2016年4月21日、ノースカロライナ州ブーン※。19歳の大学生ジェームズ・”マーティン”・ロバーツは、昼下がりのバス停で監視カメラに姿を映したのを最後に、忽然と姿を消した。あの日から10年。残されていたのは「自分はチャンスを活かせなかった」と綴られた1通のメモと、処方されていないはずの抗うつ薬、そして家族に隠していたいくつもの嘘だった。
※ ブーン(Boone):ノースカロライナ州北西部、アパラチア山脈の山あいに位置する人口2万人弱の大学町。アパラチアン州立大学のキャンパスが町の中心で、周囲はブルーリッジ山脈の深い森に囲まれている。
事件の概要
🗓️ 失踪日:2016年4月21日(最後の目撃は午後12時30分頃)
🌫️ 場所:ノースカロライナ州ブーン、アパラチアン州立大学キャンパス付近
👤 当事者:ジェームズ・”マーティン”・ロバーツ(当時19歳・男性)
🔍 状況:自宅アパートを出て図書館へ行くと告げ、キャンパスのバス停で監視カメラに映ったのを最後に行方不明。部屋には別れのメモ、未処方の抗うつ薬、置き去りのスマホとノートPCが残されていた
🕯️ 現状:10年経つ今も遺体・生存いずれの手がかりも未発見。事件は捜索継続中
マーティンはノースカロライナ州ケアナーズビルの出身。子どもの頃から野球とサッカーが好きで、家族で海岸沿いに出かけるのが楽しみだった。高校時代から「絶対アパラチアン州立大学(App State)に行く」と決めていて、合格通知が届いた日には父親が「あんなに喜んでいる息子は見たことがない」と語ったほどだった。1年生の前半までは順調そのもの。経営学を専攻し、TKEというフラタニティ※にも入って、新しい環境を楽しんでいるように見えていた。
※ フラタニティ:米国の大学にある男子学生の社交クラブ。寮に近い「ハウス」で共同生活やパーティを開く文化があり、TKE(Tau Kappa Epsilon、現地読み「ティーク」)はその全米最大規模の組織のひとつ。アパラチアン州立大学のTKE支部は素行問題で後年大学公認を取り消されている。
判明している事実
最後の足取りはバス停
失踪当日の昼12時30分頃、マーティンはキャンパス内のコンボケーション・センター前で偶然出会ったいとこに「これからフラタニティ・ハウスに行く」と告げている。直後、近くのバス停に設置された監視カメラが、バスに乗らずにそのまま歩き去る彼の姿をとらえていた。これが彼が映った最後の映像になった。
部屋に残された「失格者」のメモ
連絡が取れないことを心配した父親の依頼でルームメイトが部屋を確認すると、スマートフォンとノートPCがそのまま置かれていた。さらに机の上には手書きのメモが1通。父親によれば、内容は「家族が与えてくれたチャンスを自分は活かせなかった、それが情けない」というもの。捜査官は「自殺の遺書とは断定できないが、極めて悲しい内容だった」と語っている。一説では書き出しは「これから会えなくなる人たちへ」だったとも言われる。
未処方の抗うつ薬と隠された生活
部屋からは、彼に処方されていないはずの抗うつ薬(SSRI※とみられる)がジップロックに入った状態で発見された。捜査が進むにつれ、コミュニティ・カレッジの授業を数週間前から欠席していたこと、家族には「飲食店でバイトしている」と言っていたが応募はしたものの採用されていなかったこと、友人グループのチャットからもひっそり抜けていたことが分かってきた。家族にはずっと「いとこと遊んでいた」と説明していたが、当のいとこは「一緒に過ごした覚えはない」と否定している。
トラウト湖での未確認目撃
失踪当日、町外れのトラウト湖付近で彼らしき人物を見たという情報があるが、確証は得られていない。湖周辺と最後の目撃地点を中心に大規模な捜索が行われたが、衣類・所持品の発見には至っていない。彼が数日前に買い込んだ食料品も部屋の冷蔵庫から消えており、州発行のIDカード(飲酒運転で免許は取り上げられていた)も一緒に失われている。
失踪前夜にあった「ひとつのきっかけ」
失踪の8か月前にあたる2015年8月、当時2年生に進級したばかりの彼はTKEハウスで飲んだ後、自分でハンドルを握って警察に止められ、飲酒運転で身柄を拘束された。当時付き合っていた高校時代からの恋人が約160キロ離れた自宅から迎えに来たがその夜に破局。翌日には家族に「フラタニティの生活から離れたい」と泣きついて休学している。失踪当時の関係者は、この出来事を彼が「人生を踏み外した瞬間」と感じ続けていたのではないかと振り返っている。
※ SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬。うつ病・不安障害の治療に広く使われるが、若年層では自殺念慮の副作用リスクが高く、医師の管理下での服用が前提とされる薬。米国でも処方箋なしの入手は違法。
主な仮説
仮説1:山中での自死
もっとも有力視されている仮説。残されたメモの文面、抗うつ薬の存在、グループチャットからの離脱、家族への嘘の積み重ねといった精神的に追い詰められた人物のパターンと一致する。ブーン周辺はアパラチア山脈の深い森が広がり、ハイキングコースから一歩外れるだけで遺体が発見されにくい地形が多い。一部の人気トレイルにある急峻なオーバールック(崖の張り出し)も指摘されている。
仮説2:山中での事故死(misadventure)
自死と紙一重の説。「メモは置いたが、本人もまだ覚悟は決めかねていて、ひとりになりたくて山に入っただけかもしれない」という見方。グループチャットを抜けたのも自殺準備というより、社会的引きこもりの典型症状で、判断力が落ちた状態で森の中をさまよい、転落や低体温で命を落とした可能性がある。
仮説3:地元を離れての別人生
少数派だが根強い意見。すべての関係を断ち、ヒッチハイク等で町を出てまったく別の土地で新しい身分のもとに生きているという見立て。ただし、ブーンは公共交通が極めて限られた山あいの町で、徒歩や地元バスだけで遠くに離れるのは現実的に難しい。誰かの車に乗せてもらったとしても、その人物がこの事件の存在を10年間まったく知らずに過ごしている必要があり、現実性は低い。
仮説4:身元不明遺体(John Doe)として既に発見済み
遠方で発見された身元不明の遺体の中に彼が含まれているのではないか、という説。家族はDNAを登録しているが、長年の身元不明者と照合できていない。地元事情に詳しい人々は「徒歩でブーンの外には出られない地形」と指摘しており、この説の前提自体に疑問符が付いている。
海外の反応
1. 謎の名無しさん
自殺のメモって遠回しな言い方をすることが多いんだよね。「いなくなる」「向こうに行く」みたいな言葉が、本人の中では「死」を意味してることがある。自分の悩みを家族にもオープンにできないタイプの人だったらしいから、メモの曖昧さもそういう性格の表れに見える。とにかく手がかりが少なすぎる。
2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
番組『Disappeared』だったかで、捜査官がメモは「これから会えなくなる人たちへ」って書き出しだったって言ってたよ。そう聞くともう、解釈の余地がほとんどないと思ってる。
3. 謎の名無しさん(>>2への返信)
他殺の痕跡もなく、メモがあり、本人は鬱っぽかった。残るのは自死か山中での事故死くらいでしょ。フラタニティで何か恥ずかしいことがあったのか、それともただ「うるさくて深い付き合いができない場所」だっただけなのか、そこは気になる。
4. 謎の名無しさん
グループチャットを全部抜けてから消えてるのが引っかかる。死ぬつもりなら、もう通知に悩まされることもないわけで、わざわざ脱退する必要ないじゃない? あれは「生きていく中で、これ以上人と関わりたくない」って人がやる行動なんだよ。
5. 謎の名無しさん(>>4への返信)
逆だと思う。あれは「自分が死んだ後、グループの管理人や友達にチャットから外す作業をさせたくない」っていう、最後の気遣いの形なんだ。私も一番つらかった時期、同じことをした。サブスクの解約とか、グループ離脱とか、身辺をひっそり整理してた。
6. 謎の名無しさん(>>5への返信)
今あなたが生きていてくれてよかった。本当に。
7. 謎の名無しさん(>>4への返信)
社会的引きこもりは、うつのきわめて典型的な症状だよ。彼がチャットを抜けたのは失踪の数週間〜数日前の話で、当日じゃない。これは普通にうつ症状の一部として理解できる。
8. 謎の名無しさん
かわいそうに。若いうちは「もう取り返しがつかない」って気持ちになるけど、人生はまだいくらでも作り直せる時期だったはず。「自分は失敗作だ」と感じていたうえに、医療にも心理カウンセリングにも頼れなかったみたいだね。それが悲しい。
9. 謎の名無しさん(>>8への返信)
