1974年6月、アメリカ・ニュージャージー州バーリントンに住む14歳の少女マーガレット・エレン・フォックスは、新聞のベビーシッター募集広告に応募した。電話口の男は「妻と二人で5歳の息子を見てくれる人を探している」と名乗り、自らを「ジョン・マーシャル」と呼んだ。6月24日、彼女はマウントホリー行きのバスに乗り、降車後まもなく姿を消す。二度と発見されることはなかった。そして7年後、国境を越えたカナダ・アルバータ州で、まるで同じ脚本をなぞったかのような手口が繰り返された——「妻と二人でベビーシッターを探している」。電話の男に呼び出された13歳の少女ケリー・クックの事件である。これは、ひとつの広告と一本の電話が二人の少女の運命を分けた、不気味な相似の物語だ。
事件の概要
🗓️ 発生日:1974年6月24日
🌫️ 場所:アメリカ ニュージャージー州バーリントン〜マウントホリー
👤 被害者:マーガレット・エレン・フォックス(当時14歳)
🔍 状況:新聞のベビーシッター募集広告に応募し、「ジョン・マーシャル」と名乗る男と面会を約束。マウントホリー行きのバスを降りた直後に消息を絶つ
🕯️ 発見/結末:遺体も遺留品も一切発見されず、51年が経った今も行方不明。FBIの誘拐事件ページに掲載され続けている
1974年当時、新聞の三行広告でベビーシッターを募集するのは、ごく当たり前の家庭の習慣だった。10代の少女が見知らぬ家庭に出向いて子守をすることに、誰も疑問を持たなかった時代である。マーガレットは小遣い稼ぎのつもりで広告に応募し、母親に「向こうに着いたら電話する」と告げて家を出た。だが、約束の電話は永遠にかかってこなかった。
そして1981年、カナダ・アルバータ州の人口わずか300人ほどの極小の町スタンダードで、よく似た事件が起きる。電話で「ベン・クリステンセン」と名乗る男が、引っ越してきたばかりだと告げてベビーシッターを依頼。13歳のケリー・クックを車で迎えに来た。それが生きた彼女を見た最後となり、2か月後に遠隔地で遺体が発見された。犯人は今も特定されていない。
判明している事実
広告に応募したのはマーガレット自身
失踪したマーガレットの側から、新聞の募集広告に応じて電話をかけたとされる。男は最初から特定の少女を狙ったのではなく、応募してきた誰かを待ち受ける形だった。男は「ジョン・マーシャル」と名乗り、妻と幼い息子の世話をしてほしいと依頼している。
電話番号は公衆電話だった
捜査で判明したのは、マーガレットが連絡を取った電話番号が、スーパーマーケットの中か近くに設置された公衆電話のものだったという点。彼女が約束の連絡を寄こさないため母親がその番号にかけ直したところ、別の女性が出て「ジョン・マーシャルなんて人はいない」と答えた。男はこの公衆電話のそばに張り付いて応募の電話を待っていた可能性が高い。
マーガレットは「繰り上がりの候補」だった
複数の資料によれば、最初に声をかけられた少女が都合つかず、マーガレットが二番手として依頼を受けた経緯があるとされる。後述するケリー・クック事件でも同じく「第一候補が断ったための補欠」だった点が一致しており、犯人が特定の少女ではなく「10代の少女なら誰でもよかった」可能性を示唆している※。
※ この「補欠だった」という共通点は、元のRedditスレッド投稿者が二つの事件を結びつけた最大の根拠であり、捜査当局が確定した同一犯の証拠ではない。
7年後にカナダで反復された手口
1981年のケリー・クック事件では、「ベン・クリステンセン」を名乗る男が電話で「妻とベビーシッターを探している」と依頼し、車で少女を迎えに来た。ケリーは殺害され、犯人は未特定のまま。捜査では「犯人は以前にも同種の犯行をしていた可能性」が指摘された。ニュージャージーとアルバータという地理的な隔たりにもかかわらず、手口の一致は今も人々を不安にさせている。
主な仮説
仮説1:二つの事件は同一犯による連続犯行
元スレッド投稿者が提示した説。「妻とベビーシッターを探す男」「偽名を名乗る」「補欠の少女が狙われた」という細部の一致から、同一人物が州や国境を越えて犯行を重ねたとする。投稿者は、複数州に被害者を出したテッド・バンディの前例を引き合いに「ニュージャージーに住みながらスタンダードに縁があった人物かもしれない」と推測している。ただし距離が大きすぎるとして懐疑的な見方も多い。
仮説2:模倣、あるいは単なる偶然の一致
