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【1934年】サラゴサのゴブリン事件——壁から3か月響いた体のない声

【1934年】サラゴサのゴブリン事件——壁から3か月響いた体のない声 行方不明・失踪

1934年、スペイン北東部の古都サラゴサのとあるアパートで、台所の壁の奥から「体のない男の声」が聞こえ始めた。最初は笑い声、次に悲鳴、やがて住人の名前を呼び、質問に答え、煙突の直径まで言い当てる――。新聞各紙は「ドゥエンデ」と書き立て、地元警察、医師、聖職者、ロンドン・タイムズの記者まで押しかけたのに、声の正体は最後までつかめなかった。やがて当局は十代の家政婦パスクアラ・アラニャの仕業だと結論づけたが、彼女がその場にいない時間にも声は響いていた。90年経ったいま、その声が何だったのか、誰も答えを持っていない。

※ サラゴサ:スペイン北東部アラゴン州の州都。マドリードとバルセロナのほぼ中間にある古都で、古代ローマ時代の遺跡や大聖堂で知られる人口約70万の都市。

※ ドゥエンデ(duende):スペイン・ラテンアメリカの民間伝承に登場する小さな精霊。直訳は「家の主」で、英語のゴブリンや妖精に近い。悪意があるとは限らず、いたずら好き・無害・時に人を助ける存在として語られることが多い。

事件の概要

🗓️ 発生:1934年9月頃〜同年12月頃

🌫️ 場所:スペイン・サラゴサ市ガスコン・デ・ゴトール通りのアパート2階、パラソン家の台所

👤 当事者:パラソン家の住人と家政婦パスクアラ・アラニャ(当時16歳前後とされる)

🔍 状況:薪ストーブと煙突の奥から、笑い声・悲鳴・住人と会話する男性の声が連日聞こえ続けた

🕯️ 結末:警察・専門家・聖職者の調査でも音源は特定できず、家政婦が解雇されて田舎に戻ると同時に声は消えた

舞台となったのは、スペイン内戦が始まる2年前のサラゴサ。アラゴン州の州都で、当時すでに人口20万を超える地方都市だった。問題のアパートは集合煙突方式で、各階の薪ストーブの煙道が屋上の一本の出口に合流していた。「上の階の誰かが煙突に向かって叫んでいるのでは」というのが最初の住人たちの推測だったが、調べても叫んでいる人間は見つからず、むしろ他の階の住人も「うちのストーブからも声が聞こえる」と言い出してしまった。

声は最初こそ笑い声や悲鳴だったが、やがて住人の質問に流暢なスペイン語で答え始め、家の前に集まった野次馬とも会話するようになる。新聞が書き、噂は全国に広がり、ロンドン・タイムズやニューヨーク・タイムズまでが報じた。スペイン国内からは見物人が列をなし、警察は人垣の整理に動員される事態になった。

判明している事実

声は薪ストーブの煙突から
パラソン家の住人が最初に異変に気付いたのは、台所の薪ストーブと、そこから屋上へ伸びる煙突の付近だった。煙突は集合方式で、他のアパート住戸の煙道とつながっていた。当時の捜査官は「他の住戸の誰かが煙突に向かって声を出しているのでは」と疑ったが、特定できなかった。

直径6インチを言い当てた逸話
当局が「煙突の口径を測ろう」と相談していると、声が「測る必要はない、直径はちょうど6インチ(15センチ)だ」と答えたと報じられている。実測値はその通りだったとされ、当時の人々が超常現象と信じる根拠の一つになった。ただしこの逸話自体は新聞のセカンダリー報道であり、一次記録は残っていない。

家政婦パスクアラへの「執着」
声は十代の家政婦パスクアラ・アラニャに強い関心を示し、彼女が部屋にいる時に最も活発になったと記録されている。彼女が買い物などで外出している時間にも声は出ていたが、当局はこの矛盾には踏み込まなかった。

