2023年のクリスマスごろから、米カリフォルニア州ハンボルト郡マイヤーズ・フラットに住む39歳の女性ゾーイ・ペンロッドの様子が「スイッチを切り替えたように」変わった——出産から5か月、彼女は突然「自分や友人の声をまねた声」が聞こえると訴え、食事を断ち、眠らなくなった。婚約者デヴィッド・ボイエットは精神科に駆け込んだが、入院からわずか2日で病院は「少し休めば大丈夫」と彼女を退院させてしまう。
そして2023年12月31日朝8時30分、聖水を家中に振りまいていたゾーイは、RV※の前から忽然と姿を消した。財布も携帯も置き去り、薄手のバスローブ姿のまま。背景には多額の遺産相続をめぐる泥沼の親族争い、機能不全のメンタルヘルス制度、そして同居人たちが語る奇妙な食い違いが折り重なる。彼女は今、どこにいるのか。
※ RV:レクリエーショナル・ビークル。米国でよく使われる居住可能なキャンピングカーで、固定の家を持たずRVや小型トレーラーを連ねた「トレーラーパーク」のような土地で暮らす人も多い。ゾーイたちが住んでいたのもRVと小型住宅が混在する敷地だった。
事件の概要
🗓️ 失踪日:2023年12月31日 午前8時30分ごろ
🌫️ 場所:米カリフォルニア州ハンボルト郡マイヤーズ・フラット
👤 失踪者:ゾーイ・E・ペンロッド(当時39歳、赤毛・緑の瞳、身長165cm)
🔍 状況:産後精神病※の症状が悪化し、婚約者と乳児を残して自宅敷地のRV前から姿を消す。財布・携帯・現金はすべて置いたまま
🕯️ その後:当日午前8時30分直前、自宅近くの「ドライブスルー・ツリー」をベージュのバスローブ姿で歩く女性が監視カメラに記録される。以後、目撃情報は途絶え、現在も行方不明
※ 産後精神病(Postpartum Psychosis, PPP):出産後の女性1,000人に1〜2人の割合で発症するとされる重篤な精神症状で、幻覚・妄想・極度の不眠などを伴う。通常は産後数週間以内に急性で発症し、母子双方にとって命に関わる救急的な精神科対応が必要とされる。ゾーイの場合は出産から5か月後の発症で、PPPかどうか正式に診断されたかどうかは記事ごとに記述が食い違っている。
ゾーイが暮らしていたのは、RVと小型住宅が複数並ぶ私有地で、5人の同居人と婚約者・乳児が一緒に生活していた。婚約者デヴィッドとは2024年5月に結婚予定、二人の間には生後5か月の男児がいた。一方で、亡き祖母から引き継がれるはずだった住宅をめぐり、養母カレンや姉ジェシーと長期間の遺産訴訟が続いていた——カレンは「全財産を使ってでもゾーイを遺言から外す」と書いた手紙を失踪直前に送りつけてきたという。
判明している事実
クリスマスから症状が急変
婚約者デヴィッドによれば、ゾーイは2023年12月のクリスマスごろを境に「自分や友人をまねた声が聞こえる」「食べ物に毒が盛られている」と訴えるようになった。同月20日にはマイヤーズ・フラット出口を逆走するように歩いている姿を地元住民が目撃し、警察がガーバービルのSoHum Healthへ搬送した
入院わずか2日で退院
担当医はデヴィッドに「長期療養施設が見つかるまで入院させる」と電話で告げていたが、2日後、別郡のメンタルヘルス担当者から「もう問題ない、退院させる」と連絡が入った。同居人のジャッキーは「ソラジン※やミルタザピンを9発打たれた」と語り、退院に強く反対していた
※ ソラジン(Thorazine、一般名クロルプロマジン):1950年代から使われている古典的な抗精神病薬で、強い鎮静作用がある。日本では「ウインタミン」「コントミン」の商品名で知られる。現代の精神科救急では第一選択にはなりにくい薬で、繰り返し注射されたという証言が事実なら、当時のゾーイがかなり激しい急性症状を呈していた可能性を示唆する。
12月31日朝の不可解な行動
