【1980年】病棟での死亡が625%増、深夜に集中——トロント小児病院の乳児の死は殺人だったのか

【1980年】病棟での死亡が625%増、深夜に集中——トロント小児病院の乳児の死は殺人だったのか 未解決事件

カナダ・トロントにある小児病院「ホスピタル・フォー・シック・チルドレン」(通称シックキッズ)は、世界でも指折りの子ども病院として知られている。その心臓病棟で、1980年の夏から翌年3月までのおよそ9か月間、入院中の赤ちゃんの死亡が相次いだ。病棟で亡くなった子の数は、前後の時期の平均と比べて625%増。のちに一部の子の体から強心薬のジゴキシンが異常な濃度で検出され、病院は殺人事件の捜査の舞台になった。

※ ジゴキシン:ジギタリスという植物の成分からつくられる強心薬。心臓の働きを強め、脈を整えるために使われる。効く量と中毒を起こす量の差が小さく、多すぎると命に関わる不整脈を起こす。

警察は若い看護師を逮捕し、4人の殺害で起訴した。だが彼女は裁判に進む前に証拠不十分で釈放され、無実とされている。州の調査委員会は「少なくとも8人は過剰投与で亡くなった」と結論づけたが、誰が投与したのかは名指しできなかった。それから40年以上、ほかに起訴された人はいない。今では「そもそも殺人など起きていなかった」という説まである。

事件の概要

🗓️ 発生期間:1980年6月30日〜1981年3月22日(王立委員会の調査対象期間)

🌫️ 場所:カナダ・オンタリオ州トロント、トロント小児病院(通称シックキッズ)の心臓病棟

👤 亡くなった子どもたち:心臓病棟に入院していた乳幼児。委員会が検証した死亡は36件(数え方により30〜40件台と幅がある)

🔍 状況:病棟での死亡が急増し、深夜に集中。一部の子から、処方されていないジゴキシンや、治療量をはるかに超える濃度のジゴキシンが検出された

🕯️ 現状:起訴された看護師は1982年に釈放され、無実とされている。委員会は8件を過剰投与による死亡としたが、投与した人物は特定されていない

当時の心臓科の責任者によれば、この病院の患者がふだん病棟で亡くなることはまずなく、容体が悪くなれば集中治療室に移されていた。ところがこの9か月間は、急に悪化して集中治療室に移す間もなく心停止に至るケースが続いた。重い病気の子もいれば、完全に回復する見込みの子もいたが、医師たちは当初、病気そのもので亡くなったのだと考えていた。

判明している事実

深夜に集中した病棟での死
王立委員会の集計では、1980年7月から81年3月までの9か月間に心臓病棟の中で亡くなった子は34人。比較した前後の同じ長さの4つの期間では、それぞれ5人、6人、1人、7人だった。時間帯の偏りも異様で、この期間の病棟での死亡のうち25件が深夜0時から朝6時に起きている。ほかの6時間の時間帯では、どれも3件以下だった。

「計算ミスだろう」と片づけられた数値
1981年1月、亡くなった生後4か月の赤ちゃんの血液から、治療で許される上限の20倍を超えるジゴキシンが検出された。だが検査上のノイズか計算ミスとみなされ、十分に追跡されなかった。3月、入院時には命に関わる状態ではなかった生後1か月足らずの赤ちゃんが急死し、ジゴキシン中毒が疑われると、検視官は警察に捜査を依頼した。まもなく別の赤ちゃんも高濃度のジゴキシンが検出される形で亡くなり、病院はジゴキシンを厳重管理の薬に切り替えた。ところがその翌日、生後3か月ほどの赤ちゃんが亡くなり、一度も処方されていないジゴキシンが高い濃度で見つかる。看護チームの一つが勤務から外され、病棟は新しい患者の受け入れを止めた。