ロンドン・タイムズが取材した
事件は地方紙だけでなく、英ロンドン・タイムズと米ニューヨーク・タイムズが取材記事を掲載するほどの国際的話題になった。NYタイムズは1934年12月16日付で「サラゴサの幽霊は科学に葬られたが、市民は受け入れていない」と題する記事を出している。

「無意識的腹話術」で幕引き
最終的にサラゴサ州知事は「家政婦パスクアラによる無意識的腹話術である」と発表し、捜査を打ち切った。根拠は警官1名の曖昧な目撃証言だけだったとされる。彼女は故郷の村に帰され、声はそのまま消えた。

主な仮説

仮説1:上階住人による集合煙突を使った悪戯

もっとも穏当な説。集合煙突は各階の煙道が屋上で合流する構造のため、ある住戸で発した声が反響して別住戸の煙突から聞こえることは物理的に十分ありえる。しかし当局の捜索でも声の主は特定されず、しかも「悪戯にしては数か月続いた」「家政婦の不在中にも声は出た」という複数の不整合が残っている。

仮説2:家政婦パスクアラによる無意識的腹話術(公式見解)

当局が採用した説。十代の少女が解離状態で自分でも気付かずに声を出していた、というもの。ただし当時は「無意識的腹話術」という現象自体が学術的に確立しておらず、しかも彼女が現場にいなかった時刻にも複数の証言が残るため、現代の研究者の多くはこの説に懐疑的である。

仮説3:ドゥエンデ(家の精霊)説

地元住人と当時の新聞読者の多くが信じた説。スペイン民間伝承のドゥエンデは家屋に住み着く小さな精霊で、いたずら好きだが必ずしも悪意があるわけではないとされる。声が質問に答え、煙突の直径まで言い当てたという報道は、超常現象を信じる側に強力な根拠を与えた。

仮説4:複合説(誰かの悪戯+集団心理+創作的脚色)

近年の懐疑的研究者がよく挙げるシナリオ。最初は近隣の悪戯から始まったが、新聞が書き立てたことで全国から見物人が押し寄せ、見物人自身が新たな「声」を作り出し、さらに新聞が話を盛り、最終的に「煙突の直径を言い当てた」のような決定的逸話が一次資料なしに独り歩きした、というもの。

海外の反応

1. 謎の名無しさん
これってマン島のジェフを思い出すんだけど。1930年代の英国で、農家の壁の中から喋ってたっていうマングースの話。時期も近いし、壁の中の声って構造もそっくりじゃない?

※ マン島のジェフ(Gef the Mongoose):1931年からマン島の農家アーウィン家で報告された、英語を話すマングースを名乗る存在。当時の英国心霊研究の有名事例。

2. 謎の名無しさん(>>1への返信)
完全に同じこと思ってたわ。家のどこかから喋る何かって、あの時代やたら多くない?

3. 謎の名無しさん(>>1への返信)
ただジェフは当事者がそれっぽい録音まで残してたけど、こっちは「家政婦の腹話術でした」で締めてるから毛色が違う気がする。サラゴサのほうが一段地味で逆に怖い。

4. 謎の名無しさん
これさ、屋根裏か地下か壁の隙間に誰か潜り込んで住んでた可能性ない?古いアパートだと配管スペースに人ひとり入れる空間って意外と残ってるんだよ。煙突の集合部分なら音響的にも辻褄が合う。

5. 謎の名無しさん
原文の「他の住人は誰もやってないと“認めた”」のところが気になる。認めてないだけで、犯人は普通にあの建物の中にいたんじゃないの。集合煙突の構造を一番分かってるのは住人だし、何か月も続けるモチベーションがある誰かがいたってことだよね。

6. 謎の名無しさん(>>5への返信)
それ。明らかに誰かがあの家政婦の少女を狙って嫌がらせしてたのに、当局は逆に被害者の彼女を犯人扱いしてクビにしてる。1934年のスペインでよくある話だけど胸糞悪い。

7. 謎の名無しさん
6インチって表記がそもそもおかしくない?スペインでわざわざ英国の単位で答える幽霊って何。もしかして本当は英国人?

