カリフォルニア州オーバーン※。シエラネバダ山脈の麓に広がる人口およそ1万3000人の小さな町を、12年もの間、奇妙な死が静かに覆い続けた。2009年から2021年にかけて、町を貫く運河※からは少なくとも7体の遺体が引き上げられ、線路上では4人が列車に撥ねられて亡くなっている。検視局は1件を除きすべて事故死または自殺と結論づけた。だが遺族や友人たちは納得していない。彼らはこう疑い続けている——「この町に、連続殺人犯がいたのではないか」と。
※ オーバーン(Auburn, CA):カリフォルニア州都サクラメントから東に約48km、シエラネバダ山脈の西側に位置する旧ゴールドラッシュ時代の小都市。アムトラックとユニオン・パシフィック鉄道の貨物線が市街地を走り、PG&E社が管理する複数の灌漑運河が町中を流れる。
※ 運河(canal):ここでは大手電力会社PG&Eが水力発電と灌漑用に運用する人工水路を指す。幅数メートル、深さ1〜2メートル、流速は意外に速く、コンクリート壁が高くて一度落ちると自力で這い上がりにくい構造。後の対策で有刺鉄線フェンスが設置された。
事件の概要
🗓️ 発生期間:2009年1月〜2021年8月(12年間)
🌫️ 場所:米カリフォルニア州プレイサー郡オーバーン市およびその近郊(運河沿い・線路沿い)
👤 被害者:判明分10名(21〜61歳)。運河で7名、線路上で4名(重複含む。生存例1名)
🔍 状況:運河での溺死7件と列車衝突4件が地理的・時期的に集中。複数遺体に頭部外傷・爪の汚れ・打撲痕など第三者の関与を疑わせる所見
🕯️ 結末:2021年のジェームズ・ロドリゲス事件のみ「殺人」と認定、ほかは「事故」「自殺」処理。遺族は再捜査を求め続けている
事の発端は2009年1月。地元住民のケニー・ミネロが運河に転落し、間一髪で生存。彼は救助隊にこう告げた——「誰かに突き落とされた。顔は見えなかった」。それから2年足らずの間に5体の遺体が同じ運河から上がる。PG&Eは2010年、運河沿いに有刺鉄線付きフェンスを設置した。だがそれでも死は止まらなかった。さらに、線路上で奇妙な死に方をする者まで現れはじめる。
判明している事実
運河7名・線路4名、12年で計10〜11件
2009〜2010年の23か月間に運河で集中して6名が亡くなり、半径800メートル以内に犠牲者が固まっていた。検視に立ち会った法医学者はKCRA局の取材に対し「個々の死だけを見れば必ずしも他殺の所見ではないが、これだけ集中するのは異常で、殺人事件として捜査すべき水準」と述べている。
複数遺体に頭部外傷と爪の汚れ
2009年1月に運河で発見されたデイヴィッド・ミラー(53)は、死亡当日「誰かに追われている」と工事作業員に訴えていた。検視では頭部に鈍器による外傷、爪の間に大量の土。シャツと片方の靴が消えていた。2014年7月4日に列車に撥ねられたダナ・バス(36)は、頭部外傷・爪の土に加え、口の中に下着が押し込まれていた。
線路上で「動かない」状態だった被害者
2010年5月に列車事故死したローウェル・グレノン(30)は、機関車の前方カメラに「線路上で微動だにせず横たわっていた」姿が記録されていた。傍らには愛犬ボスコの首だけが落ちていたという。グレノンは数日前に30歳の誕生日を祝い、家族には「新しいアパートに引っ越すのが楽しみだ」と話していた。
「目撃証言」と「直前のトラブル」