起訴された看護師の釈放
警察が目を付けたのは、最後に亡くなった赤ちゃんをその夜受け持っていた若い看護師だった。ほかにも2人の赤ちゃんを亡くなったときに担当していたことから、警察は彼女を「共通項」とみなした。事情聴取で彼女は、法学部生のルームメイトの助言どおり、弁護士と相談したいと告げて質問に答えなかった。1981年3月25日に逮捕、4人の殺害で起訴。その後、不審な死は途絶えたが、これは病院がジゴキシンの管理を厳しくし、病棟の体制を改めた時期とも重なっている。1982年5月21日、予備審問の判事は4件すべてについて彼女を裁判にかけないと決めた。判事は、4人が意図的に大量のジゴキシンを投与されて亡くなったこと自体は十分に示されているとした。そのうえで、彼女に結びつくものはすべて状況証拠にすぎず、ほかの人にも機会があったこと、1件は彼女には機会すらなかったことを挙げ、弁護士を求めたのも当然の権利を使っただけだとした。つまり彼女は、起訴されたものの釈放され、無実とされた人だ。王立委員会も彼女に落ち度はなかったとし、彼女はその後も看護師として働き続けた。

※ 予備審問:カナダの刑事手続きのひとつ。正式な裁判にかけるだけの証拠があるかを、事前に判事が審査する。足りないと判断されれば、裁判には進まず釈放される。

逮捕のあと、職員の食事から出た心臓の薬
心臓病棟での不審な死は途絶えたが、奇妙な出来事は続いた。心臓病棟の看護師2人の食事——スープ、サラダ、ヨーグルト——から、心拍や血圧を下げる薬プロプラノロールが見つかったのである。2人には「赤ん坊殺し」とののしる脅迫電話がかかり、自宅のドアや車、ロッカーに「X」の印が付けられたが、警察は犯人を突き止められなかった。1982年1月には別の新生児の病棟で、ビタミンEの代わりにアドレナリンが投与され、1人が亡くなる事故も起きた。こちらは当時の調査で薬の取り違えとされている。

「8人は過剰投与で死亡」、しかし名指しは禁じられた
オンタリオ州はサミュエル・グレンジ判事を委員長とする王立委員会を設け、36件の死を1件ずつ検証させた。結論は、過剰投与による死亡が8件、その疑いが極めて濃いものが5件、疑いがあるものが10件、自然死が6件、判定不能が7件。だが1984年4月、州の控訴裁判所が「投与した人物を名指ししてはならない」と判断し、報告書は誰がやったのかに踏み込めなかった。報告書は、36件のうち1件を除くすべてで、各病棟に4つあった看護チームのうち同じ一つのチームのメンバーの勤務中に容体が急変していたことも記している。グレンジ判事自身は「結論の根拠の一部とした毒物検査の証拠が誤りか不十分だと分かり、私が間違っていたと証明されるかもしれない」と書いている。

※ 王立委員会:カナダなど英連邦の国で、政府が重大な問題を調べるために設ける独立の調査委員会。刑事裁判とは別物で、誰かの法的な責任を判断する権限はない。

主な仮説

仮説1:誰かが意図的にジゴキシンを投与した

予備審問の判事は4人の死を意図的な大量投与によるものと認め、王立委員会も8件を過剰投与による死亡とした(報道では「8人が殺害された」と受け止められた)。根拠は、処方されていない子の体から出たジゴキシン、桁違いの検査値(「おそらく記録上最高」とされた値もあるが、その試料の信頼性には異論も出た)、深夜への集中、一つのチームの勤務との重なりだ。一方で直接の証拠は一つもなく、唯一起訴された看護師は無実とされた。

仮説2:検査が「ジゴキシンではない何か」を拾っていた

当時の検査は、抗体を使って血液中の薬の量を測る方式だった。1983年以降、バンクーバーの研究者デヴィッド・セコムらが、ジゴキシンを投与されていない未熟児からも似た反応が出ることを報告し、この正体不明の物質は委員会で「物質X」と呼ばれた。また、組織にたまったジゴキシンは死後に血液へ染み出し、生前より高い値が出ることもある。ただし委員会は、死後の上昇はせいぜい5倍程度で、極端な値までは説明できないとした。検査の誤りだけなら、どのチームの勤務中にも同じように疑わしい死が出ていたはずだ、という反論もある。

