2021年9月29日、ペンシルベニア州ハリスバーグの実家。23歳のニコラス・”ニック”・スマイヤーは、見知らぬ若い男とともに古いシルバーのホンダ・シビックに乗り込み、走り去っていった。物静かで内向的、オンラインゲームとD&D※が趣味の青年。家には携帯電話以外のほとんどすべてを残したまま、二度と戻らなかった。そして失踪の前後、彼は親しい友人へ最後のメッセージを送っている——その中身は、自分のノートPCと各種アカウントの「パスワード」だった。なぜ彼はそんなものを残したのか。これは、消えた一人の青年をめぐる物語である。
※ D&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ):紙とサイコロで物語を進めるテーブルトークRPGの代表作。複数人で役割を演じながら冒険を進める対面型のゲーム。
事件の概要
🗓️ 失踪日:2021年9月29日
🌫️ 場所:ペンシルベニア州ハリスバーグ(ケリードライブの実家)
👤 本人:ニコラス・”ニック”・スマイヤー(当時23歳)
🔍 状況:身元不明の若い男とシルバーのホンダ・シビックで実家を出たのを最後に消息を絶つ。失踪前後に友人へPCとアカウントのパスワードを送信
🕯️ その後:10月1日午後にカーライルで携帯が最後に基地局接続。以後、銀行口座も一切使われず行方不明に
ニックはハリスバーグのケリードライブにある実家で家族と暮らし、地元の手芸用品店マイケルズで働いていた。前歴は2018年と2019年の交通違反切符が2枚だけ。周囲からは「物静かで控えめ」と評され、トラブルとは無縁の青年だった。それだけに、彼が見知らぬ男と忽然と姿を消したことは、家族にとってもまったく「彼らしくない」出来事だったという。
失踪の翌日と翌々日、ニックは職場を無断欠勤。連絡もなかった。母親はやがて警察に届け出るが、成人男性が自らの意志で車に乗り込んでいったように見えるこの一件は、捜査の手がかりがあまりに乏しかった。
判明している事実
身元不明の男と消えた最後の目撃
ニックを最後に目撃したのは、近くの宅地開発を手がける建設会社の従業員だった。9月29日、ニックは「20代前半・黒髪・オリーブがかった日焼けした肌」の若い男と一緒に実家を出て、2000年代初頭のシルバー/グレーのホンダ・シビック(または類似車)に乗り込み走り去ったという。ナンバープレートは控えられておらず、同行した男が誰なのかは今も分かっていない。
最後に送られたパスワードのメッセージ
失踪の前後、ニックは親しい友人へDiscordで最後のメッセージを送っていた。その内容は、自分のノートPCと各種アカウントへログインするための「パスワード」だった。これがいつ送られたのか正確な日時は公表されていない。物静かな青年が、まるで身辺を整理するかのように鍵束を友人へ託したこの行為は、事件の最大の不穏な符牒として語り継がれている。
携帯電話を残した不自然な外出
ニックは携帯電話以外のほぼすべて——財布、衣類、ノートPCなどを家に残したまま出ていったとみられる。その携帯は10月1日午後2時半ごろ、ハリスバーグから西へ離れたカーライルで最後に基地局へ接続した記録を最後に途絶えた。失踪から2日近く電源が生きていた点を、不可解だと指摘する声は多い。
一切使われない銀行口座
姿を消して以降、ニックの銀行口座は一度も使われていない。新生活を始めるにせよ逃亡するにせよ、現金へのアクセスを断ったまま生きていくのは難しい。この「口座が動かない」という一点が、彼がどこかで生きているという見方を難しくしている重い事実だ。
母親による独自の捜索
公的捜査が進まないなか、母親は息子のノートPCをハリスバーグの調査会社INA※へ持ち込み、ハードディスクのフォレンジック解析を依頼したと、検証済みの掲示板投稿で明かしている。地域のホームレス支援施設や野営地も自ら回って息子を捜したが、痕跡は見つからなかった。「これは彼らしくない。家族はただ、彼が無事だと知りたいだけ」と母親は語っている。