ホームレスのブラッドフォード・アシュクラフト(61)が運河で発見される直前、夜間暗視双眼鏡で散歩していた住民が「緑の長袖シャツの男が、警察官風の3人組に絡まれている」のを目撃。大きな水音と車の急発進音を聞いた。アシュクラフトは緑の長袖シャツを着て発見された。バス、ロドリゲスら他の被害者も死亡前日に「男と激しく口論していた」という証言が残る。
2021年案件のみ「殺人」確定
2021年8月7日、オーバーンの東約24kmのコルファックスの運河でジェームズ・パスクアル・ロドリゲス(30)の遺体が発見された。両足を縛られ、頭部に鈍器による外傷。これは正式に殺人事件と認定され、現在も捜査が継続中。だが他の事件との関連性は公式には言及されていない。
主な仮説
仮説1:単独または複数の連続殺人犯による犯行
遺族・友人および地元の私立探偵が長く主張してきた説。運河の集中時期(2009〜2010年)に犯行を繰り返し、フェンス設置後は手口を線路に切り替えた、あるいは別人物が同様の手口を踏襲した、というシナリオ。ミネロの「突き落とされた」という生存証言、アシュクラフトの目撃情報、複数遺体に共通する頭部外傷と爪の土がこの仮説を後押しする。一方で、犯人像(動機・対象選定の規則性)がはっきりしないという弱点もある。
仮説2:地下経済(薬物・違法栽培・ホームレス間トラブル)の暗部
被害者の多くがホームレスや経済的弱者だったことに注目する説。オーバーン周辺は大麻違法栽培やギャングの活動が報告されており、運河水を不正取水するケースもあるという。「縄張りを荒らした」「借金を抱えた」末のリンチが、事故・自殺として処理されてしまった——という見方。地元事情に詳しい住民からは「外部の派手な犯人」より「内輪のトラブルの隠蔽」のほうが説明しやすいという声もある。
仮説3:複合説——一部は事故、一部は別個の暴行事件
Reddit上で最も支持された折衷案。「全部を一人の連続殺人犯で説明するのは無理筋だが、全部を事故で片付けるのも乱暴」という立場。本物の事故、ホームレスへの単発的な暴行、別件の傷害致死が線路や運河に投棄されて事故扱いされたケース——これらが12年の間に複数交錯した、という見方。とくに線路死については「撥ねられる前にすでに昏倒していた」可能性を示唆する所見が多く、別件暴行後に「証拠隠滅のために線路に放置された」のではないかと疑う声が強い。
仮説4:偶発的な集中(パレイドリア説)
「スマイリーフェイス・キラー」※や英マンチェスターの「マンチェスター・プッシャー」と同じく、本来は散発的な事故・自殺の集積を後付けでパターン化しているだけ、という懐疑派の主張。米国では年間800〜1000人が列車関連の事故で亡くなっており、オーバーンの数字も統計の範囲内、と。ただしこの説では「同じ町の同じ運河で23か月に6人」「複数遺体の共通所見」までは説明しきれず、議論は平行線のままだ。
※ スマイリーフェイス・キラー説:米国中西部〜北東部で2000年代以降、若い男性が川や運河で水死する事案が連続したことから、元刑事らが「連続殺人犯(複数)が関与している」と提唱した仮説。FBIや多くの専門家は否定的だが、遺族や民間捜査家には支持者が多い。
海外の反応
1. 謎の名無しさん
「連続殺人犯」と片付けるのは綺麗すぎるし、「全部ただの事故が重なっただけ」もまた綺麗すぎる気がする。運河と線路は分けて考えた方がいいよ。運河側は、KCRAの取材に答えた法医学者が「個別に見たら全部が他殺の決定打ではないが、集中の仕方が異様で他殺事件として捜査すべき」って言ってる。これは妥当な中間路線だと思う。
2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