仮説3:ゴムから溶け出した化学物質「MBT」が原因だった

2011年、引退した医師ギャヴィン・ハミルトンが著書『The Nurses Are Innocent』(未邦訳。「看護師たちは無実だ」の意)で唱えた説。点滴ラインや使い捨て注射器のゴム製の栓からMBTが薬液に溶け出し、命ぎりぎりの状態にあった赤ちゃんたちに重い反応を起こさせた。しかも当時の検査はMBTをジゴキシンと取り違えて測っていた、という主張だ。1980年ごろから1回分ずつ薬を詰めた注射器が広まり、使用期限が3年と長かったことで溶け出す量が増えた、とハミルトンは言う。この説なら、殺人は一件も起きていなかったことになる。

※ MBT:2-メルカプトベンゾチアゾール。ゴムの製造に使われる化学物質で、ゴム製品によるかぶれの原因物質としても知られる。

ただ、同じような注射器は世界中で使われていたのに、死亡が跳ね上がったのはこの病院の一つの病棟だけだった。逮捕と前後して死亡がぴたりと止まった理由も、職員の食事の件も、この説では説明しにくい。

仮説4:投薬ミスや薬剤の不良が重なった

病院である以上、投薬ミスは起こる。委員会の報告書にも、この期間に心臓病棟でジゴキシンの投与ミスが報告された例や、別の病棟での取り違え事故が記されている。濃すぎる薬液のロットが紛れ込んだ、保管状態の悪い薬が使われた、といった事故の連鎖なら、始まりと終わりがあったことも説明できる。ただ、なぜ深夜と一つのチームの勤務に偏ったのかは、別の説明が要る。

海外の反応

1. 謎の名無しさん
ゴム説は分からなくもない。でもそれならほかの病院でも同じことが起きてないとおかしいし、職員の食事に薬が入ってた件も説明がつかない。捜査が看護師ばかりに向いていて、薬にも赤ちゃんにも食事にも近づけた職員全体を洗ったようには見えないんだよな。

2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
ほかで目立たなかったのは、ここが重い病気の赤ちゃんばかり集まる病院だったからじゃないかな。影響をいちばん受けやすい子たちが一か所にいたら、死亡はそこに集中する。新しい注射器への切り替えの早さも病院ごとに違うはずだし。

3. 謎の名無しさん
病院の薬剤部で働いてる。保管ミスで薬を丸ごと捨てることは実際にある。冷凍・冷蔵・常温を取り違えたロットは廃棄だし、うっかり暖房の吹き出し口のそばで温まったものも捨てる。この病院だけ保管の仕方に問題があった、って線はありえると思う。

4. 謎の名無しさん
ゴムが真犯人だっていうなら、同じ時期に世界中の何十もの病院で、乳児の死亡が同じように跳ね上がってないとおかしくない? 注射器や点滴ラインは、この病院のためだけの特注品じゃないんだから。

5. 謎の名無しさん(>>4への返信)
ゴム説の弱いところはまさにそこ。死亡がぴたりと止まったことを説明できる手順の変更も見当たらないし、ほかの病院で似た増え方があった形跡もない。重い子が集まる病院だから増え方が大きかった、までは言えても、なぜ止まったのかは説明できない。

6. 謎の名無しさん
自分はゴム説をかなり疑ってる。ある子の血清から出たのは、報告書が「おそらく記録された中で最も高い」と書いたほどの濃度だよ。ゴムの混入物でそこまでの数値が出るとは思えない。食事の件も説明できないし、自分は殺人だった派。

7. 謎の名無しさん
小さな規模で何か悪意のあることが起きていて、そこにゴムの影響が重なって一気に死亡が跳ね上がった、ってことはないのかな。どれか一つで全部を説明しようとするから、どの説にも無理が出るのかも。

8. 謎の名無しさん
職員の食事に心臓の薬を入れて回ってたのは誰なんだよ……。スープにサラダにヨーグルトだぞ。赤ちゃんの件もそうだけど、正直こっちのほうが不気味で、ずっと頭から離れない。

9. 謎の名無しさん(>>8への返信)
しかし薬を混ぜるのにサラダって、いちばん向いてない料理じゃない? スープならまだ分かるけど、サラダの上の錠剤なんて見れば一発でばれる。自分なんかクルトン1個すら、口に運ぶ途中で落とすのに。