失踪当日朝、ゾーイは寝ているデヴィッドに聖水を振りかけ、戸棚や椅子、玄関に十字を描いていた。午前8時30分、敷地のRV前に出ていた彼女に「中に戻ろう」と声をかけた直後、子どもの泣き声で家に入った数分の間に姿を消した。最後の言葉は「愛してる…祝福を」だったという
監視カメラに映る後ろ姿
午前8時30分直前、自宅から数百フィート北の「ドライブスルー・ツリー」付近をベージュのバスローブと緑色の靴で歩く女性の姿が監視カメラに記録された。地元保安官事務所はこれを「ゾーイ本人と確認した」と発表したが、画像自体は不鮮明で、捜索ボランティアは「明るい色のハウスコートに緑のスリッパ」と説明を受けていた
通報の不可解な遅れと遺産凍結
デヴィッドが警察に正式に行方不明届を出したのは翌2024年1月1日午前8時51分——失踪から24時間以上が経過していた。「24時間ルール」を理由に通報を遅らせたと説明したが、ハンボルト郡保安官事務所は「そのような決まりはない」と否定。さらにゾーイ消失後、姉ジェシーが信託の送金口座を停止し、デヴィッドは家賃が払えず息子とアリゾナ州へ転居している
主な仮説
仮説1:産後精神病の急性発作中に山林で行き倒れた
もっとも穏当で、警察や地元紙の初期報道もこの線に沿っている。マイヤーズ・フラットは標高の低い針葉樹林帯で、12月末は夜間に氷点下まで下がる。バスローブ姿で歩き出した女性が101号線を北上したとして、数時間以内に低体温症で森のどこかに倒れた可能性は十分にある。ただし広域捜索でも遺留品ひとつ出ていない点は、この仮説の最大の弱点でもある。
仮説2:遺産トラブルがらみで第三者が関与した
養母カレンが「全財産を使ってでも遺言から外す」と書いた手紙、姉ジェシーによる信託凍結、デヴィッドが「彼女のスマホから数百万ドルの相続にアクセスできる」と公言していたという発言——金の流れに強い圧力がかかっていたのは間違いない。同居人ジャッキーが消失直後に転居し、地元紙のコメント欄でデヴィッドを名指しで疑う書き込みが続いた事実も、この仮説を捨てきれない理由になっている。
仮説3:意図的な離脱(イニシエーション目的の出奔)
聖水・十字を描く儀礼的な行動、「愛してる…祝福を」という別れの言葉、声に導かれて外へ出ていく頻度の上昇——重い宗教的・幻覚的体験のさなかに、本人なりの確信を持って「行くべき場所」へ歩き出した可能性も指摘されている。財布も携帯も置いていったのは、彼女の主観では「もう必要ない」と感じていたから、という解釈だ。
仮説4:診断は産後精神病ではなく、別の精神疾患の発症だった
出産から5か月経っての急性発症は、典型的なPPPの時期(産後6週以内)から外れている。Redditの議論では「これは統合失調症の初発エピソードでは」「PPPは家族や本人の自称で、正式診断は確認されていない」という指摘が多く、誤診のまま不適切な投薬と早期退院が重なった結果という見方も根強い。
海外の反応
1. 謎の名無しさん
産後精神病がここまで軽く見られているのが本当にきつい。母親と赤ん坊の両方の命に関わる病気なのに、ネットでは「自分が何をやってるか分かってたはず」みたいなコメントばかり。デヴィッドが強い立場にいて、行政も病院もみんな彼女を見捨てた。トレーラーパーク住まいだから真剣に扱われなかったんじゃないかとさえ思う。
2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
残念ながら精神疾患全般が、共感より敵意を引き寄せやすい。同情すらしてもらえないケースが多すぎる。
3. 謎の名無しさん(>>2への返信)
北欧の制度はだいぶ違う。PPPの女性が殺人で起訴されるなんてことは、まずあり得ない。アメリカは個別の事件にいちいち怒りで反応しすぎだと思う。
4. 謎の名無しさん
