通する要因(住んでいる場所、食べたもの、職業など)を統計的に探す調査手法。原因の特定には、個々の症例の診察に加えてこの種の調査が欠かせない。
海外の反応
1. 謎の名無しさん
子どものころ泳いでた湖は、5〜6年に一度くらい藻のせいで注意看板が立つ程度だった。今は毎年夏になると出るから、地元はもう看板を外さなくなった。それが当たり前になっていく速さのほうが、正直こわい。
2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
うちの近くの湖も、この18年ずっと発生する範囲が広がってる。昔は週末に1〜2回ビーチが閉まる程度だったのが、今は月に何度も閉鎖になる。気候の話もあるだろうけど、畑から流れ込む肥料の影響もかなり大きいと思う。
3. 謎の名無しさん
カナダは世界でも有数の淡水を抱えていて、人が住んでる地域はだいたい湖が近い。しかも観光にも頼っている州となれば、対応が及び腰になるのは想像がつく。サメ映画で海開きを強行した市長と同じ構図を、現実でやってほしくはないけど。
4. 謎の名無しさん
この件、最初はプリオン病じゃないかと言われていた時期があって、そのころから追いかけてる。北米でプリオン病の集団発生なんて聞きたくもない話だった。それはそれとして、単純な疑問なんだけど、亡くなった人の脳を調べるのに、どうして州の許可が要るんだ?
5. 謎の名無しさん(>>4への返信)
プリオン病だとしても、看病したくらいで人から人にうつるものじゃないよ。感染例として知られてるのは汚染された医療器具とか、かなり特殊な経路。日常の接触で広がるなら、とっくにもっと大きな話になってる。
6. 謎の名無しさん
BMAA 説で一つだけ引っかかるのが、まさにその「近しい人に伝わった」という部分なんだよな。藻の毒素なら人から人へ移るはずがない。接触のあとに発症したという報告が本当なら、むしろ知られていない病気を疑いたくなる。どっちにしても、今の情報だけでは決められない。
7. 謎の名無しさん(>>6への返信)
うつったんじゃなくて、同じ井戸の水を飲んで、同じ店で買った魚を食べていた、というだけの話かもしれない。介護してる人は患者と生活圏が丸ごと重なるから、共通の環境要因があれば同時に当たる。記事も「共通の環境要因を示唆する」と書いていて、伝染とは言っていない。
8. 謎の名無しさん
統計の話をすると、150人という母数の中で「近しい人が9件」というのは、偶然でも起こりうる範囲じゃないかとも思う。もちろん偶然だと決めつけるのも同じくらい雑なんだけど、少ない数字から物語を作りにいくと、たいてい間違える。
9. 謎の名無しさん
浄水場で働いてる者だけど、この件は本当に妙だ。藻の大発生は暖かい時期にはよくあることで、青緑藻に毒性があるのも習う。ただ、塩素やオゾンの処理で比較的しっかり落とせる相手でもある。教科書に載っているのは呼吸器や胃腸の症状で、神経をやられるという話はほとんど出てこない。脳に来るのは普通は金属類の汚染のほうだ。だから正直、藻だけを見ていると的を外す気がしてる。もし自分の地域なら、まず浄水場に電話して現場の人に話を聞くと思う。
10. 謎の名無しさん(>>9への返信)
疑われてるのがロブスターなら、そもそも海の話であって、飲み水の処理とは経路が別なんじゃないかな。この件の議論、淡水のアオコと海産物の毒がごちゃ混ぜになってることが多い気がする。どっちを疑うかで、調べるべき場所も全然変わってくる。
11. 謎の名無しさん
この物質は1940年代から研究対象になっていて、最初はグアムの住民に多かった神経の病気で疑われた。その後もオーストラリアや北欧、カナダなどで神経疾患が集まっている地域が見つかるたび、名前が挙がってきた経緯がある。ただ、長く疑われてきたことと、原因だと確定したことはまったく別の話だ。
12. 謎の名無しさん
それなんだよな。「疑いがある」だけで地域の産業を止められないのも分かる。だからこそ、白黒つける検査をさっさとやったほうが全員の得になるはずなのに、なぜかそこで止まってる。安全なら安全で、堂々と言えばいいだけの話じゃないの。
13. 謎の名無しさん
そもそも、検査を認めないとされる根拠は何なんだろう。「やってはいけない」と書かれた文書が実際に存在するのか、それとも予算や手続きの話が「許可が下りない」と表現されているだけなのか。リンクをたどろうとしたけど、地域制限で読めない記事もあって、そこが確かめられない。
14. 謎の名無しさん(>>13への返信)
州側の言い分としては「そもそもこれらはひとつの集団発生ではなく、アルツハイマー病などの誤診だ」という立場らしい。だから追加の検査は必要ない、という結論になる。筋は通ってるように見えるけど、その前提が正しいかどうかを確かめる手段が塞がってるのが問題なんだと思う。
15. 謎の名無しさん
不自然に見えるのは同意する。ただ、外に出ている情報だけで「隠している」と断定するのも早い気がする。行政の判断って、悪意じゃなくて縦割りと責任回避で説明がつくことのほうが多い。そのうえで、説明が足りていないのは確かだ。
16. 謎の名無しさん
一番引っかかったのは、症例を一つずつ別の病名で説明し直していく再評価の話。患者側は「他のどの医師からもそんな診断を受けたことがない」と言っている。どちらが正しいかは外から判断できないけど、少なくとも、当事者が納得できる説明にはなっていない。
17. 謎の名無しさん
知り合いの家族が、病院を替えるたびに違う病名を言われる状態で1年以上たらい回しになった。原因が分からない病気のしんどさって、症状そのものより「誰も名前を付けてくれない」ことのほうにあったりする。今回の患者さんたちも、そこにいるんだと思う。
18. 謎の名無しさん(>>17への返信)