8. 謎の名無しさん(>>7への返信)
スペイン語にも「プルガダ(pulgada)」っていうインチ相当の単位があって、配管の口径表記では今もよく使われる。だからプロの配管職人ゴブリンだった可能性が高い。

9. 謎の名無しさん(>>8への返信)
配管職人ゴブリン、めちゃくちゃ語感が良い。一家に一匹欲しい。

10. 謎の名無しさん
真面目に答えると、原文はOPがNYタイムズの1934年の記事を直接引用してるから、米国読者向けにインチ換算しただけだと思う。当時の米紙はメートル法をほぼ使わなかった。

11. 謎の名無しさん
「無意識的腹話術」って学術用語みたいに書いてるけど、当時の警察が証言1件だけで持ち出した造語に近い。今の心理学でも腹話術ができる人はちゃんと意識して訓練してる。十代の家政婦が解離状態で煙突から声を出すって、生理学的にもかなり無理がある。

12. 謎の名無しさん(>>11への返信)
当局が一番楽な落としどころを探した結果なんだろうな。物理的に説明できないものに公式見解を出さなきゃいけない圧力があったって書いてある時点で、結論は最初から決まってたんだと思う。

13. 謎の名無しさん
普通に上の階の変な隣人が煙突に向かって叫んでただけ説、なんでこんなに否定されてるのか分からない。声の主が特定できなかったのは捜査が雑だっただけでは。

14. 謎の名無しさん
ドイツに「チョッパー」っていう電話とコンセントから喋る幽霊の話があるんだけど、構造的にこれと似てる。インフラの隙間から声が聞こえる系。チョッパーは後で完全にやらせだったのがバレてる。

15. 謎の名無しさん(>>14への返信)
チョッパーって最終的にどうやってバレたか覚えてる?子供がマイク仕込んでたとかそんな感じだったような。

16. 謎の名無しさん
中世の妖精譚って、いま想像するメルヘンな感じじゃなくて、子供を盗んだり病気を持ってきたりするわりと容赦ない存在だったんだよね。サラゴサのドゥエンデが「無害なことが多い」ってのは、後世のロマン化された解釈な気がする。

17. 謎の名無しさん
家政婦の少女が一番の被害者なのに、結局犯人扱いされて田舎に帰されたっていう結末がとにかく後味悪い。当時16歳前後でしょ。スペインの片田舎に戻されて、その後の人生どうなったんだろう。

18. 謎の名無しさん
1950年代のロンドンに「バターシー・ポルターガイスト」っていう似たような事件があって、BBCがポッドキャストにしてた。あれも結局誰かの仕業説と本物のポルターガイスト説で割れたまま終わってる。壁から声系の事件って、なぜか決着がつかない。

19. 謎の名無しさん
正直に言うけど、ロンドン・タイムズとNYタイムズが両方取材して、それでも声の主が分からないっていうのは結構すごい話だよ。1934年の記者って今より物理的な調査に時間かけてたはずだから。

20. 謎の名無しさん
スペイン内戦の2年前のサラゴサっていう時代背景も効いてる気がする。社会全体が不安定で、合理的に説明できない出来事に飛びつきやすい空気があった。当時の新聞報道って今のSNSのバズみたいなもんだったろうし。

21. 謎の名無しさん
家政婦が辞めた瞬間に声が消えたのは、彼女が原因だったからじゃなくて、彼女に嫌がらせしてた近所の誰かが「もう面白くない」ってやめただけだと思う。当局の結論と現象の消失が一致したのはただの偶然。

22. 謎の名無しさん(>>21への返信)
これが一番納得できる説明だと思う。声に「フェチ」みたいな執着があったって書かれてるあたり、対象は完全に少女だったわけで、加害者像もかなり絞れる気がする。

23. 謎の名無しさん
「煙突の直径を言い当てた」っていう一番有名な逸話、よく考えたら一次資料が示されてないんだよね。後年の出版物で繰り返し引用されてるだけで、元のスペイン語紙の記事を確認した人がほぼいない。

24. 謎の名無しさん
タペ・ライブラリーっていうYouTubeチャンネルがこの事件を扱ってるんだけど、結構丁寧に当時の記事をたどってる。日本語字幕はないけど、見てみる価値ある。