医療現場で「助けて」と言ってもまともに扱われない経験、6人目と7人目の出産後に自分も味わった。2か月で十数回ERに通って「入院させてください」と泣きながら頼んだのに、毎回家に帰された。「助けを求めろ」と社会は言うけど、求めると邪魔者扱いされる。これが現実。
5. 謎の名無しさん(>>4への返信)
そういう経験、ほんとに多い。私もまさに同じことを言われた。ナースに鼻で笑われて、「で、誰があなたの赤ちゃん見るの?」と嫌味を言われたときの気持ちは一生忘れない。あの瞬間に橋から飛び降りていてもおかしくなかった。
6. 謎の名無しさん
PPPって基本は産後6週以内に急性発症するもので、5か月後に「スイッチを切り替えたように」始まるのは時期がずれている。これって統合失調症の初発エピソードでは?診断は誰がいつ確定したのか、そこからしてあやふや。
7. 謎の名無しさん(>>6への返信)
初発としても遅めだけど、不可能ではない。前から微妙な前駆症状があって、一気に表面化した可能性はある。
8. 謎の名無しさん
監視カメラの映像こそが、この事件で唯一の硬い手がかりだと思う。他の話は全部、怖がっている人や怒っている人のフィルターを通して語られているけど、保安官事務所が「8時30分直前に北へ歩くゾーイ本人と確認した」と発表している以上、ここを起点に考えるしかない。徒歩で到達できる範囲のどこに何があるのか、地元の人の地理感覚で詰めていきたい。
9. 謎の名無しさん
正直、当局以外でこの事件のまともな証言者がひとりもいない。トレーラーパーク住まいの登場人物全員が薬物まわりで何かしら抱えていそうで、殺人なのか、徘徊での事故なのか、自殺なのか、それともUFO拐かしなのか、彼らからの情報だけでは何も判断できない。
10. 謎の名無しさん(>>9への返信)
記事を読む限り「ジャンキーのトレーラーパーク」というよりは「ヒッピーのコミューン」みたいな雰囲気はあるけど、薬物が一切絡んでいないとも言い切れない。
11. 謎の名無しさん
養母カレンが「全財産を使ってでも遺言から外す」って手紙を送ってきた直後に失踪、姉ジェシーが信託を凍結、デヴィッドは「スマホから数百万ドルにアクセスできる」と公言。これだけ金の話が絡んでいて、事件性が薄いって判断するの無理がある。
12. 謎の名無しさん(>>11への返信)
でも誰がやったとして、ゾーイのスマホを置いたままにする意味は?身柄を消して相続権だけ動かしたいなら、むしろ携帯は持たせるのが自然じゃない?このあたりの不自然さで犯罪説も弱くなる。
13. 謎の名無しさん
24時間ルールってアメリカの古い都市伝説で、保安官事務所もはっきり否定してる。にもかかわらず婚約者がそれを言い訳に通報を遅らせたっていうのが、いちばん引っかかる部分。
14. 謎の名無しさん
ジャッキーの証言だと、デヴィッドは元日になっても本気で捜していなかったらしい。「大晦日の夜には帰ってくる」と繰り返していたって。当事者の婚約者がそこまで落ち着いていられる状況じゃないだろうに。
15. 謎の名無しさん(>>14への返信)
本人が解離してただけ、という可能性もある。乳児を抱えて精神崩壊寸前の婚約者の世話を続けて、頭が回らなくなっていたのかも。ただ「明日には戻る」と確信できる根拠が見当たらないのは確か。
16. 謎の名無しさん
病院は「ハンボルト郡メンタルヘルスが保護命令を解いた以上、本人の意思に反して留めることはできない」と説明したらしい。要は退院判断は病院じゃなくて郡の判断。米国のこの郡レベルのメンタルヘルス体制、本当に層が薄い。
17. 謎の名無しさん
薬リストだけ渡されて投薬なしで自宅に戻された、っていうのが信じられない。9発鎮静剤を打たれた人を、薬なしで通常生活に戻すの、リバウンドが必ず起きる設計じゃない?
