アメリカ・ロッキー山脈のどこかに、金塊と希少なコイン、宝石を詰めた箱がひとつ置かれている——。ニューメキシコ州サンタフェ※に暮らす美術商フォレスト・フェンが、2010年に自費出版した自伝の中に24行の詩として手がかりを書き残してから、ちょうど10年。詩を頼りに山へ入った人は数え切れないほどで、その中には二度と帰ってこられなかった人もいる。そして2020年6月のある日曜日、フェンは地元紙の電話取材に短く答えた。「本当だよ」——宝は、見つかった。
※ サンタフェ:アメリカ南西部ニューメキシコ州の州都。ロッキー山脈の南端にあたる高地の古い街で、画廊や美術商が集まることで知られる。フェンが長く暮らした土地でもある。
事件の概要
🗓️ 時期:手がかりの公表は2010年、「発見された」との発表は2020年6月
🌫️ 場所:「サンタフェより北の山中」とだけ書かれた。捜索はニューメキシコ・コロラド・ワイオミング・モンタナの4州にまたがるロッキー山脈全域に広がった
👤 関係者:フォレスト・フェン(美術商。発表当時は80代後半)/名前を明かさなかった発見者
🔍 状況:自伝に収めた24行の詩に9つの手がかりを仕込み、金塊・希少コイン・宝石類を詰めた箱の在り処を示したとされる
🕯️ 結末:2020年6月、フェンが電話で「見つかった」と発表。ただし場所も、発見者の名前も公表されなかった
始まりは一冊の本だった。大きな病を患い、そこから回復したフェンが2010年に自費出版したのが、人生の断片を綴った短編集の体裁をとる自伝『The Thrill of the Chase』※である。その中でフェンは、金塊・希少なコイン・宝飾品・宝石を詰めた箱を「サンタフェより北の山中」に隠したと書いた。本に散らばる小話がヒントになっており、「Gold and More」の章に置かれた24行の詩には、たどり着くための9つの手がかりが仕込まれている——というのがフェン自身の説明だった。
※ The Thrill of the Chase:直訳すれば「追いかけることの高揚」。2010年にフェンが自費出版した自伝で、日本語版が出たという記録は確認できない。本文中の短編に手がかりが埋め込まれているとされ、宝探しの参加者は本と詩を突き合わせながら候補地を絞り込んでいった。
詩の解釈は無数に生まれた。「暖かい水が止まる場所」「渓谷を下って」といった曖昧な表現に、それぞれの参加者が自分の知る川や峠を当てはめていく。SNSやフォーラムには解読班が生まれ、休暇のたびに山へ通う常連が現れ、家族ぐるみで毎年同じ谷を歩く人たちがいた。箱の中身の価値は、鑑定の仕方によっては200万ドルに達するとも言われた。もっとも、その金額を実際に検めた第三者は、発表の時点では一人もいなかった。
判明している事実
手がかりは24行の詩に9つ
フェンが公表した手がかりは、自伝に収められた24行の詩と、本文に散らばる小話、そして後年インターネット上に小出しにされたヒントである。詩そのものには具体的な地名がひとつも出てこない。フェン本人は「9つの手がかりが順番に並んでいる」と繰り返し語っていたが、どの行がいくつ目の手がかりに当たるのかは最後まで説明されなかった。
中身は金塊・希少コイン・宝石類
箱に何を入れたかについては、フェン自身が書き残している。金の塊、収集家向けの希少なコイン、宝飾品、宝石。ただしこれは本人の申告であり、発表時点で外部の鑑定が入った形跡はない。価値の見積もりが幅を持って語られてきたのも、実物を計量した人がいなかったためである。
捜索範囲はロッキー山脈の4州
「サンタフェより北」という一言が、結果としてニューメキシコ、コロラド、ワイオミング、モンタナという広大な捜索圏を生んだ。参加者は自分の解読に従って州をまたぎ、国有林や国立公園、私有地との境界が入り組んだ土地を歩いた。一部の土地では管理当局が立ち入りや掘削の扱いに神経をとがらせ、「もし国有地に置かれていたなら所有権は国にある」という趣旨の見解も語られていた。