当時、ベビーシッター募集は10代の少女を呼び出す最も手軽な口実であり、似た手口の犯行が各地で独立に起きていたとする説。1981年の犯人が1974年の事件を報道で知り、模倣した可能性もある。「同じ手口だから同じ犯人」とは限らず、悪意ある人間が同じ脆弱性に目をつけただけ、という見方は捜査関係者にも根強い。
仮説3:マーガレット事件の犯人は地元の人物
電話が特定の公衆電話から繰り返しかけられていたこと、スーパーマーケット周辺に張り付いていた形跡があることから、犯人は地元の地理に詳しい人物だったとする説。同名の「ジョン・マーシャル」がそのスーパーで働いていたが捜査で容疑を晴らされており、犯人は偶然耳にした名前を偽名に流用したと考えられている。
仮説4:手口だけが「伝染」した時代の産物
同一犯でも直接の模倣でもなく、「新聞広告で少女を釣る」という手口そのものが、その時代の犯罪者の間に広く知られた常套手段だったとする説。ヒッチハイク殺人が同時多発したのと同じく、インターネットのない時代に被害者へ接触する効率的な方法が、複数の犯人によって別々に選ばれた——という構造的な見方である。
海外の反応
1. 謎の名無しさん
正直、二つの事件がつながっているとは思わない。当時は、信じやすい10代の少女を自宅に呼び出す、あるいは少なくとも会う約束を取り付けるのに、これ以上ないくらい簡単な手口だっただけだ。1981年の犯人が1974年の事件を聞きかじって模倣した可能性だってある。
2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
同意する。ただ「当時だけ」の話じゃないと思う。うちの娘は今年、ベビーシッターのマッチングサイトで気味の悪い依頼を何件も受けた。2010年代に私がシッターの面接をしたときも、10代の女の子が一人で来ていた。手口は形を変えてずっと続いているんだ。
3. 謎の名無しさん(>>2への返信)
私も大学のルームメイトに付き添ってもらって、シングルファーザーのシッター面接に行ったことがある。まさにこの記事の不安が理由だった。2007年か2008年頃の話。一人で行くなんて怖くてできなかった。
4. 謎の名無しさん(>>2への返信)
もし自分が女性なら、依頼の時点で「面接は保護者か信頼できる人の同席のもとで行う」「自分の連絡先も先に明かす」と男の側から言ってこないシッター依頼は、一切検討しない。そうした用心に腹を立てる男は、危険な人間か、現実が見えていない人間のどちらかだ。
5. 謎の名無しさん
不動産業者が内見の現場で狙われるのと似ている。ネット広告で募集をかけた人間が標的にされるのとも構造は同じだ。「同一犯」と納得させるには、二つの事件にもっと特殊で具体的な共通要素が必要だと思う。手口が似ているだけでは弱い。
6. 謎の名無しさん
非常にいい指摘が二つある。それに、昔の人は今より全般的にずっと他人を信じていたよ。現代の感覚だと、会ったこともない男のところに10代の娘をシッターに行かせるなんて信じられないけど、当時はそれが普通に通用する手口だったんだと思う。
7. 謎の名無しさん(>>6への返信)
「より信じやすかった」というより、悪いニュースが今ほど遠くまで速く伝わらなかったからだと思う。昔はよそで起きた恐ろしい事件を、今のように逐一知ることがなかった。人々はただ「知らなかった」んだ。情報の届く速さの違いが大きい。
8. 謎の名無しさん
これは捕食者が若い女の子を狙うための、お手軽な入り口でしかない。1974年のケースではマーガレットの側から広告に応募したわけだから、警察が彼女がかけた電話番号を調べたのかが気になる。男は住所を伝えたのだろうか。それとも会う場所だけ指定したのか。
9. 謎の名無しさん(>>8への返信)
住所は伝えられなかったと思う。ただ電話番号はスーパーの中か近くの公衆電話まで辿られている。マーガレットが約束どおり家族に連絡しなかったので母親がその番号にかけたら、女性が出て「ジョン・マーシャルなんていない」と答えた。何度かかけ直して、ようやくそれが公衆電話だと気づいたらしい。
10. 謎の名無しさん(>>9への返信)
ということは、この男はかなりの時間その公衆電話のそばに張り付いていたことになる。警察は周辺の人に「電話の周りをうろついていた人物を見なかったか」と聞き込みをしたんだろうか。スーパーの客や従業員なら、不審な男に気づいた人がいてもおかしくない。