10. 謎の名無しさん
看護師たちが疑われてると知った誰かが、「罰してやる」つもりで食事に薬を入れたってことはないかな。あるいは騒ぎに便乗して注目を浴びたいだけの模倣犯。命に関わるほどの量じゃなかったなら、赤ちゃんの件とは切り離して考えたほうがいい気もする。

11. 謎の名無しさん
仮に誰かが手を下していたとして、警察が別の人に食いついたら、その時点で手を止めるのがいちばん賢いやり方なんだよね。逮捕のあとに死亡が止まったからといって、逮捕された人が犯人だったとは限らない。

12. 謎の名無しさん
どの説も、別の病棟の赤ちゃんたちがまとめてアドレナリンを投与された件を説明できてないよね。

13. 謎の名無しさん(>>12への返信)
あれは薬の取り違え事故だったはずだよ。ビタミンEのはずがアドレナリンだった件で、当時の報告書でも事故として扱われてる。似た容器の薬を取り違える事故は、病院では珍しくないらしい。起きたのも逮捕から10か月後で、心臓病棟とは別の病棟だし。

14. 謎の名無しさん
ぴたりと止まった理由はいくつか考えられる。薬の仕入れ先を変えて、それまでの在庫がちょうど尽きた。病院が自分たちの手順のまずさを隠した。世間の風当たりが強くなって、誰かが責任をかぶらされた。裁判にすら進まなかったんだから、あの看護師に不利な証拠はなかったってことだよ。

15. 謎の名無しさん(>>14への返信)
でも、それならなぜこの病院だけなんだ? 仕入れ先の問題なら、同じ製品を買ってた病院はほかにもあったはずだろう。

16. 謎の名無しさん
弁護士が来るまで話さない、と言っただけで余計に怪しまれたのは本当に気の毒。それは当然の権利だし、客観的に見ても正しい判断だよ。権利を使った人が不利な扱いを受けるなんて、あっちゃいけない。

17. 謎の名無しさん(>>16への返信)
犯罪ドキュメンタリーを見てると、警察は決まって「後ろめたいことがないなら、なぜ弁護士を呼ぶ?」って責めるんだよね。でも弁護士を呼ぶのは100%正しい。うっかり自分に不利なことを口走るのも防いでくれる。

18. 謎の名無しさん(>>16への返信)
ただ、弁護士を頼んだから逮捕された、っていうのは言い過ぎかも。王立委員会の報告書では、警察はそれ以前から強く疑っていて、それを打ち消す説明が本人から出てこなかったから逮捕した、とされてる。

19. 謎の名無しさん
うちの祖父がこの調査に関わってて、報告書の冒頭の名簿に名前が載ってる。委員長の判事からの礼状も家に残ってる。何度か当時の話をしてくれたけど、認知症が進んでからだったから、どこまで正確かは分からない。ただ、あの看護師は無実だと信じてるようだった。

20. 謎の名無しさん(>>19への返信)
すごい話だね。報告書を全部読んだけど、判事自身が、将来の証拠や科学で自分が間違っていたと分かるかもしれないと書いてるのが印象的だった。あの看護師がやったと思ってる人には、自分はまだ会ったことがない。その後も看護師として立派に働いてきたことが、何かを物語ってると思う。

21. 謎の名無しさん
イギリスのビバリー・アリット事件を知ってるせいかもしれないけど、自分はやっぱり誰かが手を下したんだと思う。病院で子どもに薬を過剰に投与するっていう状況がよく似てるし、食事から薬が出てきたことも疑いを強めるだけだよ。

※ ビバリー・アリット事件:1991年、イギリスの病院の小児病棟で、看護師のビバリー・アリットが入院中の子どもたちを襲い、4人を死亡させた事件。1993年に有罪判決を受けた。

22. 謎の名無しさん(>>21への返信)
ただ、アリットのような人は事件の前から問題を抱えていて、まともな看護師として暮らしていけるタイプじゃなかった。この事件を一人の看護師の犯行だとするなら、9か月も子どもを手にかけ続けた人が、ある日ぴたりとやめて普通の人に戻ったことになる。ありえなくはないけど、想像しにくい。