山で命を落とした捜索者がいる
この宝探しでもっとも重い事実である。10年のあいだに、宝を探しに山へ入った人が複数、命を落としたと報じられた。渓流や崖といった、そもそも80代の男性が単独で往復できるはずのない地形へ踏み込んだ末の事故が含まれる。フェンは「危険な場所には隠していない」と繰り返し呼びかけていたが、それでも捜索の熱は収まらなかった。
発表は電話一本、発見者は匿名
2020年6月、フェンは地元紙の電話取材に「本当だ」と答え、数日前に発見されたと述べた。発見者は名前を出したがっておらず、「東部の人間だ」とだけ説明。証拠として本人から写真が送られてきたので確認できた、とも語った。しかし、その写真も、発見された場所も、発表の時点では公開されなかった。
主な仮説
仮説1:宝は実在し、本当に見つかった
もっとも素直な読み方である。フェンの知人には、隠す前の箱を実際に見たと証言している人がいると伝えられており、そもそも10年間ずっと嘘をつき通す動機が薄い。場所を伏せたのも、発見者を守るためだと考えれば筋は通る。国有地に置かれていた場合、所有権の問題や課税の問題が発見者に降りかかる可能性があり、名前が出れば身の安全にも関わる。この立場から見れば、フェンの沈黙は不誠実ではなく配慮ということになる。
仮説2:宝など最初から存在しなかった
もっとも辛辣な読み方。自費出版の本を売るための壮大な仕掛けであり、箱は初めから山になかった、という見方である。この説の強みは、検証を必要としない点にある。何も埋めていないなら、いつ「見つかった」と言っても矛盾は生じない。むしろ場所を明かさないことが最良の戦略になる——場所を言えば「そこは自分が三度歩いた」と名乗り出る人が出てきて、その瞬間に企画は崩れるからだ。実際、10年のあいだ誰ひとり到達できなかったという事実自体が、この説の根拠として繰り返し持ち出されてきた。
仮説3:宝は実在したが、「発見」は幕を下ろすための方便だった
両者の中間に位置する読み方。箱は本当に隠されていたが、発見の報せは終わらせるための宣言だった、という筋書きである。動機として挙げられるのは、まず山で人が亡くなっていること。次に、自分の解読が正しいと信じる参加者からの法的な争いが持ち込まれていたこと。さらに、感染症の流行で人の移動そのものが問題視されていた時期でもあった。高齢のフェンにとって、自分の目の黒いうちに終止符を打っておきたい理由はいくつも重なっていた。
仮説4:発見者は実在するが、フェンと近い人物だった
発見者が名乗り出ないこと自体を手がかりと見る立場。もし赤の他人が10年越しの謎を解いたのなら、名乗り出て話したくなるのが自然ではないか——という直感が出発点になっている。逆に、身内や旧知の人物であれば、名前が出た瞬間に「出来レースだ」と言われるのが目に見えている。ただしこの説は、匿名でいたい理由として「大金を持っていると思われたくない」という、ごくありふれた動機を軽く見すぎているという批判もある。
海外の反応
1. 謎の名無しさん
誰が見つけたかは正直どうでもいい。知りたいのはどこにあったのか、それと箱の中に実際なにが入っていたのかだ。そこを伏せられると、10年追いかけた側は何ひとつ受け取れないまま終わることになる。
2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
開けてみたら「ここまでよく来たね、牛乳を飲んで帰りなさい」って書いた紙が一枚だけ入ってた、みたいな話だったら逆に伝説になると思う。
3. 謎の名無しさん(>>1への返信)
本当の宝物は探しに行く途中で出会った仲間だった——って書くと必ず怒られるやつなんだけど、今回ばかりは半分くらい本気でそう思ってる。
4. 謎の名無しさん