11. 謎の名無しさん
1970年代は自宅に電話がない家も珍しくなかった。公衆電話のそばで待つのはわりと普通の光景だったんだ。電話機に番号が書いてあったから、そこで着信を受けることもできた。だから「公衆電話に張り付く男」が必ずしも異様に見えたとは限らない。時代背景を踏まえないと判断を誤る。
12. 謎の名無しさん
ぼんやりした記憶だけど、マーガレットに電話をかけた男はそのスーパーの従業員だったのでは、という推測を以前どこかで読んだ覚えがある。公衆電話のすぐそばに常にいられる人間という条件に、確かに当てはまる。
13. 謎の名無しさん(>>12への返信)
そのスーパーには実際に「ジョン・マーシャル」という名前の従業員がいたらしい。でも彼は捜査で容疑を晴らされている。犯人はそこで耳にした名前を、ただ偽名として拝借しただけだろうと考えられている。本物のマーシャル氏にとっては災難な話だ。
14. 謎の名無しさん
辻褄は合う。マーガレットは広告に応募した側だから、まず彼女が電話をかけたはず。当時はメールなんてないからね。だとすると、その電話のそばに長く居られる人物——うろついていた部外者か、あるいはそこで働いていた人間か。前者ならスーパーの誰かが気づいたはずで、消去法で後者の線が濃くなる。
15. 謎の名無しさん
意地の悪い見方をすると、1974年に14歳の少女が消えても、当時の警察は「家出だろう、捜査の必要なし」で片付けた可能性がある。本格的な捜索が始まる前に、初動の数日が無為に過ぎてしまったのではないか。その遅れが手がかりを永遠に失わせたのかもしれない。
16. 謎の名無しさん
1963年にバージニア州ノーフォークで、14歳の少女が似たような目に遭っている。彼女はコインランドリーにベビーシッターの貼り紙を出して、それで犯人に騙された。その後うちの10代だった叔母が同じランドリーに求人の貼り紙を出そうとして、祖父母が血相を変えて止めたそうだ。手口は思っているより昔から各地にある。
17. 謎の名無しさん
どんな形で二つが「不気味に似ている」と感じるのか、私には正直よく分からない。新聞であれモデル募集であれ、ネットの掲示板であれシッター募集サイトであれ、メディアは昔から女性や少女を正当に雇うためにも、傷つけるためにも使われてきた。手口が似ているのは、それが有効だからにすぎない。
18. 謎の名無しさん
まず事実確認として、クリステンセンという姓はアルバータでは非常にありふれた名前だ(今もそうだ)。1900年から1945年にかけてデンマークからアルゼンチン、アメリカ、カナダへ大規模な移民があって、アルバータは特にデンマーク系移民が多かった。だから「ありふれた地元の姓を偽名に使った」のは、土地勘のある人物を示すとも言えるし、逆に下調べした部外者とも言える。
19. 謎の名無しさん(>>18への返信)
その補足は重要だね。私はケリー・クック事件をこれまで知らなかった。手口は確かにそっくりだけど、70年代と80年代は今とは別の時代だった。親が子どもの行動を今ほど把握していなかったし、10代前半の少女がシッターをやるのも全く普通のことだった。当時の犯罪者なら、これを最有力の手口に選ぶのは自然だ。
20. 謎の名無しさん
残念ながら、一人の捕食者がこの方法を思いついたなら、別の捕食者も同じ発想に至っていただろう。1974年にイギリスで起きたジョセフィン・バックシャル事件もそうだ。彼女はパートの仕事を探す広告を出し、興味を持った人物から電話を受けて面会を約束したが、生きて再び姿を見せることはなかった。彼女の事件も未解決のまま。アメリカの事件と結びつく可能性はまずないが、手口は世界中で反復されている。
21. 謎の名無しさん
たとえ二つがつながっていなくても、こうして時間をかけて事件の相似点を整理して共有してくれたことに感謝したい。私はケリー・クック事件を知らなかった。忘れられかけた事件に光を当てるのは、それ自体に意味がある。家族はずっと答えを待っているのだから。
22. 謎の名無しさん
二つの事件は国境で隔てられているうえ、何千キロも離れている。一方は北米最大級の人口密集地帯の近くで、もう一方は他から遠く離れた僻地の小さな町だ。手口が似ているのは間違いないが、同一犯である可能性は文字どおりゼロに近いと思う。似た発想に別々の悪人が辿り着いただけだ。
23. 謎の名無しさん(>>22への返信)