よくまとまった意見だね。10年以上にわたって何件も起きてるなら、原因が一本筋じゃないってのは合理的な推測。地元はとにかく「もう少し深く調べてくれ」と言ってるだけだと思う。
3. 謎の名無しさん
線路の方が気になる。撥ねられる前にすでに気を失ってた疑いが濃いケースが多すぎる。グレノンは線路の上に横たわってたって機関車のカメラに映ってるし、バスは口に下着を詰め込まれてた。ダニエルJr.の拳には大きな打撲痕。ケリーの胴にはブーツの跡。これだけ揃ったら「事故」で済ませる方が雑だろ。
4. 謎の名無しさん(>>3への返信)
それな。別件で殴られた人間を「線路に放置して片付ける」のは、現場検証を有耶無耶にする方法としては効率的だしね……。
5. 謎の名無しさん
運河の溺死は意外と「単なる事故」が多いんだよ。冷たくて流れの速い水、水中パイプ、コンクリート壁。一度落ちたら抜け出すのは本当に難しい。タンブリングで遺体に打撲痕がつくのも普通。
6. 謎の名無しさん(>>5への返信)
水の専門家じゃないとピンと来ないけど、急流に巻かれた遺体は思った以上にぼろぼろになるらしいね。プラセルビルの川でも先月溺死があったし、地形的に危険な水路は本当に多い。
7. 謎の名無しさん
リチャード・ヒルは午前2時に運河で発見されて、住民とパラメディックが必死で引き上げようとしたけど助からなかったって記事に書いてある。流れが速すぎたらしい。だから全部が他殺っていう前提で読むと逆に見えなくなるものもある。
8. 謎の名無しさん
有刺鉄線フェンスを設置した後にもヒルが亡くなってる、ってのが地味に怖い。フェンスがあっても落ちる人は落ちる、か、それともフェンスを越えてでも誰かが押し込んでた、か。
9. 謎の名無しさん(>>8への返信)
酔っ払いがフェンスをよじ登ること自体は珍しくないんよ。あとフェンスって防護より「警告」の効果が大きい。本気でアクセスしたい人間(被害者でも加害者でも)は止められない。
10. 謎の名無しさん
小さな町ってこういう連続事案で評判が傷つくのを嫌うから、警察も「事故です」で締めたがる。被害者の遺族が「町の体面のために蓋をされてる」って言ってたのが妙に説得力ある。
11. 謎の名無しさん
プレイサー郡は元ベイエリア住民が「シンプルな生活」を求めて引っ越してくる土地。でも実態は貧困層と新参者が混ざってて、地元住民は外部に対して結構排他的。「フラットランダー(平地人)」って侮蔑語で呼ばれた経験あるよ。
12. 謎の名無しさん(>>11への返信)
プレイスビルの市章にリンチ用の縄が描かれてて炎上した件もあるし、観光地の顔と地元の顔は別物だよね。よそ者が事件に巻き込まれても「自業自得」で片付けられがち。
13. 謎の名無しさん
このエリアって大麻違法栽培とギャング絡みの事件が結構あるんだよ。実際、近所で警察と銃撃戦になって保安官代理が殉職した事件もあった。井戸に遺体が捨てられてたケースも。運河の水を勝手に取水して栽培してる連中とトラブった、ってシナリオは私は割と現実的だと思う。
14. 謎の名無しさん(>>13への返信)
ただオーバーンの運河は市街地を貫いてるから、栽培地に水を引くにしても露骨すぎないか? もっと山奥の支流ならアリだけど。
15. 謎の名無しさん
ダナ・バスの「口に下着」は本当にぞっとする。これを「事故」で処理した検視官は何を見てたの。
16. 謎の名無しさん
グレノンの件、機関車カメラに「動かずに横たわってる」姿が映ってて、隣に犬の首だけが転がってたって……これだけでもう普通じゃないでしょ。30歳の誕生日を祝ったばかりで引っ越し予定もあった人が、自殺するか?