2020年、年内に伏線を回収しようとして急ぎすぎでは。この半年で「まさか動くと思ってなかった話」がいくつ動いたか、一度数えてみてほしい。
5. 謎の名無しさん(>>4への返信)
まあそうだよな。世界が終わるとしても、引きのまま終わらせたくないという気持ちは分からなくもない。
6. 謎の名無しさん(>>4への返信)
この調子なら切り裂きジャックの正体もゾディアックの暗号も年内に片付けてくれるんだろうな。期待して待ってる。
7. 謎の名無しさん
フェンさん、せめて区切りをつけてくれてもよかったのでは。発見者の身元を伏せるのは理解できる。でも隠し場所くらいは言ってくれてもよかったはずだ。
8. 謎の名無しさん(>>7への返信)
詳細は追って出すと言っているらしい。詩の一行ずつの答え合わせも公開する予定だとか。個人的にはむしろそっちが本編だと思ってる。
9. 謎の名無しさん
場所を口にした瞬間に「そこは俺が三回歩いた」と名乗り出る人が絶対に出てくる。そうなったら全部おしまいだから言えないんじゃないか、という見方は前から出ていた。
10. 謎の名無しさん
正直、途中までは「人を山に歩かせるための壮大な作り話」だと思っていた。まさか終わりの発表を聞く日が来るとは思わなかった。
11. 謎の名無しさん(>>10への返信)
作り話だったとしても、おかげで父と何年もコロラドの奥まで歩けた。当の父は見つかったと聞いて完全に落ち込んでる。何年も注ぎ込んできた人だから、そりゃそうだ。
12. 謎の名無しさん
箱の写真も、中身の一覧も、場所も出てこないなら信じない。今のところ本を売るための企画にしか見えないし、その企画のせいで山で亡くなった人がいる。
13. 謎の名無しさん(>>12への返信)
これ。人が命を落としているのに「ロマンがあった」で締めるのは無理がある。冒険の後始末まで含めて冒険だろう。
14. 謎の名無しさん
発見者が名乗らない理由は分かりすぎるほど分かる。金を持っていると思われた瞬間、どこからともなく妙な連中が湧いて出てくるものだ。
15. 謎の名無しさん
自分だって宝くじが当たったら絶対に公表しない。知らない親戚が急に増えるのが目に見えてる。匿名でいたい気持ちは責められないよ。
16. 謎の名無しさん
ただ、都合よく匿名なのも事実で。これで「宝が実在した証拠」は世の中に一つも出てこないことになった。仕組みとして出来すぎていないか。
17. 謎の名無しさん
何年も追いかけてきたけれど、疑いは深まる一方だ。見つかったと発表した時点で場所は言えたはずだし、言わない理由が「先に探した人に否定されるから」なのだとしたら、それは宝が無かった側の理屈になってしまう。写真が届いたと言うなら、その写真を出せば済む話でもある。
18. 謎の名無しさん(>>17への返信)
国有地に置かれていた場合は公園当局が所有権を主張する、と当時から言われていた。発見者を守るために場所をぼかしている、という説明なら一応は筋が通る。
19. 謎の名無しさん(>>17への返信)
逆に言えば、最初から何も埋めずに「見つかった」と発表するのがいちばん簡単で、いちばん検証されにくい。皮肉な話だけどね。
20. 謎の名無しさん
移動が制限されていた時期に場所を公表したら、その一点に人が集まってしまう。それを避けたかった、という説明もありうると思っている。
21. 謎の名無しさん
納得はしていない。ただ、これ以上あの山で誰も死なずに済むのなら、幕を下ろしたこと自体は正しかったと思う。
22. 謎の名無しさん(>>21への返信)
タイミングが良すぎるんだよな。法的な揉め事の話も出ていたはずだし、続報が出るまで判断は保留にしておく。
23. 謎の名無しさん
何年も休みを注ぎ込んできた人たちのために、せめて詩の答え合わせだけはしてほしい。「これしかない」と思える解釈が何十通りもあって、どれもそれらしく見えたんだ。
24. 謎の名無しさん