気になるのは、両方の捜査で「犯人は以前にも同じことをしていた可能性が高い」と指摘されている点なんだ。あなたの言う通り同一犯ではないとしても、それぞれの犯人が他にも被害者を出していたなら、表に出ていない関連事件がまだ眠っているのかもしれない。そう考えると背筋が寒くなる。
24. 謎の名無しさん
スタンダードの人口は353人だったと記録にある。これだけ小さな町なら、ケリーの犯人は彼女と第一候補だった少女の両方を知っていたという可能性はないだろうか。誰が誰の家でシッターを探しているか、町中が把握しているような規模だ。よそ者の犯行と決めつけるのは早い気がする。
25. 謎の名無しさん(>>24への返信)
記憶が正しければ、男はケリーの家の前まで車で来て、家族の目の前で彼女を乗せている。電話で偽名を使った人物が、顔見知りの相手にそんな危険を冒すとは思えない。彼女の存在を知ってはいても、互いに面識があったとは考えにくい。地元の人間ならその場で正体がばれていたはずだ。
26. 謎の名無しさん(>>25への返信)
ただ、家族は車をはっきり見ただけで、男の顔まではよく見ていなかったとも言われている。それでも、もし地元の人間なら、親が車に近づいて話しかけてくるリスクや、ケリーが顔を見て「ベン・クリステンセン」じゃないと気づくリスクを冒すことになる。やはり部外者の可能性が高いと思う。
27. 謎の名無しさん
皮肉な話だけど、もし二つの事件が関連していてくれたほうが、まだ救いがある。なぜなら、それは「こんなことをする男はそう多くない」という意味になるから。でも現実はおそらく逆だ。同じような手口の男があまりに多いせいで、まったく無関係なのに偶然そっくりな事件が、定期的に生まれてしまうんだ。
28. 謎の名無しさん
パラレルの整理がとても丁寧で、「補欠のベビーシッター」という細部は確かに不気味だ。これは犯人の動機が特定の標的ではなく機会主義的だったことを示唆していて、似た事件で記録された捕食者の行動パターンと一致する。両事件の捜査がFBIのViCAP※のような横断データベースに登録されたかどうかが気になる。州や国境をまたぐ照合こそ、まさにそうした仕組みが設計された目的だからだ。
※ ViCAP(暴力犯罪逮捕プログラム):FBIが運営する、複数の管轄をまたぐ凶悪犯罪の手口や被害者像を照合・分析するための全米データベース。
29. 謎の名無しさん
昔は新聞に、フランスやイギリスへオーペア(住み込みの子守)として渡る募集広告が載っていた。子どもだった私でさえ、なんとなく人身売買じみていて怪しいと感じていた。実際に問題が起きたかは別として、ネットがない時代に何かを募集するなら新聞しかなく、仲介業者ですら広告は新聞に出していた。だから募集広告と少女が結びつく構図は、当時いくらでもあったんだ。
30. 謎の名無しさん
似ているが、つながってはいない——私の結論はこれに尽きる。それでも、二人の少女が「ありふれた一本の電話」をきっかけに消えたという事実は重い。手口が陳腐であればあるほど、それが今も形を変えて生き続けているという事実が恐ろしい。マーガレットとケリー、二人がいつか名前を取り戻せる日が来てほしい。
未解決の謎
マーガレット・エレン・フォックスの失踪は、51年が過ぎた今もなお何ひとつ確かな答えを残していない。遺体も、遺留品も、犯人につながる物証も発見されていない。残されているのは、スーパーマーケットのそばの公衆電話、「ジョン・マーシャル」という拝借された偽名、そして彼女が二番手の候補だったという不穏な一致だけである。
1981年のケリー・クック事件との相似が本物の関連なのか、それとも時代が生んだ偶然なのかは、誰にも断定できない。「妻とベビーシッターを探す男」「偽名を名乗る」「補欠の少女が狙われた」という細部の一致は確かに不気味だが、ニュージャージーとアルバータを隔てる距離はあまりに大きい。同一犯説を信じる者も、模倣や偶然と見る者も、決め手を欠いたまま半世紀が過ぎた。
確かなのはただ一つ——新聞の片隅に載った一行の募集広告が、二人の少女の運命を奪ったという事実だ。手口があまりにありふれているからこそ、そして犯人が「特定の誰か」ではなく「10代の少女なら誰でもよかった」かもしれないからこそ、この事件は今も人を不安にさせる。マーガレットがどこで失われたのか、彼女が二度と母親に電話をかけられなかったあの日に何が起きたのか。その答えは、いまも分からないままだ。