※ INA(Information Network Associates):1982年設立、ハリスバーグを拠点とする民間調査会社。デジタルフォレンジックやリスク管理を専門とし、法執行機関や軍出身者を擁する。
主な仮説
仮説1:パスワードは身辺整理の符牒だった
最後のメッセージにパスワードを記したのは、「もし自分に何かあったら、アカウントの中身を調べて事情を知ってほしい」という意思表示だった、とする見方。物静かで人生に行き詰まりを感じていた青年が、戻らない覚悟で出ていったとも読める。ただし、これを安易に最悪の結末と結びつけるのは慎重であるべきで、メッセージが送られた正確な日時すら不明な以上、断定はできない。
仮説2:自らの意志で人生を捨てた(自発的失踪)
成人男性が自分の足で車に乗り込んだ以上、自分の意志で生活を捨てた可能性は残る。米国では「成人には行方不明でいる権利がある」とされ、所持品を残して身一つで消える人は実際に存在する。だが、社会保障番号も口座も衣類も使わず、現金へのアクセスを断ったまま長期間生き延びるのは現実的に難しく、この説には大きな穴がある。
仮説3:ネット上で知り合った人物に誘い出され、事件に巻き込まれた
ニックはオンラインゲームやD&Dを通じてネット上に家族の知らない交友関係を持っていたとみられる。そこで知り合った相手と会うために出かけ、薬物がらみのトラブルや不慮の事故に巻き込まれた可能性。携帯が2日近く生きていた点は「不慣れな加害者」を思わせるとの指摘もある。ただし、これらはいずれも物証のない推測にとどまる。
仮説4:第三者にとって都合のよい「自発的失踪」に見せられている
白昼に自宅前で目撃者の前から堂々と連れ出すのは、殺意を持つ者の行動としては不自然だとする一方で、「自ら出ていったように見える」状況こそ捜査を遅らせる、という見方。同行した男が誰で、今どこにいるのかが分からない限り、この男こそ事件の鍵を握る人物である可能性は消えない。
海外の反応
1. 謎の名無しさん
最後のメッセージにパスワードを入れたっていうのが、どうしても引っかかる。「もし戻らなかったら中を見て」という意味なら、本人はその時点で相当まずい状況を覚悟していたことになる。物静かな人ほど、こういう静かな別れ方をするのかもしれない。
2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
ただ厄介なのは、そのメッセージがいつ送られたかが公表されてないこと。出かける前なら「消えるつもりだった証拠」になるし、出かけた後なら「危険を感じて送った」ことになる。意味がまったく変わるのに、そこがぼかされてるのが歯がゆい。
3. 謎の名無しさん(>>1への返信)
普段から仲のいい友人にパスワードを預けるのは、そこまで異常な行為でもないと思う。一晩だけ預けて翌日変える、みたいなことを軽くやる人はいる。ただ、それと「二度と戻らなかった」が重なると、急に不吉に見えてくる。
4. 謎の名無しさん
口座が一度も使われてないっていうのが一番重い。新生活を始めたなら、どこかで必ずお金が要る。それを完全に断ったまま消えたなら、残念だけど生きている可能性は低いと考えるのが自然だと思う。
5. 謎の名無しさん
ハリスバーグ近郊に住んでるけど、この辺はオピオイドの使用率も過量摂取も若い男性で本当に高い。痩せて物静かというプロフィールだけで決めつけるのは乱暴だけど、薬物がらみの線は地元の感覚としては真っ先に浮かぶ。
6. 謎の名無しさん(>>5への返信)
でもそれだと、わざわざ友人にパスワードを送った説明がつかなくない? ただのオーバードースなら、そんな「遺言」じみたことをする余裕も理由もないと思う。
7. 謎の名無しさん
すぐ「性的な何か」と決めつける人がいるけど、証拠は何もないよね。可能性のひとつとしてはあり得ても、断定するのは故人にも家族にも失礼だと思う。ネットで会った相手に誘われた、くらいの中立的な見方にとどめておくべき。