17. 謎の名無しさん(>>16への返信)
読んだ瞬間に「先に殺されてから線路に置かれた」が頭をよぎった。犬の頭部だけってのも意味深すぎる。何かのメッセージか、それともパニックで現場が荒れたか。
18. 謎の名無しさん
2010年の集中期の後、2014年にバスとダニエルJr.が立て続けに亡くなってる。「フェンス設置で運河ルートを潰されたから線路に切り替えた」と読むこともできる。怖い読み方だけど。
19. 謎の名無しさん
私は連続殺人犯説には懐疑的。10年以上同じパターンを維持する個人犯はそうそういない。むしろこの町に「弱者を狙う潜在的な暴力性」が常駐してて、複数の人間がそれを発露させていた、と読む方が自然な気がする。
20. 謎の名無しさん
ホームレス、独居者、夜歩きの男性、口論直後の人物——「いなくなっても深く追われない人」ばかりが標的になってる。これが偶然なら不気味だし、選別だとしたらもっと不気味。
21. 謎の名無しさん(>>20への返信)
都市部の連続殺人犯(特にゲイリー・リッジウェイ系)が「社会的に消えても気づかれにくい人」を狙うのは古典的な手口だしね。オーバーンが「小さなグリーンリバー」と呼ばれてもおかしくない構造はある。
22. 謎の名無しさん
2018年のドキュメンタリー『Everyone Counts』を見たけど、遺族の証言が本当に切実だった。「警察に何度かけても折り返しが来ない」「事故扱いされて以降、誰も話を聞いてくれない」って。地元局の取材だからこそ出てきた声だと思う。
23. 謎の名無しさん
2021年のロドリゲス事件は両足が縛られてた時点で完全に殺人。これだけ「殺人」と認定されてるなら、過去の運河案件も再検証する余地は十分あるはず。所見が似てるなら尚更。
24. 謎の名無しさん(>>23への返信)
公的機関は一度「事故」で結論を出すと再分類を極端に嫌がる。「過去の判断が誤りでした」って認めることになるから。それでも遺族の働きかけで動き出すケースはあるので、声を上げ続けるのは大事。
25. 謎の名無しさん
KCRAの2013年の特集を見ると、私立探偵が独自に各事件を結び付けて捜査してる。地元警察が動かないから民間が動く、というのが結局この事案の本質なんだろうな。
26. 謎の名無しさん
スマイリーフェイス・キラーやマンチェスター・プッシャーと同じ匂いがする。本当はバラバラの事故・暴行事件を、後から「パターン」として束ねてるだけかもしれない。年間800〜1000人が列車関連で亡くなる国だってことを忘れちゃいけない。
27. 謎の名無しさん(>>26への返信)
その指摘は正しいけど、人口1万3000人の町の半径800m以内で23か月に6件って、統計の自然な揺らぎとして説明できる数字を超えてると思う。マンチェスター・プッシャー説と同じ土俵に乗せるのは違うかな。
28. 謎の名無しさん
私はサクラメント在住で、ここに引っ越そうかと思ってた。正直、この記事を読んでちょっと怖くなった。観光地としては綺麗な町なんだけどね、シエラの麓で。
29. 謎の名無しさん(>>28への返信)
住む分には本当に静かでいい町だよ。事件はホームレスや夜の単独行動者に集中してる。普通に暮らしてれば運河に近づくことすらない。ただ「綺麗な表層の下にこういう死が積まれてる」と知ったうえで住むのと、知らずに住むのとでは見え方が変わるよね。
30. 謎の名無しさん
12年。10人以上。フェンスを越えても止まらない死。ロドリゲスの件だけが「殺人」とされて他は「事故」のまま——この線引きの根拠を、検視局はちゃんと説明する義務があると思う。遺族が今も納得してないのは、当然だ。
未解決の謎
オーバーンで2009年から12年間に積み重なった死は、いまだに統一された見解を持たない。検視局は1件を除きすべてを「事故」または「自殺」と分類した。だが現場には頭部の外傷、爪の間の土、口に詰められた下着、ブーツの跡、線路上で動かない身体——「単なる事故」では説明のつかない所見が並ぶ。なぜこれらが個別に処理され、つなげて再検証されないのか。
連続殺人犯がいたのか。地元の暗部(薬物、ギャング、ホームレス間の暴力)が事故処理の陰に隠れていたのか。それとも本当にすべてが偶然の集積で、人間は「物語」を求めて事件を結び付けてしまうのか。Redditでの議論も二分されたまま結論は出ない。確かなのは、2021年のジェームズ・ロドリゲス事件が「両足を縛られた殺人」と認定されたという事実が、それ以前の事案にも別の光を当てる可能性を残している、ということだけだ。
遺族たちは今も問い続けている——「町の体面のために、私たちの家族の死は『事故』にされたのではないか」と。シエラネバダの麓を流れる運河と、市街地を縦断する線路は、今日も静かに水と列車を運び続けている。そして、その静けさの中に何が紛れていたのかは、まだ誰にも分かっていない。
出典:r/UnresolvedMysteries 元スレ / The Auburn Journal「The Death Zone」 / KCRA 3 News 調査報道 / ドキュメンタリー『Everyone Counts』