25. 謎の名無しさん
スペインの民間伝承に出てくるドゥエンデって、地域によって全然キャラが違うんだよね。アンダルシアのドゥエンデは陽気でフラメンコの精霊扱いだけど、北部のは無口でちょっと不気味。サラゴサはアラゴンだから、ちょうど中間くらいの性格付けがされてた。

26. 謎の名無しさん
冷静に建築の話するなら、1934年のサラゴサのアパートで集合煙突方式って、普通に存在した構造。木造ストーブの排気を一本にまとめるやり方で、上階の音が下階に降りてくることは音響的にあり得る。ただし「言葉として聞き取れる」レベルだったかは別問題。

27. 謎の名無しさん(>>26への返信)
そこなんだよね。煙突が共鳴管として機能して反響したって説明はよく見るけど、共鳴で増幅されるのは特定周波数だけだから、人間の声の言葉が明瞭に伝わるのは結構難しい。完全否定はできないけど。

28. 謎の名無しさん
個人的には、最初の数週間は本当に近所の悪戯で、それを新聞が書いた時点で全国から「私も話した」って自称する人が押し寄せて、もうグチャグチャになった事件だと思ってる。当時の報道倫理を考えると、新聞側の創作も少なくないはず。

29. 謎の名無しさん
1934年っていう年がすごく示唆的で、世界的にラジオが家庭に普及し始めた時期と重なる。「壁から人の声が聞こえる」っていう体験自体が技術的に新しかった時代で、ラジオと幽霊の境目が今より曖昧だった可能性ある。

30. 謎の名無しさん(>>29への返信)
それ面白い視点。ちなみに当時のスペインのラジオ普及率は欧州でもかなり低かったから、「機械から声が出る」体験そのものに慣れてない人が多かったはず。煙突の声を「精霊」と解釈する素地がそこにある気がする。

未解決の謎

もっとも妥当な説明は、間違いなく「集合煙突を悪用した近隣の誰かによる、家政婦パスクアラを標的にした嫌がらせ」だ。3〜4か月という持続期間、声が答える内容の生々しさ、そして家政婦が解雇されると同時に止んだタイミング――これらは超常現象よりも、特定の対象に固執した人間の行動パターンとしてよく辻褄が合う。当時のスペイン社会で、十代の住み込み家政婦という社会的に弱い立場の少女に向けられた嫌がらせは、構造的にも珍しい話ではない。

ただし違和感は残る。第一に、彼女が買い物や用事で外出している時間にも声は記録されている。第二に、ロンドン・タイムズとニューヨーク・タイムズという当時の最高水準の新聞2社が同時に取材しても、加害者にも音響トリックにも辿り着けなかったという事実。第三に、最終的に当局が出した「無意識的腹話術」という結論が、警官1名の曖昧な証言以外の裏付けを欠いていること。これらは「ただの近所の悪戯だった」と片付けるには引っ掛かりが多い。

逆に、もっとも有名な「煙突の直径を言い当てた」逸話は、現代の研究者が一次資料を辿ろうとしても明確な出典に行き着かないことが分かっている。後世の記事が前世代の記事を引用し続けた結果、ディテールが「事実」として固定された可能性が高い。サラゴサの声が本当に何を言ったのか、どこまでが目撃者の証言で、どこからが新聞の脚色なのか――90年経った今、分離するのはもう難しい。

結局この事件は、「壁の中から声が聞こえた」という現象そのものよりも、「合理的に説明できない出来事を社会がどう処理するか」のサンプルとして読むのが、いちばん腹落ちするのかもしれない。スペイン内戦の2年前という時代背景、ラジオが普及し始めた瞬間、新聞というマスメディアが人々の解釈を加速させた構造。声の主が誰だったのかは永遠に分からないが、声が「ドゥエンデ」と呼ばれてしまった理由は、たぶん今でも分かる。

出典:r/UnresolvedMysteries 元スレThe New York Times 1934/12/16Slate (2015)