本当にこれ。うちのいとこは警察官志望だったんだけど、21歳で飲酒運転で捕まって「これで一生警察官にはなれない」って絶望して、地元で自殺の名所と言われてた橋から飛び降りた。奇跡的に助かって、リハビリ何年もかけて歩けるようになって——今、その彼は普通に警察官をやってる。若いときの失敗で人生は終わらない。これだけは言いたい。
10. 謎の名無しさん
私はずっと自死だと思ってる。ただ遺体が見つかってないだけで。あの状況、メモ、生活の崩れ方を読むと、相当追い詰められていた人だったように見える。
11. 謎の名無しさん
TKE(フラタニティ側)は何も知らないとは思うけど、App StateのTKEは当時から評判が悪かった。あの後しばらくして大学公認を取り消されてる。本件と直接関係するかは別として、雰囲気として荒れていたのは事実。
12. 謎の名無しさん
もっとも現実的なシナリオは、彼が自ら命を絶ち、人目につかない場所で発見されないままジョン・ドゥ(身元不明遺体)扱いになってる、というもの。r/gratefuldoeでこのケースを共有するのが一番いいかもしれない。
13. 謎の名無しさん
事件発生当時から地元で追ってきたけど、たぶん彼は身元不明遺体ですらない。ブーンは公共交通がほぼ機能してない町で、徒歩で外には出られない。誰かの車に乗ったとしてもその人物が10年間この事件を一度も耳にしないなんて考えにくい。父親のインタビューを総合すると、メモには「公にされたら戻りにくくなるくらい本人にとって恥ずかしい・私的な内容」が書かれていたらしい。地形を考えれば、遺体が見つからない場所はいくらでもある。ドローンが普及した今、有志でハイキングコース下の崖を上空から確認できないかと思っている。
14. 謎の名無しさん
何より悔しいのは、人生が崩れ始めた瞬間に専門家を頼れていたら、まったく違う結末になっていたかもしれないってこと。処方されていないSSRIを自己判断で飲むのもすごくリスキーで、若年層は副作用で自殺念慮が悪化することも知られてる。大学生なら親か学校経由で保険には必ず入ってるんだから、本当に医療に繋がれていれば……。
15. 謎の名無しさん
この事件、覚えてる。前にも似たケースで言ったけど、状況的にはどう見ても自死寄り、ただ場所が分からないだけ。山が深い場所で残された人ほど、家族には地獄が続く。
16. 謎の名無しさん
たぶん遺体はトラウト湖周辺の森の中にあると思う。1年目はあんなに順調に見えてた子が、なんでここまで急に崩れていったのか、それが本当に分からない。
17. 謎の名無しさん(>>16への返信)
若い人にはものすごくよくあるパターンだよ。初めての一人暮らし、自由、新しい人間関係、勉強のプレッシャー、酒や薬への近さ。メンタルが弱い人もそうじゃない人も、圧力鍋の中に放り込まれるみたいに一気に崩れる時期だから。
18. 謎の名無しさん
番組『The Vanished』のエピソードを見て知ったクチ。いつか見つかってほしい。
19. 謎の名無しさん
人が悲しい話をしてるときに、わざわざ茶化す書き込みする人いるけど、あれ何のため? ネットのいいねが欲しいだけ? 失踪事件のスレでそれは本当にやめてほしい。
20. 謎の名無しさん
彼は近場の、人がほとんど行かない山の中に入って、見つからない場所で自ら命を絶ったんじゃないかな。あの番組を観てから、ずっとこの事件が頭から離れない。
21. 謎の名無しさん
最初に聞いてから8年くらい経つけど、いまだに数か月に1回は彼のことを考える。どこかでまだ生きていて、自分の探していたものや作りたかった人生を、ようやく見つけているといいんだけど。
22. 謎の名無しさん
私はApp State出身。あの土地は「消えたい」と思ったら、いくらでも消える場所がある。考えるだけで胸が痛い。
23. 謎の名無しさん(>>22への返信)
全面的に同意。彼がもし本当にトラウト湖近くのフラナリー・フォーク・ロードあたりにいて、そこから道を外れていたら、もう人力で見つけるのはほぼ無理だと思う。
24. 謎の名無しさん
ユーチューブでこの事件を知った。個人的にはやっぱり自死だと感じてる。どこかで安らかでいてほしい。
25. 謎の名無しさん
かわいそうな子。せめてご遺体が見つかって、家族がちゃんと弔える日が来てほしい。
26. 謎の名無しさん
ここのみんなはほぼ「自死」で意見が一致してるよね。でも、たとえばアンドリュー・ゴスデン※のケースで「自死では?」って言うと、必ず「だったら遺体が見つかってないのはおかしい」って否定されがちなんだ。マーティンのケースだけ、遺体未発見のまま自死で納得されてるのはなぜなんだろう? 地形の違いってこと?