それに、診断名が付かないと支援も保険も動かないんだよね。制度は病名を前提に作られてるから、「分からない」という状態のまま何年も置かれると、生活のほうが先に壊れていく。原因究明の話とは別に、そこの手当ても要ると思う。
19. 謎の名無しさん
若い患者がいるという点が、自分にとっては一番の違和感だ。高齢の人ばかりなら「よくある病気の見立て違いが重なった」でまだ飲み込める。でも若い世代まで同じような症状で並んでいるなら、それはさすがに一度きちんと調べるべき理由になると思う。
20. 謎の名無しさん
ニューハンプシャーやバーモントで、湖の近くに神経の病気が多いという記事を読んだことがある。もし本当に環境の話なら、これはニューブランズウィックだけの問題じゃなくなる。同じ条件の場所は北米にいくらでもあるわけで。
21. 謎の名無しさん(>>20への返信)
気候が暖かくなるほど藻には都合がいい、というのが地味に効いてくる話だと思う。世界中で発生が増えているなら、同じ疑いは今後あちこちで出てくる。今回の件がどう決着するかは、その先の対応の前例にもなる。
22. 謎の名無しさん
オーストラリアの内陸でも似た話が出ている。飲み水に使っている水域と脳の病気を結び付ける指摘があって、当局は問題を認めていない、と地元では言われているらしい。水利権の仕組みが絡んでいて、話が単純な公衆衛生の問題で終わらないのも共通してる。
23. 謎の名無しさん(>>22への返信)
気持ちは分かるけど、世界中の似た話を全部ひとまとめにして「同じ原因」にするのは危ないと思う。症状が似て見えても、原因はばらばらであることのほうが多い。まとめて語ると、それぞれの地域で必要な調査がかえって進まなくなる。
24. 謎の名無しさん
この件で地元の人が怒っているのは、病気そのものだけじゃなくて、産業と行政の距離が近すぎるという前からの不信感が土台にあるからだと思う。それが正しいかどうかは別として、そういう空気がある場所で「調べません」と言えば、まず疑われる。
25. 謎の名無しさん
不信感は証拠にはならない、というのはその通り。ただ裏返すと、独立した第三者に検査を一度通すのが、その不信をいちばん早く消す方法でもある。それをやらないから憶測が育つ。今の状況は、誰にとっても得になっていない。
26. 謎の名無しさん(>>25への返信)
何かおかしいと言った瞬間に、宇宙人だのなんだのと同じ棚に置かれるのも困るんだよな。役所や企業が都合の悪い話をしばらく伏せる、くらいのことは普通に起きる。それを指摘するのと、荒唐無稽な話を信じるのは、まったく別の行為のはずなんだけど。
27. 謎の名無しさん
仮に伏せているのだとしても、結局は隠したほうが話が大きくなる。今こうして海外のメディアにまで書かれてる時点で、観光にも産業にも影響は出てるわけで。最初からきちんと調べて公表するのが、いちばん傷が浅い選択肢だったはずだ。
28. 謎の名無しさん(>>27への返信)
情報を出さないほど、憶測のほうが速く広がるからね。空白があると人は勝手に埋める。しかも先に耳に入った話のほうが、後から出てくる正確な説明よりずっと記憶に残る。行政がいちばん軽く見がちなのが、たぶんそこだと思う。
29. 謎の名無しさん
大西洋岸の州って、ふだんまったく話題にならないんだよ。地元のニュースでは散々やっていたのに、他の地域は「自分のところに来るまでは他人事」という空気だった。こういう形で全国区になるのは、住んでいた身としては複雑すぎる。
30. 謎の名無しさん(>>29への返信)
海外の新聞に書かれて初めて話が動く、という構図がいちばんきつい。地元の人が何年も言ってきたことが、外から言われるまで届かない。原因が何であれ、患者と家族が納得できる説明が出るところまでは行ってほしいと思う。
未解決の謎
この件が厄介なのは、対立している二つの説明が、どちらも「あり得る」形をしている点にある。ひとつは、何らかの環境要因が地域の人々に共通して働いているという見方。もうひとつは、既に知られている神経の病気が別々に診断され、それがたまたま同じ地域で目立って見えているだけ、という見方だ。前者を採れば大がかりな調査が要る。後者を採れば何もしなくていい。そして現時点では、どちらが正しいかを判定するための検査そのものが行われていないと報じられている。
報道されている手がかりは、いずれも決定打にならない。若い患者がいることは「見立て違いが重なっただけ」という説明を弱めるが、若年で神経の病気にかかること自体は起こりうる。介護していた人が続けて発症したという9件も、感染を思わせる一方で、同じ家で同じものを口にしていたと考えれば環境要因で説明がつく。どの材料も、単独では方向を決められない。
だからこそ、遺族が望んだ検査が行われていないという一点が重く見える。検査をすれば、少なくとも「その物質が脳にあったかどうか」は分かる。なかったならこの説は消え、あったなら次の問いに進める。どちらに転んでも前には進むはずのものが、止まっている。その理由が、慎重さなのか、手続きの壁なのか、それとも別の何かなのか——外からは分からないし、分からないものを断定する気もない。
その後の公式調査がどのような結論を出したのか、患者や遺族がいまどうしているのかは、この記事の情報源からは確認できない。分かっているのは、少なくともこの時点では、症状に名前が付かないまま暮らしている人たちがいたということだけだ。原因を言い当てることより先に必要なのは、その人たちが納得できる形で調べ、結果を公開することのほうだろう。答えが「よくある病気の見間違いでした」だったとしても、それは検証されてはじめて答えになる。


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