一気に全部でなくていい。まず州、次に国立公園、次におおまかな一帯、と小出しにしてくれるだけでも十分楽しめると思う。
25. 謎の名無しさん
うちの父も長いこと探している。先週も車で大陸を横断する計画を立てていた。ただ本人は場所を知りたくないと言っている。自分が歩いた範囲のすぐ近くだったと分かったら、正気ではいられないから、と。
26. 謎の名無しさん
「自分が特定した場所へ行ったら、もう何も残っていなかった」と書き込んでいた人がいた。偶然だとしたら、さすがに出来すぎている。
27. 謎の名無しさん(>>26への返信)
10年見つからなかったものに、数日の差で二人が到達する確率ってどれくらいなんだ。どう考えても計算が合わない気がする。
28. 謎の名無しさん
80歳の男性がひとりで運んで置いてきたと本人が言っている。だとすればロープが要る崖の途中や急流の中にあるはずがない。危険な場所を探していた人たちは、最初から見当違いの方向を見ていたことになる。
29. 謎の名無しさん(>>28への返信)
それでも人は危ない場所を探しに行くんだよ。「危険な場所には隠していない」と何度言われても届かない。仕掛けた側の責任がそれで消えるわけじゃない。
30. 謎の名無しさん
結局いちばん引っかかっているのは、10年分の物語が日曜日の電話一本で終わったことだ。始め方はあれだけ手が込んでいたのに、終わり方だけがやけにあっけない。
未解決の謎
宝が見つかったという発表があってなお、この話にはほとんど何も戻ってこなかった。場所も、写真も、発見者の名前も、詩の答え合わせも。10年かけて積み上げられた巨大な問いに対して、返ってきたのは「本当だよ」という電話越しのひと言だけだった。だから発表の直後から、人々は喜ぶより先に、その空白の意味を読み取ろうとした。
信じる側にとって、沈黙は配慮である。大金を手にしたと知られた人間に何が起きるかは、誰でも想像がつく。加えて、置かれていた土地が国のものだった場合には所有権や税の問題が持ち上がる。名前も場所も伏せるのは、発見者を守るための当然の判断だ、と。一方で疑う側にとって、同じ沈黙は都合の良さそのものだった。場所を明かさなければ、「そこは自分が探した」と反証される危険もない。検証できないものは、否定もされない。
そして、どちらの立場を取るにせよ避けて通れない事実がひとつある。この宝探しの10年のあいだに、山へ入った人が複数、命を落としたと報じられていることだ。フェンは危険な場所には隠していないと繰り返し呼びかけていたし、80代の男性が単独で往復できる地形という制約からしても、その言葉は理屈に合っていた。それでも、詩の一行を自分なりに解いた人は、その解に従って崖にも川にも向かった。物語を用意した側がどこまで責任を負うのかという問いは、宝が見つかったと言われた後も、はっきりした答えのないまま残っている。
なお、その後の報道によれば、フェンは発表から約3か月後の2020年9月に90歳で亡くなっている。同じ年の12月には、発見者を名乗る人物が自ら名前を明かして取材に応じ、箱を見つけたのはワイオミング州内だったと語った。ただし具体的な地点はそのときも公表されず、詩の一行ずつの答え合わせも、結局まとまった形では出てこないままである。
結局のところ、2020年6月の時点で外部の人間が確かめられたのは「フェンが終わったと言った」という一点だけだった。10年ぶんの解読も、遠征も、家族で歩いた夏の記憶も、そのひと言の向こう側に置き去りにされている。宝は本当にあったのか。あったとして、それは本当に見つかったのか。詩の24行は、いまも誰の答え合わせも受けていない。
出典:r/UnresolvedMysteries 元スレ / The Santa Fe New Mexican / Wikipedia: Fenn treasure


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