※ アンドリュー・ゴスデン:2007年、当時14歳でイギリス南部の自宅から失踪し、ロンドン行きの片道切符を買ってキングス・クロス駅に着いたのを最後に消息を絶った少年。英国の有名な未解決失踪事件のひとつ。
27. 謎の名無しさん(>>26への返信)
私はゴスデンも自死寄りだと思ってるけど、アメリカ人としてはロンドンに行ったことがない分、「あれだけ人と監視カメラがある街で遺体が完全に消える」のがピンとこない。マーティンの場合、舞台がノースカロライナの山岳地帯だから、自死でも事故でも「見つからない」のはまったく不自然じゃない。場所の違いがすべて。
28. 謎の名無しさん(>>26への返信)
ふたつのケースは別物。マーティンは消える前から明らかに何かを抱えてた。ゴスデンには自殺念慮を示す証拠がほぼない。片道切符は決定打じゃない、というのが私の感覚。
29. 謎の名無しさん(>>26への返信)
地元事情を知ってる人ほど答えはシンプルだと思う。すぐ近くに展望塔があってね、ここから360度見渡せるんだけど、視界に入る範囲だけでもう「見つからない理由」がよく分かる。山と森しかないんだ。
30. 謎の名無しさん
2015年にApp State出身の元彼がいて、彼はマーティンとフラタニティは別だったけど共通の知人だった。マーフィーズというお店で1度だけ一緒に飲んだことがある。年下だったから「ビーパー(飲み会のお酒配り役)」をやらされていて、ずっと愛想よく動いてた。ヒッピー・ヒルって坂で、ポーチに座ってしばらく話したのを覚えてる。彼が消えたのを2016年にニュースで見た時、本当に変な気分だった。あれから10年。本当はどこかで全然違う人生を生きていてくれたら、と思ってしまう。時間の流れって不思議だね。
未解決の謎
10年経った今もマーティンが残した最大の謎は、たった一文の内容が公にされていないあのメモだ。父親は「あれを公開すれば、もし生きていた場合に彼が帰りにくくなる」と語って、内容を伏せ続けてきた。そこに書かれていたのは何だったのか——フラタニティでの出来事への悔恨か、家族に隠していた何かの告白か、それともただ静かな別れの挨拶か。彼を最後に動かした言葉は、いまも家族の引き出しの中にだけ存在している。
もうひとつ残るのは、彼があの数か月をどこで、誰と過ごしていたのかという空白だ。授業をやめ、ありもしないバイトを語り、いとこと遊んだという嘘をつき、グループチャットを次々と抜けていった——その時間に、彼が実際に何をしていたのかを示す手がかりはひとつも見つかっていない。10年分の沈黙の向こうで、19歳のままの彼だけが本当の答えを知っている。
もっとも妥当な結末は、深く広がるアパラチアの森のどこかで彼がひとり眠っているというものだ。それでも家族は今もFacebookページ「Find James Martin Roberts」を更新し続け、誰かに見つけてほしいと願っている。残された人々にとって、未解決のままで終わらせない、というそれ自体が祈りの形になっている。
出典:r/UnresolvedMysteries 元スレ / The Charley Project: James Martin Roberts / Watauga Online