23. 謎の名無しさん(>>21への返信)
逆の例もあるよ。オランダのルシア・デ・ベルクは、ジゴキシン中毒とされた赤ちゃんの死をきっかけに連続殺人犯にされ、一度は終身刑になったのに2010年に無罪になった。彼女が勤務中だったというだけで、病死のはずの死まで数え直されてたんだ。先に人が決まると、数字があとからついてくる。

24. 謎の名無しさん
薬剤部で注射器に詰める薬液を調合するときにミスがあった可能性は? 濃すぎるジゴキシンの注射器が1ロット分だけ心臓病棟に届いて在庫に混ざったら、始まりと終わりがはっきりしていて、しかも一部の患者にしか影響しない。調合ミスなら、悪意がなくても同じ結果になる。

25. 謎の名無しさん
検査の誤差説の人に聞きたいんだけど、数値が見かけだけなら、どのチームの勤務中にも同じように疑わしい死が出てたはずじゃない? チームは4つあったのに、急変はほぼ全部が一つのチームの勤務時間に集中してる。だから誰がやったとは言えないけど、ここは検査の問題では片づかない気がする。

26. 謎の名無しさん
自分も原因は一つじゃないと思う。ゴムが一部に関わってたとしても、625%増は大きすぎる。薬があちこちから出てくる話で思い出したのが、昔勤めてた銀行。レジの金が合わない日が続いたあと、職員のコートのポケットに紙幣やお客さんのカードが突っ込まれる騒ぎが起きた。盗んでたのは同僚の一人で、みんなが互いを疑う混乱に紛れてたんだと思う。すぐ捕まったけどね。

27. 謎の名無しさん(>>26への返信)
でも考えてみてよ。命に関わる製品の欠陥と、赤ちゃんを手にかける職員と、薬を盗む職員が、同じ時期に同じ病院にそろう確率ってどのくらい? どれか一つでもめったにないのに、三つ同時はさすがに無理があると思う。

28. 謎の名無しさん
解剖されていない子が何人もいた(親の同意が必要で、同意しなかった親もいた)と読んで、最初はなんで?と思った。でも考えてみたら、ほんの40年前は、赤ちゃんが亡くなることが今よりずっと「仕方のないこと」として受け止められてたんだよね。

29. 謎の名無しさん(>>28への返信)
親御さんたちは、入院の原因になった病気で亡くなったんだと受け止めていたんだと思う。まさか後から殺人事件の捜査になるなんて分かっていたら、判断も違ったはず。宗教や文化によっては、解剖を避けてすぐに埋葬する習慣もあるしね。

30. 謎の名無しさん
トロント郊外のスカボローに10年住んでたのに、この事件は初めて知った。シックキッズには、きょうだいががんになったとき命を救ってもらったし、自分も緊急手術で助けてもらった。この病院への感謝は、この話を知っても変わらない。

未解決の謎

この事件の奇妙さは、「犯人が分からない」ことにとどまらず、「そもそも犯罪があったのか」すら確定していないところにある。王立委員会は8件を過剰投与による死亡と認めたが、委員長自身が、検査の証拠がいずれ覆るかもしれないと書き残した。2011年、カナダの法律情報誌はこの事件を振り返り、「今日、小児心臓病棟でそもそも犯罪が行われたのかどうかさえ、確信をもって言える者はいない」と結んでいる。

殺人だったとすれば、深夜に集中した死、処方されていない薬、逮捕と前後して止まった死亡をどう読むのか。殺人ではなかったとすれば、なぜこの病棟だけで、なぜあの9か月だけ死亡が跳ね上がったのか。職員の食事に薬を入れ、脅迫電話をかけたのが誰だったのかも分からない。

確かなのは、答えが出ないまま一人の若い看護師が逮捕され、起訴されたが釈放され、無実とされたことだ。カナダではこの一件が、疑いだけで人を追い詰める捜査の危うさを示す例として語り継がれている。そして亡くなった子どもたちの家族にとっては、わが子がなぜ亡くなったのかという問いに、40年以上たった今も答えが出ていない。

出典:r/UnresolvedMysteries 元スレ王立委員会報告書(グレンジ報告、1984年)WikipediaMaclean’s(2011年) / LawNow(カルガリー大学、2011年)、The Walrus(2025年)、UPI(1982年)

Comments