18. 謎の名無しさん(>>17への返信)
急に抗精神病薬が切れて、しかも母乳をやめたタイミングのホルモン変動が重なれば、症状が悪化するのはほぼ確実。退院させた人間は何を考えていたのか。
19. 謎の名無しさん
リング・カメラ※が家の中と外、敷地の門にもあったのに、ジャーナリストが映像どころか機器の存在すら確認できなかったって部分、ものすごく不自然。誰かが意図的に消したと考えるのが普通では。
※ リング・カメラ(Ring camera):Amazon傘下のRing社が販売している家庭向け監視カメラ・ドアベルカメラの総称。映像はクラウドに保存され、スマホアプリから確認できる。米国の郊外住宅では極めて一般的に普及していて、警察が捜査時にRingの映像提供を要請するケースも非常に多い。
20. 謎の名無しさん
PPP以前に、彼女の前2人の子どもは別の養育者に預けられていたって書いてある。母親としての歴史にも何かしらの脆さがあったのは確かで、産後うつや精神疾患の既往が積み重なっていた可能性も無視できない。
21. 謎の名無しさん
チャーリープロジェクト※のページはあるのにNamUsには登録がない、っていうのも気になる。なんで身元不明者データベースに正式登録されていないのか。家族側の動きが鈍いのか、行政の手落ちなのか。
※ チャーリープロジェクト(The Charley Project):米国の長期失踪事件約15,000件を個人運営でまとめている非営利アーカイブサイト。NamUs(行方不明者・身元不明遺体の連邦データベース)と並んで、米国の失踪事件追跡で最も参照されるソースのひとつ。
22. 謎の名無しさん(>>21への返信)
NamUs登録は基本的に家族または捜査当局が申請するんだけど、家族間で訴訟中だと「誰が代表として申請するか」で揉めて止まることがある。今回もそのパターンかも。
23. 謎の名無しさん
ゾーイが退院した同じ日に、敷地内の男性住人のところに、リスク・ドライビング容疑で逮捕されていた女性ジェリ・カルデリが釈放されて戻ってきた、っていう一文がさらっと混じってる。ジャッキーがわざわざ言及している以上、何か関連を疑っているとしか読めない。
24. 謎の名無しさん
地元紙の記事のコメント欄、現地の知り合いっぽい人たちが入り乱れて、ジャッキーもデヴィッドも姉も養母も全方位で疑われていて読みづらいレベル。みんな何かを知っていて、みんなが互いに敵対している。健全な事件解決の構造じゃない。
25. 謎の名無しさん(>>24への返信)
こういう「全員が互いに告発してる」状況って、外から見ると真相にいちばん遠く見える。実は内側の誰かは答えを知っているのに、絡まりすぎていて表に出てこないパターン。
26. 謎の名無しさん
このエリア、地元では知られたヒッピー系コミュニティの密集地で、警察との関係も決して良好ではない。だから保安官事務所が「敷地は何度も訪れた」と言っても、どこまで本気で捜索したかは正直怪しいと思う。
27. 謎の名無しさん
監視カメラに映った時点で彼女は北上していた。徒歩でその先にあるのは、深い森と曲がりくねった101号線。乗用車がスピードを出すエリアでもあるから、ヒット&ランの可能性も真剣に検討すべきだと思う。
28. 謎の名無しさん
うちの地元で起きてる事件。悪い予感しかしない。あの周辺の森は、入ったら出てこられない場所がいくつもある。
29. 謎の名無しさん(>>28への返信)
ハンボルト郡って大麻栽培地帯としても有名で、私有地の森に勝手に踏み込めない事情もある。捜索の手が届かないエリアが現実に存在するのが、この地域のもうひとつの闇。
30. 謎の名無しさん
ゾーイは今42歳になっているはず。生きているなら名乗り出てほしい。生きていないなら、せめて遺品の一つでも見つかってほしい。家族や同居人の主張が食い違っていても、彼女自身が「失敗した制度の被害者」であることだけは間違いないんだから。
未解決の謎
ゾーイ・ペンロッドの失踪は、起きた瞬間からひとつの方向に絞り込めない事件だった。産後精神病による徘徊と低体温死という、もっとも痛ましいが「ありふれた」結末を想定するなら、広範囲の山林捜索で何ひとつ遺留品が出ていない事実が説明しきれない。一方で遺産トラブルがらみの第三者犯行を想定するなら、本人のスマホや財布が現場にそのまま残されていた点、保安官事務所が監視カメラ映像で「本人が単独で歩く姿」を確認している点と整合しにくい。
さらに事件を分かりにくくしているのは、関係者全員の証言が互いに食い違っていることだ。「24時間経たないと通報できない」という存在しないルールを根拠に届け出を遅らせた婚約者、退院翌日には完全に薬を切られていた本人、リング・カメラの映像が忽然と消えた敷地、そして失踪と同時に凍結された信託資金——どの一点を取っても「ただの徘徊事件」では片付かない不自然さがある。
そして最大の謎は、彼女がそもそも「産後精神病」だったのかどうかすら確定していないことだ。出産から5か月後に「スイッチを切り替えたように」発症した症状は、PPPの典型像から外れている。誤診と早期退院が重なった結果、本来なら入院隔離が必要だった急性精神病の女性が、真冬の北カリフォルニアの森にバスローブ一枚で歩き出してしまったのだとすれば、これは個人の失踪事件ではなく、米国の郡レベルのメンタルヘルス制度が抱える構造的失敗の象徴でもある。彼女が今どこにいるのかは依然として不明だが、「誰が彼女を見捨てたか」の答えは、すでにこの事件の細部のあちこちに散らばっている。
出典:r/UnresolvedMysteries 元スレ / The Charley Project: Zoe E. Penrod / kymkemp.com 2024年12月30日付記事