8. 謎の名無しさん(>>7への返信)
同感。この手のスレって、根拠もなく一番センセーショナルな筋書きに飛びつく人が多すぎる。本人が物静かだったとか痩せていたとか、その程度の情報から人の人生を勝手に物語に仕立てるのは、もう推理じゃなくて創作だよ。
9. 謎の名無しさん
白昼に自宅の前で、目撃者がいる状況で堂々と連れ出してる。これがもし殺意のある人間なら、ずいぶん大胆というか不用心だ。だからこそ、この時点では本人も相手を警戒していなかったんだろうと思う。気を許せる相手だった可能性が高い。
10. 謎の名無しさん
同行した男の人相が「20代前半・黒髪・オリーブ系の肌」とだけ。これだけじゃ正直、絞り込みようがない。ナンバーも分からない、シビックも当時ありふれた車種。手がかりが薄すぎて、捜査側も相当苦しかったと思う。
11. 謎の名無しさん(>>10への返信)
そう、車の特定がどうしても無理なんだよね。2000年代初頭のシルバーのシビックなんて、当時のアメリカに何万台あったか。建設会社の従業員が見ていなければ、出発の方向すら分からなかった。
12. 謎の名無しさん
携帯が失踪後2日近く生きてたのが気になる。もし誰かに連れ去られたなら、電源を切るなり捨てるなりしそうなものなのに、放置されてバッテリーが切れるまで電波を出し続けていた。手慣れていない人物が関わっていた印象を受ける。
13. 謎の名無しさん
INAっていう調査会社、調べたらハリスバーグのちゃんとしたデジタルフォレンジック専門会社だった。母親はやれることをやってる。問題は、それが警察の正式な捜査と連携できているのかどうか。個人の依頼だけだと、得られたデータを事件解決に活かしにくい。
14. 謎の名無しさん(>>13への返信)
ここなんだよね。家族が私的に解析を頼んでも、サイト側の裏のデータを引き出すには令状が要る。本気で追うなら、結局は法執行機関が動いてアカウントの中身を保全しないといけない。5年も経つとログが消えている恐れもある。
15. 謎の名無しさん
彼がオンラインで誰とやり取りしていたか、その相手の端末が失踪当日にニックの携帯の近くにあったかどうか。そこを突き止められれば一気に進むはずなんだけど、本人のアカウントの中身がきちんと調べられたのか、外からは見えない。
16. 謎の名無しさん
男性の行方不明者って、女性に比べて世間の関心も捜査の熱量も明らかに低くなりがち。成人男性が自分の足で出ていったように見えると、「勝手に消えただけ」で片付けられやすい。それでこういう手がかりのある事件まで埋もれてしまうのは、本当にやるせない。
17. 謎の名無しさん
ネットで会った相手とゲーム仲間として遊びに行っただけで、その先で何か事故が起きた——という線もあると思う。たとえば誰かが持ち込んだ薬物で具合が悪くなって、パニックになった相手が遺体を隠した、とか。悪意の殺人より、こういう偶発の悲劇のほうが起きやすい気もする。
18. 謎の名無しさん(>>17への返信)
それなら携帯が2日生きてたのも、口座が使われないのも、全部つじつまが合う。連れていった相手は犯罪のプロじゃなくて、ただ怖くなって隠しただけ。一番ありそうで、一番救いのないシナリオだ。
19. 謎の名無しさん
カルト的なものに取り込まれた可能性を挙げる人がいるけど、個人的にはこれも捨てきれない。人生に手応えがなくて、ネットで「居場所」を見つけた若者がそのまま現実から消える、という話は実際にある。所持品を残して身一つで消えるのも、その手の集団なら珍しくない。
20. 謎の名無しさん(>>19への返信)
ただカルトって普通は金が目当てだよね。マイケルズで働いてた彼には大した蓄えもなさそうだし、勧誘の対象としては旨みが薄い気がする。頭数を揃えたいだけの集団なら別だけど。
21. 謎の名無しさん
パスワードを友人に渡したという行為だけを取り出すと、自分の意志で何かに区切りをつけようとしていたようにも見える。ただ、これを特定の結末に結びつけて語るのは、ご家族のことを思うと軽々しくできない。事実として残っているのは「鍵を託した」ことだけだ。
22. 謎の名無しさん
彼は物静かで内向的で、ネット上に家族の知らない世界を持っていた。だからこそ、母親の「彼らしくない」という言葉も、本当の彼を全部映しているとは限らない。人には、もっとも近しい人すら知らない一面がある。そこに鍵があるんだと思う。
23. 謎の名無しさん
最後の発信地カーライルって、ハリスバーグから西に下道で行ける距離。職場に無断欠勤した翌日にそっちで電波が切れてる。つまり、出ていってから少なくとも丸2日は移動していたか、誰かが携帯を持って移動していたことになる。この空白の2日に何があったのか。
24. 謎の名無しさん(>>23への返信)
カーライルは交通の要衝でもあるから、そこからさらにどこへでも行けてしまう。最後の点がそこだというだけで、終着点とは限らないのが厄介。本人がそこにいたのか、携帯だけが運ばれたのかもはっきりしない。
25. 謎の名無しさん
こういう成人男性の単独失踪は、はっきりした事件性が見えないと警察も本腰を入れにくい。自分の親戚が「失踪」したときも、自分の意志で消えた成人は捜してもらえなかった。制度上、大人は消える権利がある、と言われて終わった。だからこそ家族が孤立して走り回ることになる。
26. 謎の名無しさん
ずっと未解決のまま語られていたけど、最近になって最後に目撃された場所の近くで身元不明の遺骨が見つかった、という報も出ていた。もし本当に彼だとすれば、長く心を痛めてきたご家族にとっては、せめて居場所が分かったということになる。
27. 謎の名無しさん(>>26への返信)
その後、訃報も確認されている。詳しい状況までは公表されていないけれど、少なくとも「どこかで生きているかもしれない」という宙づりの状態は終わったのかもしれない。何が起きたのかという問いは、それでもまだ残ったままだけど。
28. 謎の名無しさん
結末がどうあれ、最後に同行した男が誰だったのか、出発の前後に何が起きたのかは依然として説明されていない。発見と「真相の解明」はまったく別のことだ。彼が戻れなかった理由は、まだ言葉にされていない。
29. 謎の名無しさん
この事件で何より胸が痛むのは、母親が長いあいだ「いつか帰ってくる」と信じ続けていたこと。私的に解析を頼み、ホームレスの野営地まで自分の足で回って捜していた。その姿を思うと、結末がどうであれ、せめて答えが届いていてほしいと願わずにいられない。
30. 謎の名無しさん
物静かな青年が、見知らぬ男と古いシビックで走り去り、最後に友人へ鍵を託して消えた。残されたピースは多いのに、それらをつなぐ一本の線がどうしても引けない。だからこの話は、ずっと人の心に引っかかり続けるんだと思う。
未解決の謎
ニコラス・スマイヤーをめぐる謎の核心は、彼が消える前後に残した「パスワードのメッセージ」にある。これが出発の前なのか後なのか、どのサイトの鍵だったのか、そして誰に向けて何を伝えたかったのか——その一点が公表されていないせいで、自発的な別れだったのか、危険を察した叫びだったのか、解釈が真っ二つに分かれてしまう。物静かな青年が静かに鍵を託したその行為の意味を、私たちはまだ正確に言い当てられない。
同行した「20代前半・黒髪・オリーブ系の肌」の若い男が誰なのかも、依然として分かっていない。ナンバーの読めないシルバーのシビック、2日近く生き続けた携帯、最後の発信地カーライル、そして一度も使われない銀行口座。手がかりは決して少なくないのに、それらは一本の物語に収束してくれない。
その後、最後に目撃された場所の近くで遺骨が見つかり、訃報も伝えられたとされる。だが「見つかること」と「何が起きたかが分かること」は別のものだ。なぜ彼が戻れなかったのか、あの日同行した男は何者だったのか、託された鍵は何を語るはずだったのか——その問いは、答えが添えられないまま今も宙に浮いている。物静かだった一人の青年が背負ったまま消えていった理由を、私たちはまだ知らない。

